6. 強いモノづくり
◆ マーケットインからユーザーインの時代へ
世の中で、一人ひとりのお客様に向けてモノづくりをしているところは決して多くありません。それは、製造工程やラインを見れば一目瞭然でしょう。
しかし部品でも完成品でも、買って下さる会社や人がいるから作られるのです。注文がないのに作ってしまえば不良在庫の山となり、会社は倒産してしまいます。注文があるから作るという原点に立てば、モノづくりは製品別ではなく、お客様ごとに作るのが当然だといえるでしょう。
例えば、お寿司屋の板前さんが注文ごとに一つずつ握って出すようなモノづくりです。クルマも車種や色、様々なオプションがありますが、オーダーごとに製造ラインを流れて新車が納入されるようになっています。規模の大小ではありません、モノづくりの強さの現れだといえるでしょう。3万点の部品が必要な自動車でできるのですから、他でできない理由はありません。
2020年11月22日の日本経済新聞朝刊「theSTYLE/Fashion 」のページで、ファッションデザイナーの中里唯馬さんについて「針も糸も使わない 私のための一点物」というタイトルで紹介されています。中里さんは新素材や新工法を使い、個々の体形に合わせた独自のデザインの服を安価に作れる準備をしていて「やがて衣服は一点物しか存在しなくなる」と主張されています。
2014年に出版されたアンソニー・フリン著『カスタマイズ』(cccメディアハウス)には「大量生産から、低コストの“特注量産時代”へ」というサブタイトルが付いています。
時代はマーケットインからユーザーインへと移行しつつあるといわれています。既にその傾向はみえてきています。準...