【QFD-TRIZ-TMの連携適用による開発事例 連載目次】
[ユニークな解決策に伴うリスクを最小化する]
前回の③に続いて解説します。TRIZで導き出した新電磁弁の構造は大流量でありながら高速応答でき、しかも低消費電力で高寿命を実現するユニークなものでした。 しかしそれは開発者達にとって未知の構造であるために過去のノウハウが生かせないこと、社内にも専門家がいないことなど、実設計に向けてのハードルが極めて高いものでした。 特に新しいソレノイドの構造は画期的なものでしたので、試験品を試作するためにも時間や費用がかかりすぎ、加えて検討すべきパラメータが多すぎて通常の方法では検証が間に合いません。 そこで、最適条件を早く見つけると同時に、安定した品質を確保することを目的にTM(タグチメソッド)を適用することに決めました。
TMでは各種パラメータを検討する際、特性要因図を用いることが一般的ですが、開発者達はすでにTRIZでシステムの機能-属性分析を行っていますので、その分析から特性要因図を引き出しています。 そこで明確にした目的機能に対してy = βM の動特性で理想機能を定義しました。 そして、寸法精度や温度上昇などを誤差因子(制御できない要因)として設計パラメータの最適化検討に着手しました。
通常は、制御因子(設計パラメータ)を直交表に割り付けてテストピースにより実験しますが、それでは時間も手間も費用もかかることを考慮して、電磁解析ソフトを使ったシミュレーションで行いました。 そして利得と再現性が確認されましたので、最...
そして、新ソレノイドの製品試作段階に入り、方向性電磁鋼板の22層U字形状など業界としても初めての試みを部品メーカーの協力を仰ぎながら実現させました。 そして、試作品による性能確認試験においても、TMで得られた再現性が確認され、開発者達は自信を持って新規顧客の開拓と思いきった生産計画の立案に着手することになりました。