充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

投稿日

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

 

◆ 充填率計算 稠密六方格子

稠密六方格子の充填率を計算します。単位格子の体積を計算するときに格子定数を六角形の一辺の長さaとして体積を計算します。下図に示すように、稠密六方格子の底面(1000)面は一辺がaの正三角形が6個集まった形をしています。一辺がaの正三角形の面積(S1とします)は√3/4a2のため、底面の面積Sは図の中の式(1)となります。

 

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

図.稠密六方格子の格子定数と原子半径

 

そして、底面の正三角形と高さに注目すると、上下の面の3個の原子と中段1個の原子によって正三角錐が出来ています。これを下図に示します。正三角錐の高さc/2は三角形の重心と三平方の定理より図の中の式(2)となります。そして、稠密六方格子の高さcは図の中の(3)式となります。式(1)、(3)より稠密六方格子の単位格子の体積Vaは図の中の式(4)となります。

 

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

図.稠密六方格子の格子定数と高さ 

また、原子の半径をrとしたときの原子一つの体積Vrは式(5)となります。 

Vr=4πr3/3  (5) 

そして、単位格子の中にある原子の数は六角形の中心に2個、六角形の頂点に12個です。中段には3個の原子があります。(1000)面の中心の原子は半分(1/2)単位格子に含まれます。頂点にある原子は単位格子に含まれるのは1/6個となります。

 

中段の原子3個はそれぞれ少し欠けていますが、その分が隣の単位格子からはみ出しているので、丸3個となります。これらを踏まえて、単位格子に含まれる原子の数Nを計算すると式(3)となります。式(3)より格子定数の中には6個の原子が占めていることになります。

 

N=2(個)×1/2(割合)+12(個)×1/6(割合)+3個×1(割合)=1+2+3=6(個)  (6) 

 

格子定数と原子半径の関係ですが、稠密六方格子の底面に注目すると格子定数aには原子がすき間なく2個並んでいます。2個の原子のうち格子定数に含まれるのは半分のみとなります。そのため格子定数と原子半径は式(4)が成り立ちます。 

a=2r    (7)

式(4)~(7)を合わせると充填率Sに対して式(8)の関係式が成り立ちます。式(8)に式(7)を代入すると式(9)となり、計算すると式(10)、(11)になります。√2π/6を近似計算すると約0.74(74%)となります。これが稠密六方格子の充填率です。稠密六方格子は面心立方格子と同じ最密充填構造です。どちらの充填率も74%となります。

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴ...

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

 

◆ 充填率計算 稠密六方格子

稠密六方格子の充填率を計算します。単位格子の体積を計算するときに格子定数を六角形の一辺の長さaとして体積を計算します。下図に示すように、稠密六方格子の底面(1000)面は一辺がaの正三角形が6個集まった形をしています。一辺がaの正三角形の面積(S1とします)は√3/4a2のため、底面の面積Sは図の中の式(1)となります。

 

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

図.稠密六方格子の格子定数と原子半径

 

そして、底面の正三角形と高さに注目すると、上下の面の3個の原子と中段1個の原子によって正三角錐が出来ています。これを下図に示します。正三角錐の高さc/2は三角形の重心と三平方の定理より図の中の式(2)となります。そして、稠密六方格子の高さcは図の中の(3)式となります。式(1)、(3)より稠密六方格子の単位格子の体積Vaは図の中の式(4)となります。

 

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

図.稠密六方格子の格子定数と高さ 

また、原子の半径をrとしたときの原子一つの体積Vrは式(5)となります。 

Vr=4πr3/3  (5) 

そして、単位格子の中にある原子の数は六角形の中心に2個、六角形の頂点に12個です。中段には3個の原子があります。(1000)面の中心の原子は半分(1/2)単位格子に含まれます。頂点にある原子は単位格子に含まれるのは1/6個となります。

 

中段の原子3個はそれぞれ少し欠けていますが、その分が隣の単位格子からはみ出しているので、丸3個となります。これらを踏まえて、単位格子に含まれる原子の数Nを計算すると式(3)となります。式(3)より格子定数の中には6個の原子が占めていることになります。

 

N=2(個)×1/2(割合)+12(個)×1/6(割合)+3個×1(割合)=1+2+3=6(個)  (6) 

 

格子定数と原子半径の関係ですが、稠密六方格子の底面に注目すると格子定数aには原子がすき間なく2個並んでいます。2個の原子のうち格子定数に含まれるのは半分のみとなります。そのため格子定数と原子半径は式(4)が成り立ちます。 

a=2r    (7)

式(4)~(7)を合わせると充填率Sに対して式(8)の関係式が成り立ちます。式(8)に式(7)を代入すると式(9)となり、計算すると式(10)、(11)になります。√2π/6を近似計算すると約0.74(74%)となります。これが稠密六方格子の充填率です。稠密六方格子は面心立方格子と同じ最密充填構造です。どちらの充填率も74%となります。

充填率計算 稠密六方格子:金属材料基礎講座(その158)わかりやすく解説

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
液相の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その171) わかりやすく解説

  ◆ 液相の多い包晶組織の量的計算 包晶状態図の液相が多い組成における凝固、包晶反応、析出過程を見ていきます。図1に包晶反応状態図の模...

  ◆ 液相の多い包晶組織の量的計算 包晶状態図の液相が多い組成における凝固、包晶反応、析出過程を見ていきます。図1に包晶反応状態図の模...


ボルタ電池 金属材料基礎講座(その54)

  ◆ ボルタ電池の仕組み  2枚の材質の異なる電極を希硫酸などの電解質に浸すと電流が流れます。これは酸による腐食の簡単なモデルです(図...

  ◆ ボルタ電池の仕組み  2枚の材質の異なる電極を希硫酸などの電解質に浸すと電流が流れます。これは酸による腐食の簡単なモデルです(図...


共晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その165) わかりやすく解説

  ◆ 共晶組織の量的計算 共晶反応とは1つの液相から2つの固相αとβが同時に表れることです。なお、類似の言葉とし...

  ◆ 共晶組織の量的計算 共晶反応とは1つの液相から2つの固相αとβが同時に表れることです。なお、類似の言葉とし...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...