1.モチベ―ションをどう捉えるか
かつて、バブルの全盛期に、新卒を採用するためにいろいろな特典を用意していたことを覚えているでしょうか。車を買ってあげたり、海外研修(旅行)を実施したりして、モノで学生の心を釣っていました。最近でも、よい人材を採用するために、イメージのよい都心やブランド化されている地名にオフィスや研究所を設ける企業が続出しています。その流れは、大学も同じようです。かつて、都心を脱出して緑豊かな郊外にキャンパスを設けた大学が、少子化を理由に、都心に回帰しています。経営者の心も変化してしまったのでしょうか。
現在では、終身雇用の時代は終わろうとしています。明らかに実感できる雇用環境激変の例が、正社員、契約社員、パート、アルバイト、業務委託といった雇用形態の変化です。このような時代に、どう従業員満足を実現するかが大きな課題となっています。多くの企業では、経営理念を見ると、顧客重視の姿勢を示しています。また、同じくらい又はその次ぐらいに、従業員満足を経営の重点とされているのではないでしょうか。
2.研究開発に効果的なモチベーション理論
一般的に、モチベーション理論として、ハーズバーグの動機付け・衛生理論が有名です。職場環境の良さ、休みの多さ、処遇の高さなどでは、モチベーションが一時的にしか改善できないということでした。もし、職場環境が改善されても、いつかそれに慣れてしまいます。つまり、それは必要条件であるが、十分条件ではないのです。ここでは、研究開発に効果的なモチベ―ション理論を紹介します。モチベーションを内発的動機付けとして捉え、図1のように4つに小分けしてみました。
図1 動機づけ要因と裏付け理論
一つ目は、「テーマの面白さやチャレンジ」です。この裏付けとして、ブルームの期待値理論があります。二つ目は、「テーマを実行する目的・意義および組織的貢献感」です。この裏付けとして、アトキンソンの期待×価値モデル、フランクルの意味への意思、ブルームの期待値理論があります。三つ目は、「チーム等のコミュニケーション」です。この裏付けとして、エドワード・デシの関係性への欲求、マズローの所属欲求があります。四つ目は、「メンバー・お客様などから認められること」です。この裏付けとして、マズローの承認欲求、フランクルの意味への意思があります。
3.モチベーション理論の詳細
裏付け理論の中で、なじみのない理論を、いくつか確認しておきます。ブルームはモチベーションを引き起こす誘因として、テーマの魅力度、組織的貢献度、テーマ達成の可能性を挙げています。
アトキンソンの期待・価値モデルは、難しい課題ならば、達成されたときには、大きな喜びとなる。目標が容易に達成されるものは、成功への主観的確率は高いが、目標の魅力度は低くなる。つまり、「出来るかもしれないし、出来ないかもしれない」ときに、課題への動機付けが最も高まるとしています。
フランクルの意味への意思は、人間とは意味を求める存在である。意味を見出す方法は3つ。何かを創造したり、何かを体験したり、自らの運命に対して取る心構えと態度であるとしています。
最後に、エドワード・デシの心理的欲求の意味は、人が生得的に持っている心理的欲求として、自律性への欲求、有能感への欲求、関係性への欲求の3つを上げています。有能感とは、コンピテンシーのことであり、関係性とは、コミュニケーションのことです。