クリーンルームの停電復帰後対応とは

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  生産マネジメント
 
 今回は、クリーンルームの停電復帰後対応を解説します。停電が発生するとクリーン度を維持できなくなり、クリーンルームの停電復帰後対応には様々な注意が必要です。また、計画停電時のクリーン度維持のことも考えます。
 

1. クリーンルーム、停電時の問題点と対応

 今回は、想定するクリーンルームは、乱流式のクリーンルーム(クラス1,000~100,000)とします。
 
 停電は、例え僅かな時間、例えば瞬時停電でも、設備や作っている製品に影響を及ぼすことがあります。半導体前工程の炉工程などでは、酸化膜生成が中断されるので品質異常が起き、製品が不良になることがあります。また、真空が止まるとスピンナー回転中の製品が飛ばされ破損します。
 
 安全、環境面では、空調が止まると酸素濃度が低下するので、作業者はクリーンルームからの退避が必要です。天井灯が消えると、避難がしにくくなります。そこで規模の大きな工場では、非常電源を用意しているところが多いでしょう。また、安全、環境、品質等への対応方法も標準化されていると思います。
 
 工場稼働時の室内のパーティクルは、床付近と天井付近が非常に多いです。床付近は、粒径が大きいものや、金属粉など比較的に重いものが重力で落ちますから、多いです。また、天井付近は、工場内の熱により上昇気流が発生し、軽いものが浮遊しやすいです。具体的には、照明、設備の熱、人の熱等で上昇気流が起きます。従って軽いゴミは天井付近に浮遊(滞留)します。
 
 停電が発生した場合、電気の供給が止まるので、室温が徐々に低下します。すると上昇気流がなくなりますから、浮遊パーティクルが重力で落下します。この落下したパーティクルは床だけでなく、設備、作業台、製品容器などに堆積します。長期連休明けなどでは、設備、作業台の上などが真っ白になっていることもあります。計画停電では、室温が下がる前にカバーをかけるなどもルール化しておきたいです。あまり早くやると、高温の設備の場合、ビニールなどが解けることも意識しましょう。
 
 また、工場稼働時は室圧が高い、つまりクリーンルームがほんのわずかですが膨らんでいますので、それが元に戻ることにより、天井からのゴミの落下も知っておきましょう。通電時はその逆も起こります。
 

2. クリーンルーム、停電復帰後の注意点

 停電復帰後は、一気に通電されるとその衝撃でパーティクルが舞い上がることが考えられます。クリーンルームでも、天井に吸い込みが設置してあるタイプもあります。この場合、天井の吸い込み部分に埃の塊がついていることがありますが、通電の衝撃でそれらが落ちてくることがあります。日頃から清掃をしておきたいです。
 
 クリーンルームの壁にはダンパーが設置されていることが多いです。クリーンルームはゴミが寄ってこない様室圧を高めています。その余剰空気がダンパーを通じて排出されます。停電などで室圧が低下した時、このダンパーが閉じ、外からの汚れた空気の入り込みを防ぎます。また、通常は開いた状態ですので、その状態で室内の余剰空気が排出される時に中の汚れなども出て来て、ダンパーの軸に付着し、動作が渋くなったりして、停電時役目を果たさないこともあります。見逃さずに適時確認しましょう。
 
 通電後は清掃を繰り返し、清浄度が作業可能な範囲に回復するのを待ちます。清浄度が低いクリーンルームで、事務室や会議室などをクリーンルームや更衣室に改造した場合は、天井が石膏ボードのままというところもあります。これは日々の空調機の振動、風、台風などの外部要因で建物が揺れたりすると少しずつ白い粉が落ちます。
 
 停電、通電時の衝撃などではその量も多いです。これが二次更衣室では防塵衣に付着することが無いかも確認しましょう。室圧が低下すると二次更衣室には廊下などの汚れも入り込みます。
二次更衣室はクリーンルームの玄関です。ここが汚れていると、クリーンルームへの持ち込みゴミも多くなるので念入りに清掃します。様々な作業も分担してクリーンルームの中も周囲もタイミングよく立ち上がるようにしましょう。クリーンルーム内での製品保管もカバーを付けるとか、クリーンブース内に保管するなど日頃から対応しておきましょう。
 
