企業活動は製造業であれ、流通サービス業であれ、物の流れであるサプライチェーンを経ながら付加価値が加わっていき、このことをバリューチェーンと言います。素材を加工し製造するプロセスも、最終的にユーザーまたは消費者が製品を手に入れるまでの輸送も、付加価値をつける連鎖(バリューチェーン)なのです。工場の倉庫にある加工食品に対して、家の近くのコンビニエンスストアでバラ売りされている加工食品は、流通という価値が付加されて価値が上がります。
その価値の付加は、サプライチェーンの各オペレーションにおける経費であり、企業の利益です。組立メーカーは部品を仕入れ、その部品を組立という工程を経て新しい価値を付加しています。この部品コストには、部品サプライヤのオペレーション経費と利益が含まれますが、このように部品一つをみてもさまざまな業界を経てサプライチェーンに対応したバリューチェーンが形成されているのです。また、サプライチェーンのオペレーション間に介在する仕掛在庫、部品在庫、製品在庫などのバッファは、価値が在庫経費として付加された資産となります。バリューチェーンのバリュー(価値)は、会計上の原価計算によって経費が加算され、資産価値を上げることになります。
ところが、サプライチェーンマネジメントではキャッシュフローを上げることが目的ですから、経費の資産化というだけでキャッシュフローの上がらないオペレーションには慎重に対応する必要があります。それはキャッシュフローを生む価値と、バリューチェーンの価値はまったく別の要因で決定されるからです。キャッシュフローを生む価値は、競合ひしめく市場の中で、消費者やユーザーとの関係で決定されるのに対して、バリューチェーンの価値は提供者、すなわちサプライヤの論理で決定されます。
製品価値がキャッシュフローに変わるサプライチェーンのオペレーションは、現実には販売だけですが、価値と数量というキャッシュフローをマネジメントす...
スループットと経費を区分するサプライチェーンマネジメントの指標では、バリューチェーンという経費を製品価値に組み入れて資産化するプロセスに注意しておく必要があります。
デフレの時代では付加価値を増大させるバリューチェーンが、価値下落の連鎖になる可能性があるのです。