エンジニアが身につけるべきスキルとは何でしょうか、各エンジニアの専門分野の知識はそのエンジニアのレゾンデートルですが、共通して必要な基本的知識として統計の知識があります。
統計リテラシーが必要と言うことです。
統計学は全ての技術職で活用できる非常に有効なスキルです。必要性を英語で表せばshouldと言う所ですがエンジニアにおいては
Mustと言っても 差し支えありません。
例えば製造要因、AとBがあり、双方の最適条件を見出す実験をするとします。 Aが、薬液1の濃度で、Bが温度とでも思って貰えると良いでしょう。普通はまず、Bを固定しAの条件を振ってAの最適値A1を見つけます。次に、AをA1に固定しBの条件を振ってBの最適値B2を見つけると思います。そして得られた条件A1B1を、双方の最適値とするのでは無いでしょうか。
もし「 これではダメだ 」と突込こめる方は、きっと実験計画法(Design of Experiment)をご存じの方でしょう。 知らずに問題点を見ぬいた方は技術者としてのセンスがあります。
上記の例で、正解のケースは AとB それぞれが他方の影響を受けない場合です。統計的に言えば独立で、交互作用が無い場合になります。AとBが特定の条件の時に顕著な挙動を示したとしたらどうでしょう。 つまり、AとB、それぞれの単独の最適条件が、ABの最適条件とは限らないと言うことです。
ビールとウイスキーを飲酒した場合の酔っ払い度について考えてみましょう。酔い度を血中アルコール濃度で示して良いのかわかりませんので仮に酔度とします。ビールをコップ一杯飲んだ時の酔度が20とします。同様にウイスキーをコップ一杯飲んだ時の酔度が80だとします。では、それぞれを一杯ずつ飲んだら酔度は、20+80=100と、考えて良いでしょうか。
酔度は100では無くもっと大きい数値かもしれません。実際ちゃんぽんは悪酔いすると言います。ビールの炭酸が胃の粘膜を剥ぎ取り、そこにウイスキーの高度数アルコールを飲むので、酔いが強くなる。正誤はともかく、こういう作用を考えると単独飲酒より効果は倍増するはずです。
仮にですが、もしビールとウイスキーがそれぞれを分解する作用を持っていたとしたら 酔度が下がり100未満になるかもしれません。つまり単独で飲酒した場合より酔が増大しても、逆に減っても、ビールとウイスキーは、「 交互作用 」があると言えるわけです。実験計画法の利点の一つは、要因間の交互作用の有無を考慮出来る事です。
実際の現場では複数の要因があり、最適条件を見つけることは困難な場合が多いのがあたりまえです。例えば先に述べた薬液濃度Aと温度Bに加え、C:薬液2の濃度、D:処理時間、E:撹拌の強さ・・の様に5つの要因下で最適値を見つける場合はどうするのか。
また、私はばらつきをについては何となく標準偏差の数値を併記していただけでした。平均値しか見ないよりは良いかもしれませんが、ばらつきを評価していたとは言えず、その点でも実験計画法を学んだ意義がありました。実験計画法を学ぶ過程で検定や推定、分散分析等の重要な統計分析については自ずと身についてくるからです。
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