クリーン化について(その145)クリーン化の基礎(その7)

【目次】

    ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。

     

    高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。クリーン化について(その144)クリーン化の基礎(その6)の続きです。

     

    ◆ クリーン化の4つの目的 

    前回に引き続き、解説します。

    4. 予防保全、延命化 (生産設備、付帯設備)

    昔、ある半導体の前工程でこんなことがありました。突然、設備がガタンと音を立て止まってしまった。保全担当が調べたが、なかなか原因が分からなかった。そして長時間かかって、やっとある部品が摩耗して故障していたことが判明した。その部品を交換しようとしたが、在庫がなかった。メーカーに注文したところ、「納期は2週間かかる」 と言われ、この設備を含むラインが2週間止まってしまった。

     

    管理職からは「早くしてもらってね」 とだけ言われたとのことです。ところ...

    が今ではどうでしょうか。こんなことをしていると、その職場の責任者はクビになってしまうかも知れません。その間製品が作れず、機会損失になるからです。そしてその間の様々な損失は取り返せないからです。これには、お客様に対する信用も含まれます。

     

    そうならないように、日頃から設備をよく見ることで、徐々に不具合が見つけられるようになります。全てではないにしても、発見の確率が向上し、不具合を見つける目が養えるのです。例えば、わずかな摩耗粉を見つけ、部品の損傷状態にまで気が回るようになるのです。そして発見したらその場で対応することが重要です。

     

    あるいは設備停止ができない場合、該当部分を明確にし、部品を用意して、次の保全計画に組み込み、修理する。つまり予防保全の考え方です。この継続で設備の延命化が図れ、減価償却が進みます。それによって安価に製品が製造でき、利益の増大に繋がります。この予防保全の考え方は生産設備だけでなく、それを取り巻く付帯設備も同じです。

     

    逆に “故障したら修理する” と言う後追いの繰り返しでは、その都度保全メンバーを呼ばなければならない。保全の担当者を呼びに行っても、他の設備を修理していて、すぐに対応してもらえなければ、設備停止の時間が長く、稼働率も下がってしまいます。保全担当も「またか…」 の繰り返しになるので、上司に「この設備は故障してばかりでもう手に負えません。早く新しい設備に更新してください」 と愚痴が出てしまうかも知れません。万が一、その話を真に受けて、新しい設備に買い替えてしまったらどうでしょう。減価償却が進んでいないのに買い替えてしまうと、儲け損ねてしまうのです。

     

     

    これまで “4つの目的” を解説してきました、上図最下段の職制・作業者・スタッフ等全員のクリーン化意識の向上、モラルの向上が最も重要です。クリーン化は現場の人だけがやることではなく、全員が参加することでその価値が出てきます。さて、もう一つ別な見方を紹介しよう。

     

    ◆ 人財育成のツールとしてのクリーン化

    “クリーン化を人財育成のツールとして活用すること” です。

     

    クリーン化による見方や考え方を人財育成に活用していくと、多くの人の見方が変わってきます。それで育った人たちが、先ほどの4つの項目に貢献してくれるのです。不具合に気づく人が増え、不具合の発見が早くなります。そして意識も変わることで早期発見、早期改善に繋がります。そして様々な損失が防げるのです。つまり、人材を人財に変えていくことです。するとクリーン化担当や保全担当だけでなく、全員が関わることに繋がってくるのです。一人のクリーン化担当では、どんなに頑張っても、目は二つ。でも二人で見れば四つの目です。それが人数分増えるので、発見力は高くなるのです。

     

    人の耳の周りの神経は数千、目の周りの神経は数万あるとも言われるようです。つまり目から入る情報は桁違いに多いと言うことです。視覚に訴えるという言葉があるように、瞬時に集める情報が多い。しかも脳裏に焼き付くとも言うように、画像でも残るのです。単に作業者という存在ではなく、その人が持つ力は無限にあります。そのことを理解し、大いに活用したいですね。それが企業、現場の差に現れるのです。

     

    次回に続きます。

     

    クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

    【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

     

    ↓ 続きを読むには・・・

    新規会員登録


    この記事の著者