【ものづくりの現場から】製品「音」の課題把握で、製品価値向上を目指す新しいアプローチ(SoundOne)

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音の多人数評価、分析ができるプラットフォームの画面(筆者撮影)

 

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ものづくりドットコムの連載「ものづくりの現場から」では、現場の課題や解決策に注目し、ものづくりの発展に寄与する情報を提供しています。今回は、ものづくりの現場で時折話題になる「音」に関連する課題の解決に取り組んでいる株式会社SoundOneにスポットを当てます。

 

 

はじめに

製品開発において、「音」は製品の品質やユーザー体験に大きな影響を与えます。特に自動車産業では、エンジン音、ドアの閉まる音、走行時の風切り音など、様々な音が製品の印象を左右します。これらの音に関する課題を正確に把握し、効果的に解決することは、製品価値を大幅に向上させる鍵となります。

自動車の音課題への取り組みは、専門メディアも取り上げられている(同社資料より)

 

 

音にまつわる課題の見つけ方


聴き手の多様性を理解する

製品が発する音に対する感性は人それぞれ異なります。例えば自動車では、一部のユーザーにとって心地良い低音が、他のユーザーには騒音に感じられることもあります。同社では、幅広い層の聴き手から音に対する直接的なフィードバックを集めるプラットフォームを構築することでで、課題を多角的に把握することを可能にしています。

収録したデータからすぐにアンケート作成、複数の評価者への配信ができる(同社資料)

 


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物理的測定との組み合わせ

音の印象は、物理的な測定値によっても裏付けられます。同社のソリューションはプラットフォームで評価者とのつながりを持ち、スマートフォンや高機能騒音計などの音源と解析ツールを組み合わせることで、感性に訴える音とその物理的特性の間に存在する関係を明らかにすることができます。これにより、課題をより具体的に特定することが可能になります。

 

測定・分析事例 

ヘアドライヤーの音の測定と印象評価と物理解析

 製品開発における気になる音の低減と、将来のサウンドデザインに活かすため、 音の測定と印象評価と物理解解析を実施。

音を聴いて直感的に浮かんだ2種類の評価語で実施。
 
1)するどい-にぶい:耳障り感を評価できるかも?
2)うるさい-静かな:音の大きさを評価できるかも?

 

測定

ドライヤーの作動音を騒音計にて収録。収録したドライヤーの作動音について、Sound Oneにてオーディオテストを実施し、主観量と物理量の結び付けを実施。

システム環境(同社資料)

 

物理パラメータとの相関

公開テストより引用 詳細は同社サイト特設ページより閲覧、視聴できます。

 

結果

1)「うるさい-静かな」は3.15kHz帯域付近のA特性音圧レベルと相関が高い。
 この付近の帯域の音圧が大きいと、「うるさい」という結果となった。
 

2)「するどい-にぶい」は5kH帯域以上の高い周波数と相関が高かった。

 

テスト結果から、どの音を避けたいか?の計画が可能になり、具体的な改善へとつながります。
今回はドライヤーの例ですが、様々なモノの音課題の解決に使えることがわかります。

 

 

課題解決の方法


データに基づく分析

同社のソリューションは、収集したフィードバックと物理データを基に、課題解決のための分析を行います。例えば、自動車のエンジン音に関するフィードバックから、特定の周波数帯域が問題であることを特定し、その周波数帯域を調整することで問題を解決するアプローチが可能になります。

分析画面:音の印象と物理量の相関が表示され、関係性を確認できる(同社資料)

 

イテレーティブな改善プロセス

データ収集、分析がスピーディに行えることで、改善策を迅速にテストし、その結果をもとにさらなる改善を行うイテレーティブ(反復的)なプロセスを実行できます。自動車の例で言えば、エンジン音の調整後に再度ユーザーフィードバックを収集し、目指す音質に近づいているかを確認し、目指す結果に向けて必要であれば反復して調整し改善してゆくことができます。

 

 

製品価値の向上


競合との差別化

「音」の質は、製品を競合と差別化する重要な要素です。詳細な音の分析と改善を実施することにより、製品に独自の魅力を持たせることが可能になります。

例として、自動車産業では、特有のエンジン音や静寂性がブランドイメージを高める要因となり得ます。

 

ユーザーエクスペリエンスの向上


製品から発せられる音は、ユーザーエクスペリエンス(UX)の質に直結します。ユーザーの感性に訴える音を追求することで、製品の使用感を向上させ、顧客満足度を高めることができます。

 

 

編集後記

「音」に関する課題を的確に把握し、解決することは製品価値を大幅に向上させることに繋がります。同社が提供するソリューションは、このプロセスを支援するツールであり、製造業に従事する技術者にとって、製品開発の新たな可能性を開くものだと考えます。課題の見つけ方から解決の方法、そして製品価値の向上に至るまで、製品にまつわる「音」の新しいアプローチから見る課題解決の科学的態度から学べる点はあるのではないでしょうか?始まったばかりの音の課題解決プラットフォーム、今後も注目です!

 

 



【会社概要】

・名称 株式会社SoundOne

・所在:神奈川県横浜市

  HP https://sound-one.net/


この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。