フォークリフトを考える 物流改善ネタ出し講座 (その3)

 

【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.フォークリフトの用途は何か

 
 前回の第2回に続いて解説します。皆さんの工場ではフォークリフトを使っているのではないでしょうか。フォークリフトは何のための機械でしょうか。ちょっと考えてみていただきたい。筆者はいろいろなところでこの質問をすると最も多く返ってくる回答は「運搬のための機械」という答えです。確かに工場の中でフォークリフトがものを運搬している光景をよく見かけるので、「運搬機械」という認識が頭の中にあるのだと思われます。
 
 しかしこの回答は正解ではありません。フォークリフトは荷役のための機械です。つまり重いものを上げ下げする、棚に出し入れする、トラックから荷下ろしするなどの荷役行為のために使う機械という考え方が正しいのではないでしょうか。たまたまフォークリフトにはタイヤがついているので、荷役のついでに離れたところまで運んでしまえば便利だという発想から、いつの間にか運搬のための機械という認識になってしまったようです。

 

 
 フォークリフトは安全の観点からも工場内ではできるだけ使わないことが望ましいようです。爪で人を突いてしまったら大けがにつながります。バランスも必ずしも良いとは言えないので転倒のリスクもあります。過去の事例からも、万一転倒した場合には死亡事故となる確率が極めて高いことがわかっています。したがってフォークリフトを使う場合には入念な安全管理が必要となるのです。
 

2.稼働分析をやってみよう

 
 「えっ!フォークリフトを追いかけていくの?」フォークリフトの稼働分析というとどうやったらいいのか、疑問に思う方も多いかもしれません。確かにフォークリフトに座席を付けて同乗調査を行うことも考えられるますが、安全上の問題から好ましくありません。そこでフォークリフトの稼働分析にはワークサンプリングを活用します。
 
 この手法で大体の稼働状況は把握できるので、工場内の定点で複数台のフォークリフトを同時に観測しましょう。その時に稼働状況で特に注意すべき点は以下の三点です。一つ目は「空走行」。これは何も持たずに走行している状態で、手待ちのケースや、次に運搬すべきものを探しながら走り回るパトロール走行と呼ばれるケースです。二つ目は「繰り返し荷役」。入っている部品が異なる三つの容器が積み重ねてあったとすると、その内真ん中の容器を取り出す際には、その容器の上の容器と同時にフォークリフトでいったん床に下ろし、上段容器を元の位置に戻すといった荷役作業が必要になります。
 
 三つ目は「渋滞による手待ち」。工場内通路で他のフォークリフトが荷役作業を行っていると、当方のフォークリフトはその通路を走行できず、いったんその場で手待ちが発生。これが渋滞による手待ちです。これらはいずれもフォークリフト作業におけるムダにあたります。その他にも稼働分析から見えてくるムダがあると思われるので、しっかりと観察して下さい。
 
 フォークリフト作業に伴って発生するムダについても認識して、たとえばフォークリフトがラインサイドで部品を入れ替える際に生産作業者が手待ちになることがあります。ラインサイド部品をフォークリフトでしか出し入れできない場合には、フォークリフトが到着するまでの間に生産作業者が手待ちになることもあります。このように生産ラインの設計の仕方で思わぬ生産ロスを発生させてしまうことがあるので注意が必要です。フォークリフト稼働分析結果の例を図1.に示したので参考にして下さい。類似した問題が皆さんの工場にもあるかもしれないので、ぜひ注意して調査を実施して下さい。
 
                 
図1.フォークリフト稼働分析
 

3.フォークリフトレス工場を目指そう

 
 フォークリフトの稼働分析で見つかった問題点を一つひとつ改善していくことで物流生産性だけではなく生産ラインの効率向上にもつながります。問題点と改善方策の事例を図2.に示したのでこちらも参考にして下さい。さて先に記したようにフォークリフトは...
荷役機械です。扱いにあたっては安全上の配慮が欠かせません。そこでフォークリフトを使える場所は工場にものが入ってくるところ(入荷場)と出ていくところ(出荷場)、そして物流倉庫のみでの荷役作業に限定し、生産エリア内ではフォークリフトを使わない供給作業へと転換していくことが肝要です。
 
               
図2.問題点と改善方策例
 
   この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
 
 

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