【QFD(品質機能展開)の考察 連載目次】
1.「品質」と「Quality」とQFD
日本のモノづくりに関する管理技術は、第2次大戦後アメリカからの教育に大きく依存していました。圧倒的な物量の差を除いて考えると、当時のモノづくりに対する状況が浮き彫りになってきます。ゼロ戦などを設計する技術は一流でしたが、生産の品質はバラバラだったのです。それゆえにアメリカの方法を学習することは、戦後の日本のモノづくりを担う人々にとっては必要不可欠でした。
戦後の日本は工業製品主体のモノづくりでしたから、“Quality”を製品の質つまり“品質”と訳したことは、ある意味必然だったでしょう。QFD(品質機能展開)の“Quality”も例外ではありません。しかし現在の“Quality”はモノの質に対してばかりではなく、“経営の質”あるいは“開発の質”や“医療の質”など、幅広い分野で論じられるようになっています。そんな中にあって、QFDも質を確保し保証するさまざまな分野に適用されています。
2.マトリックスとQFD
「マトリックス」と聞くと、縦と横の表(行列)を思い浮かべる方がほとんどでしょう。辞書を引くと、下のように書かれています。
マトリックス(matrix)とは? 1. 母体(生み出すもの、生み出す機能)、基盤 |
※ 映画では、仮想現実を生み出す背景となる、コンピュータの作り出した仮想現実空間を「Matrix」と呼んでいる
われわれが生まれて最初に出会った「マトリックス」は、いったい何だったと思いますか? そう、小学校1年生の時に渡された時間割です。横は月曜日から土曜日まで(筆者の時代には土曜日も学校があった)縦は1時間目から6時間目までです。この表が、なぜ「マトリックス」なのでしょう?
ある曜日を考えてみましょう。1時間目から国語・国語・国語・算数・算数・算数などといった時間割はなかったはずです。それは学校が生徒に対して、すべての教科をまんべんなく、しかも飽きさせずに学ばせるために、各教科をちりばめた結果だったからです。しかし、夏の暑い時期の5・6時間目には体育・体育と続けて行う。これはプールの時間を確保するために、意識的に続けた結果だと推察できます。このように、各教科をランダムにちりばめた表ではなく、ある目的にしたがって組み立てた表を「マトリックス」と呼ぶのです。
「マトリックス」の基本的な意味は「生み出すもの」です。したがってQFDは、縦と横を組み合わせて何かを発見することや、完成時に何かが生み出されることが重要となってきます。決して表をつくることが目的ではありません。マトリックスの作成は“知識”や“情報”などを縦と横に配置し、作成者の体験で表を埋めていきそのアウトプットを“知恵”に変えることです。この原則は今も昔も変わっていません。
余談ですが、数学や物理の世界で、マトリックスがなぜ行列を表...