リスクマネジメントで考える「新型コロナ危機‐第4波渦中戦略」<ヤバ・い>リスクマネジメント‐2

 

【状況の変化】

 前稿(2021/3/21首都圏の緊急事態宣言解除)から2週間の間に状況が大きく変化してきています。大阪・兵庫・宮城では感染者が急増し第4波到来の様相を呈してきて、「まん延防止等重点措置」が4月5日から適用開始です。前稿で“米国の名門コーネル大学の事例などを紹介しつつ、検査に関する最新の研究結果などを含めて、感染力が強い・死亡率が高い・PCR検査をすり抜けるなどの変異ウイルスへの対応を含めた考察をしたいと思っています”と書きましたが、兵庫・大阪では変異ウイルスが急速に拡大し、首都圏においてもリスクを未然に防ぐ対策を急ぐ必要がある状況に鑑み、緊急提案の意味を込めて結論を先に書きことに致します。注)マネジメントの見地からの提案ですので実施には専門家の知見が必要です。

【結論(首都圏での重点措置に関する作戦)】

  1. 基本方針;変異ウイルスゼロ作戦で、首都圏民の本気意識にスイッチを入れる
  2. 目標;変異ウイルス街中ゼロ
  3. 方法;昨年7月までに考察した内容に最近の知見を入れて考案したものです

  1)東京都で感染率の高い新宿・渋谷・墨田および世田谷の4区をパイロット地区に選び、それぞれ下水処理場の単位で地区分けし下水中のウイルスを定期的に(例えば週に2回)モニタリングして変異ウイルスを検知する
  2)変異ウイルスが見付かった地区は、住民と働く人の全員検査を(例えば週2回)行って、感染者を隔離し感染拡大を防ぐ
  3)変異ウイルスが2週間続けてゼロになった地区は飲食店等の営業時間制限を外す
  4)パイロット地区で成功させ、都の他区市および他県に横展開する

 4.必須条件;リーダーの信念と情熱と決断

  重点措置として1.2.を取ることが、街中にコロナがいない “人々が安心して活動できる状況”を作り、経済を回すことになるということ。

【変異ウイルス】

 兵庫・大阪では変異ウイルスが急速に拡大して、兵庫県では陽性者の内の8割が変異ウイルスとの以下のような報道があります。

“コロナ陽性者の8割が変異ウイルス” 日本経済新聞 関西2021.4.1
 兵庫県は4月1日、3月15~21日の1週間に検査した新型コロナウイルス陽性者54人のうち、83.3%が変異ウイルスに感染していたと発表した。変異ウイルスの比率は2月初めの1週間では8.3%だったが、週を追うごとに拡大し、およそ1カ月半で割合が10倍に膨らんだ形だ。井戸知事は4月1日の記者会見で「家庭内や若者の感染者が増えているのは、変異ウイルスのうつりやすさからきているのではないか」と述べた。
引用;https://www.nikkei.com/article

 東京の陽性者の変異株比率は、変異株を特定する検査割合が少ないため確かではないようですが、兵庫の80%に対し10%程度とのことです。 しかし兵庫・大阪で急拡大しているイギリス型は感染力が強いということで(図1)、都知事は東京でも「まん延防止等重点措置」をとる必要性があると表明しています。

 

図1. コロナウイル、感染力・重症度

引用;https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/newvariant/ (引用先から筆者による編集)

 

【重点措置】

 いま「まん延防止等重点措置」で議論されているのは、「緊急事態宣言」を出さなくて済むように“重点措置”を講じることといいますが、これでは首都圏民の意識も変わらず、変異ウイルスがアッという間に首都圏に侵入してきて急拡大し大変なことになります。“リスクマネジメント”では、最悪の事態(リスク)を想定し、それを未然に防ぐための“適切な目標”を設定し、首都圏民がワンチームになって取り組むようにすることが大事です。最悪の事態(リスク)として考えるべきは、(これまでの新型コロナウイルスはさることながら)“強力な感染力を持った変異ウイルスの急速な拡大”です。それを未然に防ぐ“適切な目標”は、第5稿で考察した“・・・無症状の見えない感染者を早期に見付けて隔離する「源流検査」”による“変異ウイルス街中ゼロ”です。第3稿で考察した「全員検査大作戦」(これは新宿など拡散の震源地になっているエピセンターを対象にしたもの)と第7稿で考察した「リスクマネジメント」をどのように実施するか、全員検査の対象地区をどう絞り込むか、注目すべきは“変異ウイルス”の拡散状況の把握です。そのための変異株スクリーニングは、神戸が陽性者の66%ですが東京は10%と低く早急に40%に挙げて精度を上げようということです(引用;Yahooニュース_ライフ_産経新聞3/21 https://news.yahoo.co.jp/articles/)が、しかしこれだけでは(地区別のデータがないと)絞り込みは出来ません。

