【ものづくりの現場から】クラフト体験を技術者教育に活用(クラフト・ミー)

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ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組みについて取材し、ものづくり発展に役立つ情報をお届けしています。今回はクラフト体験を通じた人材育成の取り組みを行っている東京都港区のtotonoeya合同会社の人材育成の取り組みを紹介します。

 

◉この記事で分かる事
・製造業での人材育成、社員のキャリアづくりで役立つワークショップ
・製造業と社会人基礎力の関係

 

1,概要

totonoeya合同会社は2019年創業のクラフト(モノつくり)ワークショップの企画・運営企業。同社代表の安武貴子氏のHR(human resource)領域の勤務経験と、クラフトづくりのノウハウを組み合わせたワークショップ「クラフト・ミー」は、首都圏を中心に複数の企業、学校、地域で開催されています。


ものづくりワークショップ「クラフト・ミー」とは

参加者同士でグループを作り、クラフトワークを行い、自己/他己評価を行う事で自身のスキル特性を把握する事ができるtotonoeya合同会社が提供するサービスで、近年、製造業企業の人材研修、新人研修などに採用されている注目のワークショップです


 

学校、地域、企業で開催されているクラフト・ミーワークショップ

図1、モノつくりワークショップの様子(同社提供)

 


今回、筆者は都内の大手電機メーカー社内で開催されたクラフト・ミーに参加し、取材を行いました。

 

2,企業人材育成観点から見たクラフト・ミー

取材したクラフト・ミーは大きく2つのパートに分けて実施されました。

前半:指示されたテーマに基づいて自由にクラフトするパート(モノづくり)
後半:オリジナルのチェックシートの作成(グループワーク)

モノをつくる楽しさだけでなく、ワークショップを通じて参加者の特性を項目別に理解する事ができること大きな特徴で、特に企業において評価されています。

 

モノつくりワークショップ「クラフト・ミー」

図2、モノを加工する技術よりも、モノつくりのプロセスが重要(同社提供)

 

(1)各パートと関係性の強い項目

モノづくりパート:前に踏み出す力
グループワーク:考え抜く力、チームで働く力

また、オリジナルのチェックシートは経済産業省が提唱する「社会人基礎力」基づいて作成されており、「主体性」「他人を巻き込む力」「課題発見力」などの特長を確認する事ができるようになっています。

 

(2)社会人基礎力とは

社会人基礎力とは、経済産業省が2016年に提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」の事。そして人生100年時代に対応した「新・社会人基礎力」が、2019年に提唱されています。

 

人生100年時代の社会人基礎力
図3、社会人基礎力(経済産業省資料より)

 

(3)社会人基礎力を構成する3つの能力、12の能力要素

能力1、前に踏み出す力(アクション)

3つの能力要素

主体性 「物事に進んで取り組む力」

働きかけ力 「他人に働きかけ巻き込む力」

実行力  「目的を設定し確実に行動する力」

 

能力2,考え抜く力(シンキング)

3つの能力要素

課題発見力 「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」

計画力 「課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力」

創造力 「新しい価値を生み出す力」

能力3,チームで働く力(チームワーク)

5つの能力要素

発信力 「自分の意見をわかりやすく伝える力」

傾聴力 「相手の意見を丁寧に聴く力」

柔軟性 「意見の違いや立場の違いを理解する力」

情況把握力 「自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力」

規律性 「社会のルールや人との約束を守る力」

ストレスコントロール力 「ストレスの発生源に対応する力」

 

(4)社会人基礎力と企業が求める人材像

社会人基礎力と企業が求める人材像の関係を調査した資料によると、企業の「求める人材像」は業種によって異なる事が明らかになっており。建設業では「チームで働く力」が、サービス業では「前に踏み出す力」が、製造業では「考え抜く力」が、それぞれ重視されています。


関連記事 ものづくりで求められる「考え抜く力」とは


 

製造業で求められる社会人基礎力

図4、「求める人材像」と社会人基礎力との関係、業種別製造業(経済産業省資料)

 

3.若手技術者育成と社会人基礎力の重要性

技術革新が進む現代社会において、若手技術者の育成は企業の成長や持続可能な発展に大きく寄与します。そのためには、単に専門知識や技術力を身に付けるだけでなく、社会人基礎力の強化が不可欠です。

社会人基礎力とは、前項で紹介したようなコミュニケーション能力や問題解決能力、自己管理能力など、職場で求められる基本的なスキルのこと。これらの力を強化することで、若手技術者はチームで円滑に働くだけでなく、業務効率や柔軟性を向上させることができます。

特に、コミュニケーション能力は、技術者が他部門と連携し、新たなアイデアや解決策を生み出す上で重要です。また、自己管理能力や問題解決能力は、自律的に働き、多様な課題に対処する力を養います。

 


関連記事 製造業におけるコミュニケーション講座



 製造業企業は若手技術者の社会人基礎力を強化するため、社内研修と合わせて、外部との交流会、ワークショップの活用などを通じて、継続的な人材育成に力を入れるべきです。これにより、技術者は自己成長と共に企業の競争力向上に貢献できるのではないでしょうか?

 

取材:産業革新研究所 ものづくりドットコム編集部 大岡 明

 

 

◆取材にご協力いただいた方

会社名: totonoeya合同会社

代表者: 安武 貴子(やすたけ たかこ)

プロフィール:1979年生まれ。2004年University of Buckingham卒業後、求人広告会社にてHR/求職者マッチングサービスなどを担当。7年間勤めた後、出産と育児を経てクラフト(物づくり)ワークショップtotonoeya合同会社を設立。自宅から始まったワークショップは外へと広がり、店舗や企業内で開催するように。
ワークショップを開催する中、参加者達の洞察を通じて元職であるHR領域や求職者側にも活用できると考え、現在のサービスを開始。同時に、自身の観察力を強化するために「産業カウンセラー」の試験にも合格。クラフト(モノつくり)を通して、自分のちょっといいところを発見していただくために、企業・学校・親子向けのモノつくりワークショップを展開。

所在 東京都台東区 
HP https://totonoeya.net/

 

 

 

 


この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

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