1. 仕事を押し付けられて残業続き
Mさんは技術系の会社に勤める元気のいい女性です。一見、話し方に問題はなさそうに見えるのですが、実は職場で我慢の限界にきていました。Mさんが「話し方」で短期間(1か月)で問題を解決した事例を解説します。
Mさんは意見の衝突を望まず、人から悪く思われたくないと考えていました。そのため、自分にできる仕事は頼まれたら断れず、オーバーワークになるほど仕事を抱えてしまっていました。
2. 笑顔のMさんは心の中で怒っていた
◆ 私(Q)とMさん(M)の会話です。
Q「仕事がずいぶん大変そうだけど、忙しいときはお手伝いを断ったら?」
M「でも、嫌われたくないし、仕事を助けてあげることで感謝されるのが嬉しいんです。」
Q「なるほど。では、仕事を助けてあげると感謝されている?」
M「・・・いいえ。当たり前のように私に押し付けるだけで感謝されていない・・・。」
Q「たくさんの仕事を抱えて、残業して、感謝もないわけだ。どうしたい?」
M「仕事を断りたいのですけど、断ったら人間関係がまずくなるから、断れない。」
Q「では、仕事を引き受けることで、人間関係は良好なの?」
M「喧嘩はしていないけど、・・・良好じゃない。私に仕事を押し付ければいいって感じ。」
Q「じゃ、今は人間関係も、感謝もなくて、我慢して仕事しているわけだ。」
M「・・・意味ないですね!こんな状態なら仕事なんて引き受けない!!」
まず、現状が理想と異なること、現状を維持しても改善の見込みがないことを「悟る」ことが重要です。現状を変えるのは心に大きなエネルギーが必要だから、「いい内容」と「悪い内容」をきちんと自覚することが大切です。※「いいか悪いか」はその人の主観で構いません。
3. 仕事を断っても感謝される毎日へ
Q「OK。では、仕事の断り方と仕事を引き受けるとき感謝される方法を教えてあげる。そうすれば、オーバーワークはなくなって、引き受ける仕事は感謝してもらえるよ」
1か月後。
M「仕事、ずいぶん減りました!それに・・・仕事を引き受けても、断っても、感謝されるようになりました!職場、すごくいい感じです!」
Mさんの具体的なやりとりです。
A「Mさん、このデータ整理、頼める?」
M「えー!今、Bさんの仕事で忙しくて手が付けられないんですよ!でも、Aさんが困っているのならお手伝いします。もし、2週間待っていただけたら手が空くのですが、それでいいですか?」
会話の組み立てです。
1.Mさんの仕事がひっ迫していることを伝える
2.でも、あなたのためなら無理してでも手伝う
3.条件の提示
1.でMさんが仕事を手伝うことの価値を伝え、2.で相手を強く承認することによるラポール(心が繋がった状態)の創出、を行っています。これで3.の条件の提示、が好意を持って受け入れられるのです。
4. ターニングポイントは「自分に素直になれたこと」
「話し方」の練習で注力したのは、最初の「えー!」のところです。感情のありのままに「えー!」が言えればこそ、相手にMさんの状況が伝わるのです。ところが、Mさんは「えー!」を言うと、相手から嫌われるんじゃないか、という思いがどこかにあるため、ピュアに「えー!」が言えない。どこか自分を守ろうとして控えぎみの「えー!」になるのです。
そうすると、相手はMさんの出方を探る行動をとるため、「駆け引き」に陥ってしまいます。相手はMさんが嫌がっていることは理解しますが、「でも、仕事だから引き受けるべき」...
「えー!」が感情のありのままにだせれば、相手は「嫌がることを頼んでしまった」と心から感じるため、それ以上押し付けてくることはありません。
一言で言えば、Mさんの窮地を救ったのは「自分に素直になれたこと」。同時に、家庭でも家族関係がより良くなっていますが、これも「自分に素直になれたこと」の効果です。1日の半分を過ごす職場、楽しく仕事を頑張れる環境があればいいですね。
「最強のエンジニアになるための話し方の教科書」(マネジメント社)2019年1月:エンジニア専門話し方トレーナー 亀山 雅司
「最強のエンジニアになるためのプレゼンの教科書」(マネジメント社)2019年末予定:エンジニア専門話し方トレーナー 亀山 雅司