在庫保管と倉庫改善(その2)

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1. 容器の入数

 部品や資材を調達する際に、多くの場合それらは容器に入れられて納入されます。その容器の入り数は在庫管理には重要ポイントになりますので、少し考えていきましょう。まず会社として部品などをいくつ調達したいかを考えます。この数量は製品を何台生産するのかによっておのずと決まってきます。そして大切なことは生産(使用)する数量を超えて部品などを買わないということです。生産と調達が分離しているととかくこの数量のミスマッチが発生します。
 
 よくあることですが、今買うと安いからまとめて買っておこう、という発想は止めるべきでしょう。もちろん、市況に大きく振られるものでしたら考慮の余地はありますが、原則は使う分だけ購入するということになります。次に容器と数量の関係性についてです。自社がどのようなものづくりをするのかによって変わってきます。1日に1回、その製品をまとめて生産するのであれば、1日分を1容器に入れてもらうという考え方があります。
 
 しかし、1日に複数回ロットで生産する場合や、同じ製品を複数ラインで生産するような場合はこの荷姿では都合が悪いでしょう。もし2ラインで1日に1回ずつ生産するのであれば、1日の数量を2分割にした数量を容器の入数とすることが考えられます。また、1日に4分割で生産する場合には4分の1の数量を1容器に入れてもらうことになります。このように、会社としてどのような生産を行うかに応じて入数のルールを決めておくとよいでしょう。
 
 荷姿のつくり方ですが、よくあるやり方として「容器を先に決めて入るだけ入れる」ということが挙げられます。でもこの荷姿設定方法は間違っています。このようなやり方では大抵在庫過多になりがちです。そうではなく、「入り数を決めてから容器を選択する」という方法が正しいやり方です。正しい入数を決めて発注をかけることで、余分な在庫の滞留を防ぐことができます。次に視点を倉庫の中の効率に移しましょう。皆さんもご存知の通り、倉庫には2つの効率化の視点があります。1つは保管効率です。そしてもう1つが作業効率です。この2つの効率化について少し考えてみたいと思います。
 
  SCM
 

2. 倉庫保管効率

 倉庫改善を行うにあたって2つの点に注意が必要です。1つは倉庫保管効率、もう1つは作業効率です。どちらを優先するのか、両立させるのかの判断によって取り組み方は変わってきます。まず倉庫保管効率について考えていきましょう。この指標はどれだけ倉庫を有効に活用できているのかを示す指標です。倉庫を1つの箱として考えて下さい。その箱の容積に対して、どれだけ保管物が占めているのかを示す指標が倉庫保管効率ということになります。当然のことながら、この指標が高ければ高いほど、倉庫を有効に活用できていると評価することができます。
 
 よく倉庫の床面積の内どれだけものが置かれているのかを示す評価が使われます。確かにこのような見方もありますが、倉庫は高さも活用する必要があるため、この面積基準の指標では倉庫の活用度は正しく把握できません。まず難しく考えずに、倉庫の内法寸法を掛け算して、物理的な容積をはじいてみましょう。そしてあとは保管物の容積をすべて足し合わせて、それを倉庫総容積で割ります。その結果出てきた値が倉庫保管効率ということになります。きっとあまりの低さに驚かれることでしょう。
 
 もしかしたらその数字は一桁パーセントかもしれません。でもそれでよいのです。いかに倉庫を有効活用していないかが認識でき、それを向上させるきっかけになるはずですから。この指標を落とす最大の要素は「倉庫内通路」です。通常通路の上には何も置かないでしょうから、通路面から倉庫の天井までがすべて「空間」になります。仮に倉庫床面積に対する通路の比率を示す「通路率」が40%だとすると、無条件にその倉庫の保管効率の最大値は60%になります。通路は倉庫内では付加価値を生まないデッドスペースです。この通路をいかに少なくするかが倉庫を有効活用するカギになります。
 
