欠品を生じさせず、しかも在庫を少なくできるように、業務の足腰を鍛えて速度を制御する能力を磨く「熟練」もサプライチェーンの重要な法則です。この時代にこの熟練に基づいたスピードは、経営力と言っても良いでしょう。
交通量が少なければ十分な車間距離をとることで、初心者のドライバーはなんとか渋滞をまぬかれます。しかしいつまでも車間距離の長い運転しかしていなければ、実践的な運転技術は一向に向上せず教習所内でドライブするのと同じことです。それと同じで充分な在庫があれば、経営力が未熟でも欠品を起すことなく業務を続行できます。その点で、在庫は痛みを感じさせない鎮痛剤といえます。一方で、経営力を麻痺させる麻薬であることも認識しておかなければなりません。
トヨタ生産システムでは、現場作業者の判断で作業速度の制御をさせることを「ニンベンのあるジドウカ=自働化」と称しています。このトヨタ生産システムを作った大野耐一氏は「気がついたらトヨタ式が出来ていた」といっています。セブン・イレブンでは仕入を本部仕入ではなく店舗現場の判断に任せています。このことは「仕入は小売の意思である」と言う思想のもとに行われます。このような考え方は組織の集権経営の限界を示しており、自律神経と集中神経の組み合わせによる生き物としての企業経営組織論の有効性を述べた分散の法則といえるでしょう。
連鎖の統合や原価計算から受ける誤解、能力の余剰、又は冗長性が在庫の余剰を...