6、強いモノづくり
◆ 人も設備も多能工化
プロダクトアウトと呼ばれ、同じものを作れば作っただけすべて売れてしまう時代がありました。少品種多量生産の時代です。
例えば、1908年に発売されたT型フォードは1927年までの約20年間、基本的にモデルチェンジしなかったにもかかわらず、ライバルがいなかったため売れ続けたそうです。しかしこれは昔のことで、工業化社会の最初のころに限った話だと思います。「思います」と書いたのは、私は今70歳なのですが、それでもそのようなものを見た経験がないのです。
同じものを多量に作り続けるのであれば、各工程ごとに専用機を並べて、作業者もシンプルに同じ作業だけを繰り返し行った方が効率は上がります。しかし、私たちは多品種変量生産となってマーケットインと呼ばれる時代に生きています。多品種変量生産を行うのであれば、人も設備も、できるだけ臨機応変に対応できる「変幻自在の体制」を作らなければ、とても対応できません。
しかし、残念なことにすべての工場のレイアウトや生産計画の運営がそのような形になっているとは限りません。昔ながらのレイアウトのままで、大変にムダの多い生産をしている工場や、こまめに作れないので大量の在庫を抱えて生産している工場はあるのです。
度たび例に出していますが、寿司屋の板前さんは、目の前のお客様の注文に応じて、包丁一本で魚を切り分けて刺身や握り、チラシ寿司などをつくり、お待たせすることなく提供してくれます。
大きな寿司屋さんでも刺身だけを作る専門の人などいないですし、魚を三枚におろす専用機などを使っていることはありません。お客さんが多いカウンターには、別の板前さんが応援に入ればすぐに対応が可能です。
一人の人でどれだけ多くの工程をこなせるか…。一つの設備で何種類の工程を行えるか…。それだけしかできないという単能工や専用の設備をなくして、いろいろなことができる「多能工化」され...