今回は、金型・機械加工メーカー業界の皆さんの関心が高い、人材、従業員のタイプ別に見た、やる気のコントロール方法について解説します。そもそも人のタイプは千差万別なのですが、大まかに私が長年見てきた中で、この業界で働く人は、下記の表の4分類で整理できると思っています。
この表では、そもそもこの業界での仕事自体が好きかどうか、また働くうえで、結婚しており家族を養っているとか、家のローンがある、趣味のためにお金を稼ぎたい、それらのために昇進して給与を上げたいといった、お金や評価がモチベーションとして存在するかによって、従業員を4つのタイプに分類しています。
それぞれのタイプ別に、金型メーカーや機械加工メーカーで働く人のやる気をどうコントロールしていくかの方法をみていきたいと思います。なお、話しの都合上、順番はB・A・C・Dというタイプ別になります。
1. Bタイプ:【仕事自体は好きだが、お金や評価のために働いていない】
例えば、設計でCADをいじったり、機械や溶接などによるモノづくりが好きなタイプです。このタイプの人たちは、自分で成長していける要素を持っているのですが、注意しなくてはならないのが、モノづくりは好きなのですが、そこに「納期」という制約が付くと、とたんにモノづくりが面白くないものになってしまうことです。
当然、お客様と約束したQCD(品質・コスト・納期)を守ったうえで納品し、お金を頂戴するわけですから、この制約はどうすることもできません。したがって私は、このタイプの人たちのやる気を伸ばすためには、ものづくりの「手段」の方で自由度を持たせ、改善や創意工夫を積極的にやってもらうことをアドバイスしています。
例えば、パソコンが得意であれば、VBAマクロなどで新しい仕組みを作ってもらうとか、工作機械であれば、新しい治具やマクロプログラムなどを作ってもらうなどです。こうした前段取りの改善であれば、納期や精度などの制約がないため、伸び伸びと本来のモノづくりへの興味を活かしてもらうことができます。
2. Aタイプ:【仕事自体が好きなうえに、お金や評価がモチベーションの源泉になっている】
このタイプは言わずもがな、入社後、最も伸びていくタイプです。バブル前や、昭和の時代でしたら、独立して自分の会社を創業していくタイプの人でしょう。この人たちも、Bタイプと同じように、モノづくりやパソコンが好きな人たちですから、自分で伸びていく要素を持っているのですが、一つ注意したいのが、お金や評価といった明確な「目的」がなければ、やる気が最大限に発揮されないことがある点です。
経営者タイプの人に、目的の無い会話や遊びが好きでない人が多かったりしますが、まさにこれにあたります。ですので、私はこのタイプの人は、仕事の受注段階から参画させ、その仕事全体をマネジメントできる立場に育て、そういった立場で仕事を切り盛りするフィールドで仕事をしてもらうことが良いと思っています。
例えば、見積もり段階から参画させたり、仕事が完了した後は、採算性の検証、フィードバックなどにも参画させるといったことがあります。
もちろん、CADや加工など、オペレーションのみが好きという職人タイプの方もおりますので、そういった方にまで無理にマネジメント業務をさせることはなく、望む範囲でお仕事をしてもらうのが良いと思います。
経営用語では、仕事を縦方向に伸ばし、与える権限を増やすことを「職務充実」と言い、仕事を横方向に広げ、担当する工程を増やすことを「職務拡大」と言います。前述の例では、マネジメントまで仕事の権限を増やすことが「職務充実」で、職人タイプの人に与えるオペレーションを増やすことが「職務拡大」になると考えられます。
いずれも、Aタイプの人の目的である、お金や評価の対象になることですから、積極的にそのチャンスを検討してあげるべきかと思われます。
そうした中でも、やはり仕事のやり方の改善には、自由度を持たせ、自分で改善できる余地を与えた方がやる気は出ます。例えば、Bタイプの人のところで挙げた、仕事のやり方・方法について、自分で自由に改善しても良いとさせるということです。ただし、社内や部門でルールを標準化させていくということも、もちろん必要になりますのでご注意ください。
