サプライチェーンの上位レベルと下位レベルとは

更新日

投稿日

 サプライチェーン(供給連鎖)は、材料・部品の供給から加工・製造・流通を経て顧客へ引渡すまでの、物の流れ・加工プロセスの連鎖(チェーン)です。サプライチェーンマネジメントは、企業や部門間の壁を越えて全体をみる必要があります。一つの会社や事業単位(BU:ビジネスユニット)のキャッシュフロー(資金の流れ)を上げる目的に沿って、サプライチェーンの構成要素をみると、基本的ビジネスプロセスは「調達」と「製造」と「納入(販売)」からなり、SCC(サプライチェーン協議会)では「ソース」、「メイク」、「デリバー」を基本的なプロセスとしています。

 さらに、二つの基本プロセスの水平的広がりとして、サプライヤのサプライヤのサプライヤ……、またはカスタマーのカスタマーのカスタマー……、というように、業種別に素材メーカー、部品メーカー、セットメーカー、最終製品メーカー、ユーザー(消費者)などの広がりがあり、マネジメントの対象である事業の属する業種によって、マネジメントの範囲を決める必要があります。

 サプライチェーンの階層もマネジメント可能なレベルまで、要素を細分化してみましょう。製造プロセスを部品加工・組立・検査と大きく分け、さらに部品加工を切断→研磨→ドリル→ベンディングなどに分けてプロセスをみる必要がある場合もあります。

 

 いずれにしても、サプライチェーン上のプロセスを表現するモデルが、製造・納入・販売などのビジネスプロセスであり、それを達成する手段が設備や人のリソース(経営資源)です。生産だけでなく販売も含むので、サプライチェーンマネジメントのリソースには、船、トラック、航空便などの運送手段や、店舗やセールスマンなどの販売のための物的・人的リソースを含めた構成要素を考えなければなりません。

 このように、サプライチェーンは上位レベルと下位レベルが幾層にもつながった複雑系としてとらえられます。一つの工場内のサプライチェーンを考えてみると、下位は作業の連鎖があり、上位には複数工場と倉庫や販売拠点をつなぐ経営機能の連鎖があるのです。

 産業として、素材メーカー、部品メーカー、セットメーカー、流通業者の集合を複雑系の要素(エージェント)とみれば、業界の物(製品)の連鎖は経...

 サプライチェーン(供給連鎖)は、材料・部品の供給から加工・製造・流通を経て顧客へ引渡すまでの、物の流れ・加工プロセスの連鎖(チェーン)です。サプライチェーンマネジメントは、企業や部門間の壁を越えて全体をみる必要があります。一つの会社や事業単位(BU:ビジネスユニット)のキャッシュフロー(資金の流れ)を上げる目的に沿って、サプライチェーンの構成要素をみると、基本的ビジネスプロセスは「調達」と「製造」と「納入(販売)」からなり、SCC(サプライチェーン協議会)では「ソース」、「メイク」、「デリバー」を基本的なプロセスとしています。

 さらに、二つの基本プロセスの水平的広がりとして、サプライヤのサプライヤのサプライヤ……、またはカスタマーのカスタマーのカスタマー……、というように、業種別に素材メーカー、部品メーカー、セットメーカー、最終製品メーカー、ユーザー(消費者)などの広がりがあり、マネジメントの対象である事業の属する業種によって、マネジメントの範囲を決める必要があります。

 サプライチェーンの階層もマネジメント可能なレベルまで、要素を細分化してみましょう。製造プロセスを部品加工・組立・検査と大きく分け、さらに部品加工を切断→研磨→ドリル→ベンディングなどに分けてプロセスをみる必要がある場合もあります。

 

 いずれにしても、サプライチェーン上のプロセスを表現するモデルが、製造・納入・販売などのビジネスプロセスであり、それを達成する手段が設備や人のリソース(経営資源)です。生産だけでなく販売も含むので、サプライチェーンマネジメントのリソースには、船、トラック、航空便などの運送手段や、店舗やセールスマンなどの販売のための物的・人的リソースを含めた構成要素を考えなければなりません。

 このように、サプライチェーンは上位レベルと下位レベルが幾層にもつながった複雑系としてとらえられます。一つの工場内のサプライチェーンを考えてみると、下位は作業の連鎖があり、上位には複数工場と倉庫や販売拠点をつなぐ経営機能の連鎖があるのです。

 産業として、素材メーカー、部品メーカー、セットメーカー、流通業者の集合を複雑系の要素(エージェント)とみれば、業界の物(製品)の連鎖は経済圏につながっています。そしてそれぞれのサプライチェーンのゴール(目標)が異なり、下位の部分最適の総和と上位の全体最適は一致しません。

 不良債権問題でもがいている日本経済は、金詰まり(不足)と金余り(過剰)の全体最適の同期化がうまくいっていない、上位レベルでの物と金のサプライチェーンマネジメントの問題ではないかと考えられます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
サプライチェーンにおけるリードタイムとは

 サプライチェーンにおけるリードタイムは、サプライチェーンの入口に部材が投入されてキャッシュフローとなる製品が顧客に納入されるまでの時間の合計です。例えば...

 サプライチェーンにおけるリードタイムは、サプライチェーンの入口に部材が投入されてキャッシュフローとなる製品が顧客に納入されるまでの時間の合計です。例えば...


サプライチェーンにおける収益向上のメカニズム

 オペレーションの連携、すなわちシンクロナイゼーションがサプライチェーンマネジメントの課題です。一般的なジャストインタイムの定義は、必要なものを、必要な時...

 オペレーションの連携、すなわちシンクロナイゼーションがサプライチェーンマネジメントの課題です。一般的なジャストインタイムの定義は、必要なものを、必要な時...


海外工場支援者のための「物流指導7つ道具」(その2)

第2回 道具1「現地物流診断シート」   ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.工場立地と物流    工場が海...

第2回 道具1「現地物流診断シート」   ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.工場立地と物流    工場が海...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
ロケーション管理の現実 すっきりした物流現場のつくり方(その3)

◆ 在庫管理の4原則の整備  在庫管理の4原則である「在庫の所在がすぐにわかる」「在庫の数量がすぐにわかる」「先入先出ができる」「アクションの緊急度...

◆ 在庫管理の4原則の整備  在庫管理の4原則である「在庫の所在がすぐにわかる」「在庫の数量がすぐにわかる」「先入先出ができる」「アクションの緊急度...


二つの視点とは 物流で会社利益向上のチャンスを見逃すな(その1)

◆ 会社利益を30%向上するために  利益を向上させるためには利益率の高い仕事の比率を増やすことと、コストをとことん切り詰めることのいずれかが必要に...

◆ 会社利益を30%向上するために  利益を向上させるためには利益率の高い仕事の比率を増やすことと、コストをとことん切り詰めることのいずれかが必要に...


新たな発想で仕事を広げる・仕事を変えるとは

  1. 物流5機能にとらわれるな  長年仕事を進めているとその仕事のやり方に慣れてしまいます。それが当たり前になります。これはどんな仕事でも同じ...

  1. 物流5機能にとらわれるな  長年仕事を進めているとその仕事のやり方に慣れてしまいます。それが当たり前になります。これはどんな仕事でも同じ...