 もう1つ、倉庫有効活用のポイントは高さの活用です。仮に倉庫内高さが6mあったとしても、4mまでしか保管しないのであれば、3分の1の空間はムダ空間ということになります。安全を考慮した上で、高さ方向はとにかく使い切るという発想が必要になるでしょう。特に不動在庫を補完する場合、通路スペースを削除しても「詰め込む改善」が重要になってきます。在庫の特性に応じて保管効率をどのレベルに持っていくべきかについて考えていきましょう。
 

3. 倉庫作業効率と倉庫マネジメント

 倉庫では保管効率を向上させることが大切ですが、それと同じく重要なことがあります。それは倉庫の中で作業をする際の作業性を良くすることです。これを倉庫作業効率向上と呼びます。しかしよく考えるとこの2つの指標は相反するところに気づきます。倉庫保管効率はとにかく倉庫というインフラを目いっぱい使いきることによって大幅向上が図られます。隙間もないほどに在庫を詰め込むと倉庫は十分活用されたことになりますが、奥に保管されているものを引き出すのに工数がかかることになります。
 
 つまりこの「倉庫保管効率」と「倉庫作業効率」とはトレードオフの関係にあるといえます。ではこの2つについてどのようなバランスを取っていったらよいのでしょうか。それこそ倉庫マネジメントの重要ポイントということになります。ほとんど動くことのな...

1. 容器の入数

 部品や資材を調達する際に、多くの場合それらは容器に入れられて納入されます。その容器の入り数は在庫管理には重要ポイントになりますので、少し考えていきましょう。まず会社として部品などをいくつ調達したいかを考えます。この数量は製品を何台生産するのかによっておのずと決まってきます。そして大切なことは生産(使用)する数量を超えて部品などを買わないということです。生産と調達が分離しているととかくこの数量のミスマッチが発生します。
 
 よくあることですが、今買うと安いからまとめて買っておこう、という発想は止めるべきでしょう。もちろん、市況に大きく振られるものでしたら考慮の余地はありますが、原則は使う分だけ購入するということになります。次に容器と数量の関係性についてです。自社がどのようなものづくりをするのかによって変わってきます。1日に1回、その製品をまとめて生産するのであれば、1日分を1容器に入れてもらうという考え方があります。
 
 しかし、1日に複数回ロットで生産する場合や、同じ製品を複数ラインで生産するような場合はこの荷姿では都合が悪いでしょう。もし2ラインで1日に1回ずつ生産するのであれば、1日の数量を2分割にした数量を容器の入数とすることが考えられます。また、1日に4分割で生産する場合には4分の1の数量を1容器に入れてもらうことになります。このように、会社としてどのような生産を行うかに応じて入数のルールを決めておくとよいでしょう。
 
 荷姿のつくり方ですが、よくあるやり方として「容器を先に決めて入るだけ入れる」ということが挙げられます。でもこの荷姿設定方法は間違っています。このようなやり方では大抵在庫過多になりがちです。そうではなく、「入り数を決めてから容器を選択する」という方法が正しいやり方です。正しい入数を決めて発注をかけることで、余分な在庫の滞留を防ぐことができます。次に視点を倉庫の中の効率に移しましょう。皆さんもご存知の通り、倉庫には2つの効率化の視点があります。1つは保管効率です。そしてもう1つが作業効率です。この2つの効率化について少し考えてみたいと思います。
 
  SCM
 

2. 倉庫保管効率

 倉庫改善を行うにあたって2つの点に注意が必要です。1つは倉庫保管効率、もう1つは作業効率です。どちらを優先するのか、両立させるのかの判断によって取り組み方は変わってきます。まず倉庫保管効率について考えていきましょう。この指標はどれだけ倉庫を有効に活用できているのかを示す指標です。倉庫を1つの箱として考えて下さい。その箱の容積に対して、どれだけ保管物が占めているのかを示す指標が倉庫保管効率ということになります。当然のことながら、この指標が高ければ高いほど、倉庫を有効に活用できていると評価することができます。
 
