クリーン化について(その150)クリーン化の基礎(その12)

・前回の クリーン化について(その149)クリーン化の基礎(その11)の続きです。

【目次】

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    ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。

    高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。

     

    (3)三菱電機のCATS

    上図のクリーン化担当のところに、“三菱電機のCATS”と追記した。かつて、『三菱電機にはCATSがいる』 という本が出版されている(1989年、ダイヤモンド社)。CATSとは「Clean Analysis Team for Semiconductor(半導体におけるクリーン化の分析、解析をするチーム)」のことです。

     

    折しも、劇団四季のミュージカル“キャッツ”が始まったころで、同じ名前だったことから話題になったので、ご存じの方もいるでしょう。注目すべきことは、このメンバーは女性で構成されており、しかも物理や化学など理系の大卒者だったことです。この女性たちは日頃から良くクリーンルームに入っていたことです。

     

    “現場とはその場に現れる。そして状態は変化する”と書いたが、その現場に頻繁に入り、刻々と変化する現場の姿を観察しているのです。現場に入って、現物はどうか、現実はどうか、という三現主義で見るのです。その上で彼女たちの...

    専門を生かし、原理、原則で考える、つまり、5ゲン主義が揃うわけです。それに加え、女性の感性も活用できるのです。理論理屈だけで結論を出さず、実態もきちんと確認して裏付けを得ているのです。彼女たちの特許、論文、レポートは大変な量に及ぶようです。

     

    私は、クリーン化活動への女性の参加は価値がある、ということを伝えたくて、これまでのセミナーでも過去の話として紹介してきた。ところが、最近東京で実施したセミナーに、2回ほど三菱電機の方が受講してくれた。その内の一人の女性は、CATSのメンバーとのことでした。

     

    今まで紹介してきた話は、とかく美談で終わってしまうことがありがちですが、今でも水面下で脈々とDNAが継承されていることに驚いた。各種活動は長い間続けていても、どこかで消えて行ってしまうことが多いが、数十年(恐らく50年以上)続いていることは凄いことす。こうなると現場は強いのでしょう。この人たちから学ぶ立場なのに、私のセミナーを受講してくれたことは、偶然ではあるが、大変恐縮した。

     

    2022年後半、長野県の企業からクリーン化講演会の依頼があった。よく聞いてみると、やはり三菱電機のCATSのような組織があることがわかった。私が現場を這いずり回っていた時と同じような悩みや共通の話題を持っていて、このようなところがあるのだと嬉しくなった。このまま末永く継続した活動をしていただき、その継続でさらに強固な基盤を構築してもらいたいものだと願っています。

     

    (4)徹底して取り組むこと

    ◆ クリーン化4原則と監視の重要性

    クリーン化活動は、一旦始めたらやり続けることが重要です。上図の右に“日々発見、日々喜び”と記した。これは、若い頃私を指導してくれた先生が良く口にしていた言葉です。三菱電機には福本さんと言うゴミ博士がいた。私のいた会社でも講演していただいた。そして私の先生は、当時のわが社のゴミ博士だったように思う。

     

    幾つものラインを見てきた中で、クリーン化活動に特別熱心なラインがあった。こんなに良くやって、いつも奇麗になっているので、今日はもう不具合はないだろうと思いながら現場に入るのだそうです。ところがまた不具合を見つけてしまう。その時、「昨日の自分には見つけられなかった。昨日よりも発見能力が高まった、成長したんだ」 という喜びを感じるというのです。また、現場は日々変化する生き物です。その場に遭遇することで感動があるのです。

     

    私も長い間現場を見続けてきたので、この言葉は良く分かります。ところが、ある日現場を歩いていて、“この言葉には裏がある”ことに気づいた。それは、クリーンルームや設備は稼働したその日から日々劣化する。それを日々の巡回、監視で発見しているということです。“どんなに新しいクリーンルームや設備であっても、稼働したその時から劣化が始まる”のです。

     

    もちろん、新しい設備は初期不良も考慮しなくてはいけません。それらを含めての発見です。先ほど“現場とはその場に現れる”と書きました。それを発見しているのですが、毎日見つけられるわけではないのです。従って日々巡回することが重要で、その繰り返しから多面的にものを見たり、考えたりできるようになり、自己の成長に繋がるのです。

     

    【事例①】新品の設備はノーマーク

    ある工場から現場診断・指導の依頼があった。見て欲しいという設備から少し離れたところに、新しい設備が並んでいた。それを確認していたところ、「その設備は最近入ったので、見ても仕方ないです」 と言うのです。そこで、「これらの設備はみな同じですよね。でも設備背面に2個ずつあるファンは、両方回転しているもの、止まっているもの、回転方向が逆なものもあるけど、どうしてですか」 と聞いた。そして、設備背面に2個ずつあるファンの動きを気流観測用の糸(絹糸)で見せた。ファンに近づけると、吸い込まれるもの、反応しないもの、吹き出されるものがわかるわけです。これは新品の設備で、メーカーが立ち上げたばかりなので問題はないはずだ、という先入観で安心してしまった例です。設備立ち上げ時の問題でもあるが、たとえ新品であっても良く観察することが大切です。

     

    次回に続きます。

     

    クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

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