 クリーンルーム内では、クリーンベンチも多く使われています。最近のものは通電されると自動復帰するものが多いと思いますが、旧型の中には、自動復帰しないタイプもあります。通電されると、ブース内上のルーバーとフィルターとの間にある蛍光灯が点灯します。この時、自動復帰していると思い込みこのまま作業をしてしまうと、クリーンベンチ内が汚れている場合もあります。確認項目に入れましょう。
 

3. クリーンルーム、計画停電復帰後の注意点

 清浄度の高いクリーンルームも長時間停止すると、パーティクルがじわじわ浮き上がってくる場合があります。層流式のクリーンルームは床下3mくらいの空間はあると思いますが、それでも上がって来ることがあります。計画停電の場合は、クリーンルーム内に部分的にパーティクルカウンターを設置し、100Vも確保して自動測定して実情を把握することもしておきましょう。
 
 停電、計画停電では、設備はどこまで落とすか明確にしておきましょう。停電復帰時は、通電する前に予め設備はどのような状態になっているのか確認しておくことです。停電時SWが入ったままになっていると、通...
 
  生産マネジメント
 
 今回は、クリーンルームの停電復帰後対応を解説します。停電が発生するとクリーン度を維持できなくなり、クリーンルームの停電復帰後対応には様々な注意が必要です。また、計画停電時のクリーン度維持のことも考えます。
 

1. クリーンルーム、停電時の問題点と対応

 今回は、想定するクリーンルームは、乱流式のクリーンルーム(クラス1,000~100,000)とします。
 
 停電は、例え僅かな時間、例えば瞬時停電でも、設備や作っている製品に影響を及ぼすことがあります。半導体前工程の炉工程などでは、酸化膜生成が中断されるので品質異常が起き、製品が不良になることがあります。また、真空が止まるとスピンナー回転中の製品が飛ばされ破損します。
 
 安全、環境面では、空調が止まると酸素濃度が低下するので、作業者はクリーンルームからの退避が必要です。天井灯が消えると、避難がしにくくなります。そこで規模の大きな工場では、非常電源を用意しているところが多いでしょう。また、安全、環境、品質等への対応方法も標準化されていると思います。
 
 工場稼働時の室内のパーティクルは、床付近と天井付近が非常に多いです。床付近は、粒径が大きいものや、金属粉など比較的に重いものが重力で落ちますから、多いです。また、天井付近は、工場内の熱により上昇気流が発生し、軽いものが浮遊しやすいです。具体的には、照明、設備の熱、人の熱等で上昇気流が起きます。従って軽いゴミは天井付近に浮遊(滞留)します。
 
 停電が発生した場合、電気の供給が止まるので、室温が徐々に低下します。すると上昇気流がなくなりますから、浮遊パーティクルが重力で落下します。この落下したパーティクルは床だけでなく、設備、作業台、製品容器などに堆積します。長期連休明けなどでは、設備、作業台の上などが真っ白になっていることもあります。計画停電では、室温が下がる前にカバーをかけるなどもルール化しておきたいです。あまり早くやると、高温の設備の場合、ビニールなどが解けることも意識しましょう。
 
 また、工場稼働時は室圧が高い、つまりクリーンルームがほんのわずかですが膨らんでいますので、それが元に戻ることにより、天井からのゴミの落下も知っておきましょう。通電時はその逆も起こります。
 

2. クリーンルーム、停電復帰後の注意点

 停電復帰後は、一気に通電されるとその衝撃でパーティクルが舞い上がることが考えられます。クリーンルームでも、天井に吸い込みが設置してあるタイプもあります。この場合、天井の吸い込み部分に埃の塊がついていることがありますが、通電の衝撃でそれらが落ちてくることがあります。日頃から清掃をしておきたいです。
 
