動作解析:改善の一歩は無意識のムダを意識すること

 日ごろ、製造業種、非製造業種と色々なクライアントを訪問して、現場で改善活動のご相談を受ける際に、出てくる言葉があります。それは、「うちの現場に無駄は無いですよ」という言葉です。確かにその通りです。プロの現場にムダはあまり存在しませんし、あったとしても問題のないレベルのものだと思います。

 しかし「ムダ」が見つかります。

 そもそも、辞書によると無駄は『役に立たない、しただけのかいが無いこと』と記されています。確かにプロの現場で「役に立たない動作」を率先して行っているとは思えません。

 動作解析を使って見つかる無駄のほとんどが、率先して行っていないもので、無意識に発生しているものです。その証拠として、見つかったムダ動作に対して作業者は「確かにそうだ」と話をされます。

 そしてその理由として「しかし、その動作になるには〇〇という理由があるからで、仕方ないです」と表現されることもあります。これを言い訳として捉えるのではなく、改善案の種として取り扱うのが動作分析のいいところだと話されるクライアント様も多くいらっしゃいます。

 すなわち、無意識だからアプローチできないのであって、意識できればアプローチできるものになります。

 ここで動作解析でのムダ動作の発見手順をご紹介します。

<< 基本的なムダ動作発見手順 >>

 ここで「何をもってムダ動作とするのか?」というご質問をいただくことがあります。ムダ動作の定義は数多くありますが、筆者は以下の2点を定義の一つとしてお伝えしています。

 この2点について判断がつきにくい場合は、動画比較(高技能者との比較や同一作業者の別時間撮影の動画との比較など)を行うことで気づきを得ることができます。

<< ムダ動作の発見の事例 >>

 ここで一つ、ムダ動作の発見の事例を紹介します。

 ある食品会社の出荷部門でのことです。その現場は作業台と出荷台があり、作業者が作業台の前に立って一人で作業するスタイルです。作業は5要素。

 1作業の時間は約40秒で、勤務シフト時間は4時間です(休憩時間1時間)

(見つかったムダ……4動作)

 個々の改善時間は少なく感じるかもしれませんが、その計は20秒、実に50%の時間短縮です。4時間勤務でどれだけ生産性が向上したでしょうか?

 このようにムダ動作の発見は時間短縮に効果があります。しかし、筆者は時間短縮より、むしろ「作業の標準化」に有益であり、その結果...

時間短縮できるものと捉えています。

 ムダ動作の発見の位置づけを時間短縮のためではなく、作業者の作業のしやすさ、負荷低減のためのアプローチとすることで、例にあげたような改善案が出てきやすくなり、実効性の高いものになります。

 そもそも、ムダの発見だけでは本質的な意味ありません。見つけたムダを減らす、無くすことができて初めて効果が出ます。

 また、作業のしやすさがポイントであれば、現場での自主的な改善活動のモチベーション向上にもつながり、継続的な改善につながると考えます。

 作業のしやすさを第一に、無意識のムダを意識することが改善の一歩です。

 次回は、製造業で実践している「価値を生まない動作の排除方法」とは(ムダ取りについて)についてです。

 

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