 よく倉庫の床面積の内どれだけものが置かれているのかを示す評価が使われます。確かにこのような見方もありますが、倉庫は高さも活用する必要があるため、この面積基準の指標では倉庫の活用度は正しく把握できません。まず難しく考えずに、倉庫の内法寸法を掛け算して、物理的な容積をはじいてみましょう。そしてあとは保管物の容積をすべて足し合わせて、それを倉庫総容積で割ります。その結果出てきた値が倉庫保管効率ということになります。きっとあまりの低さに驚かれることでしょう。
 
 もしかしたらその数字は一桁パーセントかもしれません。でもそれでよいのです。いかに倉庫を有効活用していないかが認識でき、それを向上させるきっかけになるはずですから。この指標を落とす最大の要素は「倉庫内通路」です。通常通路の上には何も置かないでしょうから、通路面から倉庫の天井までがすべて「空間」になります。仮に倉庫床面積に対する通路の比率を示す「通路率」が40%だとすると、無条件にその倉庫の保管効率の最大値は60%になります。通路は倉庫内では付加価値を生まないデッドスペースです。この通路をいかに少なくするかが倉庫を有効活用するカギになります。
 
 もう1つ、倉庫有効活用のポイントは高さの活用です。仮に倉庫内高さが6mあったとしても、4mまでしか保管しないのであれば、3分の1の空間はムダ空間ということになります。安全を考慮した上で、高さ方向はとにかく使い切るという発想が必要になるでしょう。特に不動在庫を補完する場合、通路スペースを削除しても「詰め込む改善」が重要になってきます。在庫の特性に応じて保管効率をどのレベルに持っていくべきかについて考えていきましょう。
 

3. 倉庫作業効率と倉庫マネジメント

 倉庫では保管効率を向上させることが大切ですが、それと同じく重要なことがあります。それは倉庫の中で作業をする際の作業性を良くすることです。これを倉庫作業効率向上と呼びます。しかしよく考えるとこの2つの指標は相反するところに気づきます。倉庫保管効率はとにかく倉庫というインフラを目いっぱい使いきることによって大幅向上が図られます。隙間もないほどに在庫を詰め込むと倉庫は十分活用されたことになりますが、奥に保管されているものを引き出すのに工数がかかることになります。
 
 つまりこの「倉庫保管効率」と「倉庫作業効率」とはトレードオフの関係にあるといえます。ではこの2つについてどのようなバランスを取っていったらよいのでしょうか。それこそ倉庫マネジメントの重要ポイントということになります。ほとんど動くことのない在庫ばかり保管しているとしたら、入出庫の回数は少ないでしょうからいうまでもなく保管効率を優先します。一方で常に入出庫を繰り返す流動性の高いものを扱っている倉庫では作業効率を優先します。
 
 作業効率のポイントはワンタッチ(一動作)でものの入庫・出庫ができることです。そうなると、ものの置かれている周辺に障害物があると作業性は落ちます。在庫をぎっしりと詰め込むと、取り出し性が低下します。ですから一定の作業スペースも必要となるわけです。倉庫作業効率を示すKPIは基準時間を設定し、その時間と実際にかかった時間のギャップということになるでしょう。実際にかかった時間の方が長いでしょうから、ギャップは2倍とか1.5倍とかになるでしょう。この「倍率」をKPIとし、縮めていく活動が求められるわけです。
 
 倉庫作業効率を向上させるためには、ものの置き方、動線、表示の分かりやすさなどを改善し、作業者が迷うことなくワンタッチでものの取り出しなどを行なえるようにすることです。難しいことはありません。あわせて5Sをしっかりと定着させれば作業効率はみるみると向上するはずです。倉庫管理者の方は保管効率と作業効率のバランスを考え、倉庫マネジメントを行っていくことが求められます。ぜひ実際にKPIを設定し、改善活動を進めていかれることをお勧めしたいと思います。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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