【地区別の見えるデータ】

 まず地区別の見えるデータが必要です。都の新型コロナウイルス感染症対策サイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)には細かいデータが仰山ありますが見える形になっていないので、上記サイトのモニタリング項目_陽性者数(区市町村別)の“オープンデータ”から筆者が表1を作成しました。第1稿で考察したQCの基本の一つです。

 

表1. モニタリング項目・陽性者数 (筆者作成)

 

 前記の結論の方法(下記)で述べたパイロット地区は上表を元に選んでいます。
“東京都では感染率の高い新宿・渋谷・墨田および世田谷の4区をパイロット地区に選び、それぞれ下水処理場の単位で地区分けし下水中のウイルスを定期的にモニタリング・・・”

【地区別モニタリング】

 検査方法として、下水処理場で下水中のウイルスを定期的にモニタリングすることで集団レベルの疫学情報を取得する「下水疫学調査」が世界中で加速している中で、(朗報です)日本は北海道大学が塩野義製薬等と進めてきた“下水中の新型コロナウイルスの自動解析体制”を4月以降に分析業務を開始するとのことです。
引用;https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2021/03/210319.html
 これを下水処理場の単位で地区分けし、下水中のウイルスを定期的に(例えば週に2回)モニタリングして変異ウイルスを検知することで、その地区への変異ウイルス侵入を早期に見付けることが出来ます。

【全員検査の方法】

 変異ウイルスが見付かった地区を対象に、その地区の住民と働く人の全員検査を(例えば週2回)行いますが、これは第3稿で考察した2段階検査(下記)
1次検査;・・・唾液検体を使って・・・、(数人)1ロットの混合検体による(プール)検査
2次検査;1次検査で陽性になったロットを1人ずつ・・・PCR検査や抗原検査などで検査し感染者を隔離する。

 これに島津製作所等が開発した新しいサービス(下記)を取り入れたものになります。2021年4月1日 | プレスリリース

・変異株のスクリーニング検査を支援

 島津製作所および伊藤忠商事株式会社の出資する株式会社iLAC(読み方:アイラック)は、4月1日から「新型コロナウイルスの全ゲノム解析※受託サービス」を開始します。・・・島津製作所は昨年から・・・、新型コロナウイルス変異株をPCR検査で検出する「SARS-CoV-2変異株検出コア試薬キット」・・・を製造・販売しています。・・・
※全ゲノム解析:すべての遺伝情報(ゲノム)の網羅的な解析。

引用;https://www.shimadzu.co.jp/news/press/r073msp1316mq4ja.html

【感染者の隔離】

 昨年7月の第8稿で考察したIE(Industrial Engineering)の基本の一つであるボトルネック解消が重要です。変異ウイルスは感染力が強いので隔離施設不足で自宅療養になると...

大変な事態になることは火を見るより明らかです。あらゆる手を尽くして隔離施設を確保することが必須です。

【コーネル大学の事例】

 朝日新聞2021.1.23夕刊から要点だけを紹介いたします。
大学を閉鎖しオンライン授業を行っていたが、“キャンパスで学生生活を送りたい”との学生の要望をC副学長が真摯に受け止め、情報工学F准教授の論文「プール方式」大規模PCR検査を元に感染抑制モデルを構築し、学生や教職員28,000人をキャンパスに戻して週2回のPCR検査をする場合と大学閉鎖を続ける場合と検証したところ、感染者数は後者が数倍多くなるとの結果が出た。これを受けて教職員約100人で大学再開チームを結成し、あらゆる準備を進め、1日17,000件の検査能力を確保し、陽性者は確実に隔離することにした。対策に必要な費用は25億円、もし大学が明確な方針を出せずに入学を延期する学生が続出すれば200億円の損失になるとの試算に迷う余地はなかった。が、再開への動きが進むと地元住民から「町に感染を広げるのか」といった激しい批判が出たが副学長らの決断は揺るがなかった。大学を再開して検査が始まると陽性者が続出したが、検査を繰り返すと予測通り感染者はどんどん減少した。

 

 【冒頭の図表は、引用; https://www.bing.com/images/search?q =変異ウイルス&firstから筆者による編集】

 

 

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