1. ヒヤリハットメモで危険箇所を共有せよ
安全に関する取り組みはどの業界でも共通して言えることですが、すべてに先立って行われる必要があります。物流の場合、構内での安全管理の必要性は言うまでもないことですが、仕事の特徴として公道を走るということがこの安全管理をより一層重要な位置づけとしているのです。公道で業務を遂行中にひとたび第三者に影響を及ぼしてしまったらそれこそ取り返しのつかないことになります。会社の存続にもかかわる重要問題に発展することもあり得るのです。その意味でも今一度、物流安全管理について考えていきたいと思います。
皆さんの会社では「ヒヤリハットメモ」を作成していますでしょうか。このメモは仕事をする過程で「ひやり」としたり「はっ」としたことをすぐにメモにしたりして他の人に危険があることを促すためのしくみです。物流ではこの「ヒヤリハットメモ」は安全管理上非常に有効な手段であると思います。公道上のどこに危険が潜んでいるのかを会社で共有できるからです。あそこの角は見通しが悪いので徐行が必要であるとか、このコースはカーブが多いのでこういった荷の積み方がベストだとかいった安全管理のためのノウハウが社内に蓄積されていくことになるのです。
この「ヒヤリハットメモ」を書くようにドライバーに指示してもなかなか書いてくれないという話があります。何故ならプロドライバーである自分がこんなことを書くなんてプライドが許さない、という心理が働くからです。しかし、自分がプロを極めたドライバーであったとしても公道上では他社からの影響を受けることだってあるはずです。ここは飛び出しが時々発生するとか、危険運転ドライバーがいるとかです。そこで「ヒヤリハットメモ」提出は奨励する、むしろ提出したドライバーを褒めるくらいのことをしても良いのではないかと思います。これが会社にとっての財産になることは間違いないわけですから。集めたメモは集約して社内で展開して共有するようにします。同時にミーティング時に内容を全員でシェアするようにしても良いでしょう。
2. KYTで危険予知センスを磨け
安全管理活動の一環としてよく「KYT」活動が行われています。KYTとは危険予知トレーニングの略称です。普段行っている仕事のどこに危険が潜んでいるのかを察知し、仕事のやり方を変えることによって危険を取り除こうという活動です。この活動は実際に仕事をやっている現場でその作業を観察しながら危険予知を行う方法や、作業をあらかじめビデオに撮っておいて会議室でそれを見ながら論議をする方法があります。活動の進行役はできるだけ参加者みんなに意見を出してもらうようにします。そして出てきた意見を否定しないことです。「それは仕方がない」とか「これくらいの危険はつきものだ」とかいった否定的な反応をすることは避けましょう。なぜならそのような「固定観念」そのものがリスクの可能性があるからです。
皆さんも経験があると思いますが、自分で気づかなかったところに意外な盲点が隠されていることがあるのです。他者からの意見は宝物と思って受け取る必要があります。そしてこのKYTにつきましても皆さんの意見をまとめ、その対策を織り込んで作業の仕方を再設計します。その際に、改善前と改善後の対比ができるように記録を作成しておきます。
この前後比較の資料を現場の見やすい場所に掲示します。これを見ると他の作業でも似たような危険を認識することが容易になると思います。このような安全に関する知識を貯めていって社内で共有化することで事故軽減につながるのです。そしてもし「ひやり」とした事例があったとしたら、その解決策を小集団活動で作成していくこともお勧めです。QCサークル活動の一環として「安全対策」を作っていくのです。QCで取り組むことの効果として次のようなことが挙げられます。QCストーリーは理路整然と問題点を解決していくステップになっています。そこで社員の皆さんがこの思考方法を身につけることができ、社内のいろいろな問題解決につなげていけるメリットがあるのです。
3. リスクアセスメントを実施しよう
物流は公道における安全管理はすべてに先立ちやらなければならないことは当然です。それと同時に、倉庫や工場といった構内での物流作業における安全についても気を配る必要があります。ものをハンドリングする時や、フォークリフト荷役を行う際には危険がつきものです。ハンドリングの際にものを落として骨折したとか、フォークリフトの爪で人を突いてしまって大けがをさせたような事例がたくさんあります。とにかく物流現場には危険の芽が多く潜んでいますから、倉庫や工場の安全パトロールを行って危険個所をつぶしておきたいものです。できるだけその現場の担当者だけではなく、他の部署の担当者を交えて現場パトロールを実施するようにしましょう。
他の部署の目で見ると、自分たちでは見慣れた景色が別のものに映る傾向があります。つまり安全だと思い込んでいた作業が実は不安全だったというような発見があるということです。そしてリスクアセスメントも実施します。リスクアセスメントとは職場にある様々な危険の芽(リスク)を見つけ出し、それにより起こることが予測される労働災害の重大さからリスクの大きさを見積もり、大きいものから順に対策を講じていく手法です。主な手順は以下の通りです。
- 職場に潜在するあらゆる危険性又は有害性を特定する。
- これらの危険性又は有害性ごとに、既存の予防措置による災害防止効果を考慮のうえリスクの大きさを見積もる。
- 見積もりに基づきリスクを低減するための優先度を設定し、リスク低減対策の内容を検討する。
- 優先度に対応したリスク低減措置を実施する。
- リスクアセスメントの結果及び実施したリスク低減措置を記録して災害防止のノウハウを蓄積し、次回のリスクアセスメントに利用する。
いかがでしょうか。何となくできそうな気がしてきたのではないでしょうか。物流業務の安全確保は経営者の責任でもあります。今一度その重要性を再認識し、安全で快適な職場を作っていきませんか。
4. 運輸安全マネジメントに取り組む
運輸事業者自らが安全管理に取り組み、輸送の安全性の向上を図ることを狙いとして、「運輸安全マネジメント制度」が平成18年10月から導入されました...