 クリーンルームの壁にはダンパーが設置されていることが多いです。クリーンルームはゴミが寄ってこない様室圧を高めています。その余剰空気がダンパーを通じて排出されます。停電などで室圧が低下した時、このダンパーが閉じ、外からの汚れた空気の入り込みを防ぎます。また、通常は開いた状態ですので、その状態で室内の余剰空気が排出される時に中の汚れなども出て来て、ダンパーの軸に付着し、動作が渋くなったりして、停電時役目を果たさないこともあります。見逃さずに適時確認しましょう。
 
 通電後は清掃を繰り返し、清浄度が作業可能な範囲に回復するのを待ちます。清浄度が低いクリーンルームで、事務室や会議室などをクリーンルームや更衣室に改造した場合は、天井が石膏ボードのままというところもあります。これは日々の空調機の振動、風、台風などの外部要因で建物が揺れたりすると少しずつ白い粉が落ちます。
 
 停電、通電時の衝撃などではその量も多いです。これが二次更衣室では防塵衣に付着することが無いかも確認しましょう。室圧が低下すると二次更衣室には廊下などの汚れも入り込みます。
二次更衣室はクリーンルームの玄関です。ここが汚れていると、クリーンルームへの持ち込みゴミも多くなるので念入りに清掃します。様々な作業も分担してクリーンルームの中も周囲もタイミングよく立ち上がるようにしましょう。クリーンルーム内での製品保管もカバーを付けるとか、クリーンブース内に保管するなど日頃から対応しておきましょう。
 
 クリーンルーム内では、クリーンベンチも多く使われています。最近のものは通電されると自動復帰するものが多いと思いますが、旧型の中には、自動復帰しないタイプもあります。通電されると、ブース内上のルーバーとフィルターとの間にある蛍光灯が点灯します。この時、自動復帰していると思い込みこのまま作業をしてしまうと、クリーンベンチ内が汚れている場合もあります。確認項目に入れましょう。
 

3. クリーンルーム、計画停電復帰後の注意点

 清浄度の高いクリーンルームも長時間停止すると、パーティクルがじわじわ浮き上がってくる場合があります。層流式のクリーンルームは床下3mくらいの空間はあると思いますが、それでも上がって来ることがあります。計画停電の場合は、クリーンルーム内に部分的にパーティクルカウンターを設置し、100Vも確保して自動測定して実情を把握することもしておきましょう。
 
 停電、計画停電では、設備はどこまで落とすか明確にしておきましょう。停電復帰時は、通電する前に予め設備はどのような状態になっているのか確認しておくことです。停電時SWが入ったままになっていると、通電時設備が急に動き出すなど安全上の問題も起きる可能性もあります。
 
 計画停電する時は、長期連休、大掛かりなメンテナンスなどです。清掃は上から下、奥から手前へと進めましょう。この時使用するワイパーも使い分けをしましょう。例えば作業外なら不織布、設備の製品品質に関わる部分はポリエステル等の化学繊維等の使い分けです。
 
 突然の停電の時も同じですが、製品などはクリーンブース内に保管します。各企業でも様々な工夫がされています。例えばクリーンベンチは3方が閉じられていて、前面のみが開いています。前面上に静電シートを取り付け巻き上げておくのです。停電時や計画停電時は清浄度が低下するので、停電直後に速やかに製品や部品などはその中に入れ、巻き上げてあった静電シートを垂らし、周囲を止める(封止)と内部の清浄度がある程度保たれます。
 
 この他パーティクルではないですが、純水やその供給配管なども、流れが止まるのでバクテリアが発生します。薬剤を封入し、工場立ち上げ時、純水の純度も確認します。細かなことは沢山ありますが、各社で様々なルールや標準は既にあると思います。必要な内容は見直しや追加をしておきましょう。安全、品質も考慮しながら、いかに早く立ち上げるかです。立ち上げ、清掃、通電などは、いつもと違うことをしますので安全最優先にしましょう。
 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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