電子銃:金属材料基礎講座(その120)各種電子銃の模式図

投稿日

電子銃:金属材料基礎講座(その120)各種電子銃の模式図

 

◆ 電子銃

SEMのフィラメントは電子銃とも呼ばれ、電子銃から電子が放出されます。電子銃の種類は熱電子銃や電界放出型(Field Emission:FE-SEMとも呼ばれる)などがあります。3種類の電子銃の模式図を下図に示します。熱電子銃は主にタングステン電極(またはLaB6単結晶)を通電加熱して熱により電子を引き出します。図のa)のウェーネルト電極の出口付近に電子線のクロスオーバーがあり、この時の電子源の直径は15~20μm程度です。これがSEMの光源となります。タングステン電極は2800K程度、LaB6は1900K程度に加熱されます。

 

FEはタングステン電極先端(エミッタという)に電圧をかけ、強磁界で電子を引き出します。FEの方が熱電子銃よりも電子を小さく絞れるため、高倍率での観察ができます。FEの先端は高い清浄度が要求されるため、10-7~10-8Pa程度の真空度が必要となります。FEでは室温でエミッタを使用する冷陰極FE(図のb))と高温で使用するショットキー電子銃(熱陰極FE)(図のc))があります。

 

電子銃:金属材料基礎講座(その120)各種電子銃の模式図

図.各種電子銃の模式図

 

冷陰極FEではエミッタに先端の曲率半径100nm程度のタングステン<310>単結晶が使用されます。電子源の直径は5~10nm程度であり、高い解像力を得ることが出来ます。そしてフィラメントの寿命も長いです。しかし、放出電流の安定性は悪く、ノイズキャンセルする回路がセットされています。

 

ショットキー電子銃ではエミッタに先端の曲率半径数百nm程度のタングステン<100>単結晶をZrOで被覆したものが使用されます。電極は1800K程度に加熱されます。電子線の直径や解像力は冷陰極FEより劣りますが、放出電流は安定します。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の...

電子銃:金属材料基礎講座(その120)各種電子銃の模式図

 

◆ 電子銃

SEMのフィラメントは電子銃とも呼ばれ、電子銃から電子が放出されます。電子銃の種類は熱電子銃や電界放出型(Field Emission:FE-SEMとも呼ばれる)などがあります。3種類の電子銃の模式図を下図に示します。熱電子銃は主にタングステン電極(またはLaB6単結晶)を通電加熱して熱により電子を引き出します。図のa)のウェーネルト電極の出口付近に電子線のクロスオーバーがあり、この時の電子源の直径は15~20μm程度です。これがSEMの光源となります。タングステン電極は2800K程度、LaB6は1900K程度に加熱されます。

 

FEはタングステン電極先端(エミッタという)に電圧をかけ、強磁界で電子を引き出します。FEの方が熱電子銃よりも電子を小さく絞れるため、高倍率での観察ができます。FEの先端は高い清浄度が要求されるため、10-7~10-8Pa程度の真空度が必要となります。FEでは室温でエミッタを使用する冷陰極FE(図のb))と高温で使用するショットキー電子銃(熱陰極FE)(図のc))があります。

 

電子銃:金属材料基礎講座(その120)各種電子銃の模式図

図.各種電子銃の模式図

 

冷陰極FEではエミッタに先端の曲率半径100nm程度のタングステン<310>単結晶が使用されます。電子源の直径は5~10nm程度であり、高い解像力を得ることが出来ます。そしてフィラメントの寿命も長いです。しかし、放出電流の安定性は悪く、ノイズキャンセルする回路がセットされています。

 

ショットキー電子銃ではエミッタに先端の曲率半径数百nm程度のタングステン<100>単結晶をZrOで被覆したものが使用されます。電極は1800K程度に加熱されます。電子線の直径や解像力は冷陰極FEより劣りますが、放出電流は安定します。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
格子定数と結晶構造、EBSD測定:金属材料基礎講座(その129)

【目次】 1. 格子定数と結晶構造 試料表面から得られた回折パターンのバンド幅が格子定数と関係しています。格子定数は金属ごとに異な...

【目次】 1. 格子定数と結晶構造 試料表面から得られた回折パターンのバンド幅が格子定数と関係しています。格子定数は金属ごとに異な...


めっきの製膜方法とは:金属材料基礎講座(その77)

  ◆ めっき(メッキ)の製膜法とその特徴  めっきの製膜方法として主に溶融めっき、電気めっき、無電解めっきがあります。それぞれの特徴を...

  ◆ めっき(メッキ)の製膜法とその特徴  めっきの製膜方法として主に溶融めっき、電気めっき、無電解めっきがあります。それぞれの特徴を...


ガルバリウム鋼板とは

  ♦ 高い防食性生かし、各種建築材料に  ガルバリウム鋼板(アルミニウム55%ー亜鉛43%の合金めっき鋼板)は米ベスレヘム...

  ♦ 高い防食性生かし、各種建築材料に  ガルバリウム鋼板(アルミニウム55%ー亜鉛43%の合金めっき鋼板)は米ベスレヘム...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...