EDSとWDSの分析項目:金属材料基礎講座(その126)

投稿日

EDSとWDSの分析項目:金属材料基礎講座(その125)

 

◆ EDSとWDSの分析項目

EDSとWDSは測定精度の差はありますが分析項目は共通しています。それは定性分析、線分析、面分析、定量分析の4つです。

 

定性分析

定性分析は試料に含まれる元素を検出する分析です。特性X線のエネルギーや波長は元素ごとに異なるので、エネルギーや波長から元素を特定します。含まれる元素の量が多くなるほど特性X線のカウントも多くなります。そしてスペクトルピークが表れない時が検出下限となります。通常、定性分析では検出された元素と含有量が得られます。この含有量はおおよその値のため半定量とも呼ばれます。

 

線分析

線分析は試料のある箇所を直線的に分析し、濃度変化を調べることです。線分析の結果は折れ線グラフのように表されます。例えば亜鉛めっき鋼板であれば、めっき部分は亜鉛、鋼板部分は鉄が検出されます。他にも浸炭の炭素濃度のように合金元素の濃度分布を直線的に調べる時などにも使用されます。

 

面分析

面分析は試料のある領域を分析することで、視覚的に元素の分布を見られます。通常、SEM像と同時に分析するので、SEM像と元素マッピングの比較ができます。分析原理としては線分析を1本の直線だけではなく二次元的に多数行うことです。そのため測定時間がかかります。線分析した試料を視覚的に評価したり、特定の相や不純物などの分布を評価する時などに使用します。

 

定量分析

定量分析は各元素の組成を測定することです。ただし、EDSは検出感度が悪いため、定量分析の信頼性は低いです。特性X線の定量分析としてはWDSの方が適しています。定量分析の方法としてはICP-AESなどの化学分析と同様に検量線法が精度が高いです。EPMA用の標準試料として高純度金属のFe、Alなどがあります。その他に化合物試料も市販されています。

 

定量分析を行うためには、あらかじめ含有量が明確な試料(標準試料)が必要です。そして、標準試料を使用して定量分析を行う手法を検量線といいます。例として炭素量の検量線による定量分析の概要を下図に示します。

 

EDSとWDSの分析項目:金属材料基礎講座(その125)

図.検量線

 

検量線による定量分析では、組成の異なる標準試料を複数種類用意する必要があります(0%の標準試料を含めて3~5種類程度あるとよいです)。この時用意する最大含有量の標準試料は、分析する試料の予想含有量よりも高くなければなりません。

 

この標準試料を分析機器で分析すると、含有量と強度(分析装置によって異なりますが、例えばEPMAの場合はX線強度になります)のグラフが得られます。このグラフが直線関係で表せることが重要です。その場合、検量線の組成の範囲内であれば、未知試料を測定した時の強度から組成を算出することができます。...

EDSとWDSの分析項目:金属材料基礎講座(その125)

 

◆ EDSとWDSの分析項目

EDSとWDSは測定精度の差はありますが分析項目は共通しています。それは定性分析、線分析、面分析、定量分析の4つです。

 

定性分析

定性分析は試料に含まれる元素を検出する分析です。特性X線のエネルギーや波長は元素ごとに異なるので、エネルギーや波長から元素を特定します。含まれる元素の量が多くなるほど特性X線のカウントも多くなります。そしてスペクトルピークが表れない時が検出下限となります。通常、定性分析では検出された元素と含有量が得られます。この含有量はおおよその値のため半定量とも呼ばれます。

 

線分析

線分析は試料のある箇所を直線的に分析し、濃度変化を調べることです。線分析の結果は折れ線グラフのように表されます。例えば亜鉛めっき鋼板であれば、めっき部分は亜鉛、鋼板部分は鉄が検出されます。他にも浸炭の炭素濃度のように合金元素の濃度分布を直線的に調べる時などにも使用されます。

 

面分析

面分析は試料のある領域を分析することで、視覚的に元素の分布を見られます。通常、SEM像と同時に分析するので、SEM像と元素マッピングの比較ができます。分析原理としては線分析を1本の直線だけではなく二次元的に多数行うことです。そのため測定時間がかかります。線分析した試料を視覚的に評価したり、特定の相や不純物などの分布を評価する時などに使用します。

 

定量分析

定量分析は各元素の組成を測定することです。ただし、EDSは検出感度が悪いため、定量分析の信頼性は低いです。特性X線の定量分析としてはWDSの方が適しています。定量分析の方法としてはICP-AESなどの化学分析と同様に検量線法が精度が高いです。EPMA用の標準試料として高純度金属のFe、Alなどがあります。その他に化合物試料も市販されています。

 

定量分析を行うためには、あらかじめ含有量が明確な試料(標準試料)が必要です。そして、標準試料を使用して定量分析を行う手法を検量線といいます。例として炭素量の検量線による定量分析の概要を下図に示します。

 

EDSとWDSの分析項目:金属材料基礎講座(その125)

図.検量線

 

検量線による定量分析では、組成の異なる標準試料を複数種類用意する必要があります(0%の標準試料を含めて3~5種類程度あるとよいです)。この時用意する最大含有量の標準試料は、分析する試料の予想含有量よりも高くなければなりません。

 

この標準試料を分析機器で分析すると、含有量と強度(分析装置によって異なりますが、例えばEPMAの場合はX線強度になります)のグラフが得られます。このグラフが直線関係で表せることが重要です。その場合、検量線の組成の範囲内であれば、未知試料を測定した時の強度から組成を算出することができます。上図の例では未知試料の強度が白丸であった時は、その炭素量は約1.2%となります。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

【目次】 1. 多重度因子 回折が例えば(100)で起こる時、同じ面間隔を持つ(010)、(001)などの面も同様に回折を起こしま...

【目次】 1. 多重度因子 回折が例えば(100)で起こる時、同じ面間隔を持つ(010)、(001)などの面も同様に回折を起こしま...


抵抗接合とろう接合  金属材料基礎講座(その31)

  1. 抵抗接合  抵抗接合としてスポット溶接があります。これは接合する板を重ねて、電極で挟み込むように圧力をかけます。  その模式図を...

  1. 抵抗接合  抵抗接合としてスポット溶接があります。これは接合する板を重ねて、電極で挟み込むように圧力をかけます。  その模式図を...


フィッシュアイとストライエーション 金属材料基礎講座(その43)

  1.フィッシュアイ  フィッシュアイは主に内部起点破壊の周辺に見られる模様です。  浸炭や高周波焼入れなどの熱処理をした鋼は表面が硬い...

  1.フィッシュアイ  フィッシュアイは主に内部起点破壊の周辺に見られる模様です。  浸炭や高周波焼入れなどの熱処理をした鋼は表面が硬い...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...