◆ 位置決め方法を再改善するもまだ足りないものが
この中国企業ではプレスで鉄製支柱の穴あけ加工をやっていた。重要寸法である穴位置は、作業者が支柱をガイドピンに押し当てることで決めていたが、これでは穴位置精度は作業者次第となっていて、実際に穴位置ズレでクレームが出ていた。
この方法の問題点を説明して位置決め方法の改善に取組み、4本のガイドピンで支柱の位置がずれない方法に変更した。ところが、この方法では支柱がスムーズにガイドピンに入らないので生産性が悪いという理由で以前の方法に戻してしまった。
あれだけ「この方法では不良発生の可能性があるからだめだ」と説明したにも関わらず、元に方法に戻っていたのはショックでした。しかし、そんなことを言っている場合ではありません。目の前で生産しているので、すぐに対応しなければなりません。
生産班長が試しにやってみたのが、支柱が入る下型の長さを長くする方法です。これで穴位置にずれが生じても図面規格内に入ることが確認できました。幸いに別の寸法の長い下型があったので助かりました。
下型を長くすることで、支柱の動きの範囲が小さくなるので図面公差内に入るようになりました。次は、既に生産したものの品質確認です。これは全数検査するしかないので、やってもらいました。
それからしばらくして工数削減を目的として、穴加工と他の加工を組み合わせた機械を外部業者に製作させていました。
新しい機械にしたからといって穴位置のズレがなくなる訳ではありません。位置決めをどのようにするか、それが問題ないかをきちんと検証する必要があります。この点について確認すると位置決めは、故意...
これはすごい進歩です。人ではなく装置や治具で位置がずれないようにして生産する。当たり前のことがやっとひとつできるようになったのです。ところがこの話にはもうひとつ落ちがあって、位置ずれが許容範囲に入っていることは検証したのですが、その記録を残していなかったのです。まだまだ道は険しいと痛感しました。