TRIZ(発明問題解決の理論)の紹介 (その2)

1. TRIZの学習・普及の課題

 TRIZの紹介その1で述べたように、 TRIZは技術に対する新しい認識の面でも 問題解決の技法の面でも 膨大な知識体系を蓄積しており、 教科書・ハンドブック・ソフトウェアツールになっています。その内容は高度で豊富であり技術革新の大きな力に成り得ることは間違いありません。  ところが 1990年代の米国でのTRIZの普及は遅々としていました。その理由は、TRIZの内容が貧弱だからではなく、逆にあまりにも膨大で豊富であったためです。
 
 TRIZの紹介その1で述べた内容は、すべて膨大な知識ベースを成しているからそれを理解し覚えるには大変な努力と時間を要します。覚えないで済ますには、これらの知識ベースをいつも手元で使えるようにしておかねばならず設備が必要であったり、煩わしかったり、うまく使えなかったりします。
 
 旧ソ連では、自分から望んで来た学生・技術者に対して、大学院レベルの2年間の教育を施して、TRIZ専門家を育ててきました。しかし、欧米でも日本でも企業技術者にそれだけの教育を行う時間的余裕がありません。できれば、3日間程度のセミナーで基本を習得し実践できることが望ましいところです。  この実情を考えると、TRIZのエッセンスとして何を教え・学ぶのか、そして、どのように簡便に実地で使えるようにするのかがTRIZの普及の鍵であることが分かります。 
   

2.  TRIZのエッセンス

 そこで、TRIZが抽出した沢山の原理や技法をさらにまとめて、TRIZのエッセンスとは何かを理解する必要があります。それは、知識ベースのレベルでなく思想のレベルでTRIZを理解することです。著者は、サラマトフのTRIZ教科書 を翻訳して、ようやくその思想が理解できました。2001年3月の国際会議TRIZCONのときに、著者は「50語で表現したTRIZのエッセンス」という1枚のスライドを示しました。それを (英文での構文を残して) 和訳すると以下のようです。 
 
 

TRIZの認識

 「技術システムが進化する 理想性の増大に向かって矛盾を克服しつつ、大抵、リソースの最小限の導入により」そこで、創造的問題解決のためにTRIZは、 弁証法的な思考を提供する。すなわち、問題をシステムとして理解し、 理想解を最初にイメージし、 矛盾を解決すること。 
 
 このように、TRIZのエッセンスを理解し、そのエッセンスを取り入れた問題解決プロセスを習得すればよいのです。 
   

3. やさしい問題解決プロセスUSIT

 伝統的なTRIZの問題解決プロセスは 難しい。そのTRIZプロセスの簡易化は、 1980年代にイスラエルで試みられ、1995年に米国フォード社のシカフスによって改良され、USIT (統合的構造化発明思考法)が作られました。著者はこれを1999年に習得し、日本国内で普及活動をしています。USITのプロセスは、 図1のような明確なフローチャートで示されます。内部の各方法には明確なガイドラインが示されて、習得が容易です。
 
              
図1.USITのプロセス
 
 USITの適用には、問題を持つ技術者たちとUSIT法を習得した者とが作業グループを作り、 問題解決に当たるとよい。ハン...
ドブックもソフトツールも一切用いない。実地の問題で、コンセプトレベルの解決策を複数確実に生み出すことができます。
  

4. おわりに   

 以上に述べたように、TRIZはロシア生まれの新しい技術思想です。技術的な問題を創造的に解決するための技法を豊富に持っています。これを習得すれば、 技術界・産業界・学界において、 技術革新の大きな力が生まれるに違いありません。
 
  TRIZは、 技術分野での創造的問題解決だけでなく、 サービスなどの非技術分野の問題解決にも適用されます。また、 ロシアでは創造性教育の実績も豊富にあります。今後、 日本においても大きなインパクトを与えるものと期待されます。  
 
出典:「TRIZホームページ」2001年:日本創造学会第23回研究大会資料より
    

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