もう一つAタイプには、一定の評価を得たいという目的があるために、本業での難しい仕事にチャレンジしてくれるという傾向があります。逆にBタイプは、本業以外の管理面や実験、創意工夫などはやりたがる傾向にありますが、本業での難易度の高い仕事にはあまり手を出したがらない傾向があります。
ここが、AタイプとBタイプの大きな違いです。
したがってAタイプの人には、新しい受注案件の担当者や、新たなプロジェクトのリーダーなどを任命すると、やりがいを持って頑張ってくれると思います。ただし、いずれのタイプにおいても、新しいことにチャレンジできるかどうか、力量の見極めは重要です。充分に力量が足りてないにもかかわらず、うかつに難しい仕事に手を出して、いわゆる「火傷」をしやすいのも、このAタイプです。
3. Cタイプ:【仕事自体は好きではないが、お金や評価がモチベーションの源泉になっている】
元々、この業界の仕事が好きで入社したわけではないが、生活のためにお金を稼ぎたいといったタイプの方がおられます。私が見てきた中では、このタイプの人たちは、あまり創意工夫や改善などに意欲を燃やすことは少なく、逆に日程計画をきちんと立て、1日や1週間単位でノルマを決めてあげる方が、よく動いてもらえます。
よく現場で働く外国人社員さんには、命令口調できっちりと指示を与えた方がよく動いてもらえるという意見をお聞きしますが、Cタイプの社員さん対象については、それが当てはまるかもしれません。時間をかけて、この業界の仕事を好きになってもらうという発想もありますが、このタイプの人たちは、教育を行っても、どちらかというと、必要最低限で習得を済ませようとする傾向があります。
このタイプの人たちの「目的」は、お金や評価ということですから、モラルサーベイなどによって、本人が何を望むのか事前に聴き取り、その目的に向かって、できるだけ気持ちよく仕事をしてもらうよう仕組みを整えることが肝要だと思います。
例えば、仕事のやり方の改善リーダーにしたり、全く新しく導入する機械のオペレーターに任命しても、あまり率先してやってくれたり、新たな仕組みを作ってくれるということは少ないと思いますので、会社としては本人が能力を発揮できる仕組みの中、適材適所で役割を決めた方が良いと思います。
4. Dタイプ:【仕事自体は好きではないし、お金や評価が動機付けにもならない】
最も扱いが難しいタイプですが、私が見る限り、最近製造業では多く入社してきているタイプの人たちです。この人たちのやる気を伸ばす方法としては、私は最低限、これだけは誰にでもあると思っている「承認欲求」をくすぐるしかないと思っています。
そもそもこの業界の仕事が好きでもなく、お金や評価といった今の生活の向上や将来への備えのために必要なものを求めていない、ある種「甘えている」人ほど、他人や親に自分を認めて欲しいという欲求が強いと思っています。そこで、マイルストーンとも言える、小さな目標を少しずつクリアさせて「承認欲求」を満たしてあげることで、少しずつやる気を起こさせていくわけですが、一つ注意点があります。
元々、動機付けの要素が非常に弱いので(無いと言ってもいい)、一気に大きな課題をクリアさせようとすると、すぐに心が折れてしまいます。また強制的な指示を与え、それをやらせようとすると、すぐに反発します。元々、評価にも関心がありませんので。
そこで根気よく、少し、ほんの少しだけ背伸びしてできる、本人の能力の120%程度を見極めた課題(仕事)を与えながら、心が折れないように仕事をさせることが肝要です。言うまでもなく、最も離職率が高いのは、このタイプになりますので、この人手不足の折、どうしても辞めて欲しくない場合には、上記のことに充分留意しながら、マネジメントしていきたいところです。
アメとムチというのがありますが、これも使いどころに注意したいところです。そもそもアメとなるものの見極めが重要になります。お金や評価ではないのですから。
したがって、私は「承認欲求」をいかにくすぐるか、短期的にはこれによって、このタイプの人をコントロールしていき、長く定...