【物流改善ネタ出し講座 連載目次】
1.静脈物流としての回収作業
前回の第6回に続いて解説します。工場物流作業の中でも比較的目に留まりにくい作業に「回収作業」があります。この回収作業とは図1のように、生産ラインからいろいろなものを回収する作業のことを指します。生産ラインに対して資材や部品、完成品容器や生産指示情報などを届けることを血管になぞらえて「動脈物流」と呼びます。一方で回収作業は「静脈物流」と呼ばれています。工場の外では不良品を回収したり、空になった通箱を回収したりすることを回収物流と言います。工場の中では生産ラインで生産された完成品や空になった通箱、生産過程で発生した廃棄物などを回収する作業のことです。
図1.工場の静脈としての回収作業
このように効率的なものづくりを支える大切な役割にもかかわらずあまり注目されていないのがこの回収作業です。生産ラインで出来上がったもの、不要になったものはタイムリーにその場から撤去しなければ生産工程が詰まった状態になってしいます。そこで物流担当者がそれを回避するために作業を行う必要があるのです。
2.完成品引き取り作業で生産をコントロールせよ
前回供給作業を通じて生産コントロールを行うという話をしました。生産ラインに必要な数量の部品等をギリギリのタイミングで届けることで生産秩序を保ち、つくりすぎのムダを無くそうという試みです。図2のように、これは物流が計画通りの生産に必要な資源を届けることで生産を制御することから「入口規制」と呼ばれます。一方、完成品引き取りで生産を制御することを「出口規制」と呼びます。考え方は以下の通りです。
・原則として生産に必要な部品等の供給数規制は行わなくてもよい
・原則として完成品容器も供給数は規制しなくてもよい
・ただし完成品は計画通りの数のみ引き取る
図2.回収作業で生産統制
つまり供給作業では細かなコントロールを行わず、生産工程の出口だけで秩序を保とうとする考え方です。今必要な分(生産計画分)だけしか引き取らないため、生産ラインサイドのエリアの制約上、つくりすぎが規制されるというわけです。
この回収作業で生産コントロールを行うことで次のような物流が可能となります。
・部品等供給時に必要数をピッキングする必要が無い
・したがって納入荷姿のまま生産ラインに供給ができる
・完成品容器についても一定の数量をまとめてラインに供給することができる
本来であれば工場内物流は最初に「サービス業としての役割」を果たさなければなりません。しかし上記の方式であれば「生産をコントロールする」という第二の役割は果たしていることになります。工場内物流改善の終着点ではなく、その途上としての位置づけであればこの方式は許される範囲と言えるでしょう。
3.一対一の原則を守る
物流には「一対一の原則」というものがあります。これは中身入りの容器を1箱供給したら空になった容器を1箱回収するという考え方です。特に工場内での回収作業においてこの原則を守ることを徹底しましょう。生産ラインに部品等を供給するケースを考えてみましょう。供給作業者は生産ラインに部品を供給すると同時に同じ箱数だけ空容器を回収します。つまり50箱供給すれば原則として空容器を50箱回収することになるのです。
別のパターンも考えられます。部品等を供給する帰りに完成品を回収するパターンです。物流で避けたいことがあります。それは行きに荷を運んでいても帰りは手ぶらという状態のことです。工場の中でも何も持たずに走っているフォークリフトを目にすることがありますがこれだけは避けましょう。工場内物流の運用設計では一対一の原則を守れるような物流作業を構築しましょう。厳密に一対一にならなくても「常に行った先で帰り荷がある」状態を構築し物流上のロスを極小化したいものです。
4.返品管理という業務について
工場では不良を出すことは何としても無くしたいところですが、なかなか不良をゼロにすることは難しい課題だと言えるでしょう。いったん不良を流出してしまうとその回収作業が必要になります。それを担うのが物流です。物流では客先から不良品を回収するとともにそれを工場内の必要部署に返却することになります。この業務の...