思い込み・先入観は、直前の確認が防止策:ヒューマンエラー防止策(その8)

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【目次】

    1. 備忘録と忘備録はどっちが正しいですか?その訳は説明できますか?

    筆者は、忘備録(ぼうびろく)と呼んでいましたが、どういうわけか文字で書くときには「備忘録」と堂々?と書いていました。誰れかが指摘してくれる訳でもなく、何事もないまま日常的に使っていました。相当無神経ですが、一緒のことだと勘違いをしたままになっていました。どっちが文法的に正しいかですが、これもあいまいな答えにならないように、ちょっと原理原則を紐解いていきましょう。

     

    「登山」という言葉は、山に登ることです。「入金」は、金が入る「出金」は、金が出ると書きます。つまり「備忘録」の「備忘」は、“忘れることに備えるための記録”がその意味になります。「忘備録」は、“備えることを忘れるための記録”になります。やはり、何か日本語として変です。「読書」は、書いたものを読むです。「書読」は、読むことを書くとなると魔法のようにつじつまが合わなくなります。漢字には、このような原則があったのです。

     

    実は、「固定観念」も長い間「固定概念」だと思い使っていました。ある時、たまたま辞書を引いたのです。ない!?なんで?と探しました。「固定概念」は辞書にはない熟語でした。つまり、誤用だったのです。昔の文章を見ると、その証拠がいくつも残っています。今見ると、穴があったら入りたい心境です。知らないことは、何とも恐ろしいことです。さらに調べてみると、なんと国民の約5割の人もこの間違ったまま使っているので、何とかホッとしました。でも間違いに気づけば、すぐに訂正することです。

     

    それが、ヒューマンエラー防止策の良い方策でもあるのです。それ以降は正しく記述しています。これらの勘違いは、完全な思い込みです。思い込みですから、何かの大きなインパクトがないことには、訂正も修正もできないのです。恥をかけば、冷汗まで出てしまいますので、即刻変更し...

    たいものです。

     

    若者言葉に「ヤバい」があります。年齢を取った人たちには「ヤバい」は隠語で身の危険が迫ったときや都合の悪い状況のとき使う言葉が常識でした。著者の車は1981年製のクラシックカーですが、それを見た若者が「ヤバい」と言ったのです。その時には「超かっこいい」という意味とは分かりませんでした。今では、「現代用語辞典」にも掲載される用語になりました。時代が言葉をつくっていくものですが、原理原則も知っておくことも大切だと思います。 

     

    2. 思い込みや先入観が原因の場合、行動を起こす前から間違っている

    やっている途中にミスをすることを「スリップ」と呼びました。今回は、行動を起こす前に間違っていることも「ミス」と呼びます。この「ミス」は、思い込みや先入観が原因です。これは、治す薬がなかなかありません。なぜかと言いますと、習慣化しているからです。習慣したものは、一気に修正できるものではなく、少しずつ手直ししなければなりません。厄介で困ったことなのです。直すには何度も繰り返さなければなりません。そのために、一人ではなくチームで取り組む必要があります。チームで支え合って、現場の作業環境や仕組みをお互いが声を掛け合っていきしょう。ヒューマンエラーで発生した製品不良が市場に出てしまうと、その費用はおよそ仕切値の約千倍にもなってしまうのです。

     

    厄介なことも原理原則を知ることで、一気に目覚めることもあります。事例として、禁煙マークがあります。図1を見てください。AとBどっちが正しいと思いますか。国内外でこの事例出しましたが、Aは2割、Bが8割で圧倒的に間違っている認識だったのです。Bが正しいのは、単に右手で描きやすい、見た目にこの方が正しいなどと怪しげな回答です。正解は、Aです。でも答えた人になぜかと尋ねてみても、まともな答えは返ってきません。

     

    A           B

    図1. 禁煙マークは、ABのどれが正しいか、それは、なぜですか。

     

    正解率は、1%以下です。理由は、NO SmokingのNのスラッシュが、Oの字にスライドして、1つの象形文字になったのです。これは、ユニバーサルデザインです。この理屈を紹介したら、もう間違えません。実は、工場の中のヒューマンエラーの8割くらいは、原理原則を知らない、忘れたというのが原因なのです。そしてミスをしたら、どれくらい損失があるかも知っていると、ミスをしにくくなるのです。教育がとても大事なのです。いきなり、現場で作業させても、ミスが多いのは当然です。ミスを指摘され、段々自信をなくして行きます。車の免許も、いきなり路上運転させて試験はさせません。指導、教育、訓練は絶対に必要なのです。 

     

    3. 作業する前になぜその作業をするのか、知らしめることが事前の防止策

    作業する前に、なぜその作業をするのか、間違った方法で作業するとこのようなミスになるなどと、知らしめることが事前の防止策にもなります。これが、指導、教育、訓練にもなります。手間はかかりますが、省いてはいけない工程です。これをやらないでいると、そのしっぺ返しは大きな損失になります。

    その防止策の事例の1つを紹介します。図2は、工程で使用される治具が設置されている管理板です。一つの治具に簡単な取説が、セット化されて磁石で取り付けてあります。以前は治具だけでしたが、作業ミスが時々発生していたので、治具と取説とセットで現場に持っていき、迷ったら取説を見て作業することにしました。これが意外にも効果てき面でした。

     

    図2. 治具を持ち出す時には、取説も一緒に持ち出す

     

    疑問があれば、その取説を確認して作業すればよく、それでも疑問があればすぐにチームリーダーを呼び出し、確認の上作業することに徹底してもらいました。取説を見ることは、恥かしいことでもなく、むしろ念には念を入れるという姿勢であり、魂を込めることだと紹介し納得してもらいました。

     

    次回に続きます。

     

    【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

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