クリーンルーム用懐中電灯、紫外線カットとは

 今回は、クリーンルームの中で使う懐中電灯の解説です。写真技術を使い製品加工する半導体の製造工程では、一般の白色光を使うと製品が感光して不良になってしまいます。例えば、フィルムを使ったカメラでは、一般光の中でカメラの蓋を開けたり、フィルム自体を引き出してしまうと感光してしまい、フィルムがダメになってしまうのと同じです。
 
 それを防止するため、写真技術を使って製品加加工しているクリーンルームでは窓や天井灯を黄色に着色したものを使用しています。その部屋で使う懐中電灯も白光色ではなく、黄色のフィルターを取り付けたものが必要になります。この黄色は紫外線をカットするのです。
 
 クリーン化担当の皆様は、黄色の窓や天井灯、懐中電灯などは紫外線をカットするということを良くご存じだと思います。ただし、もう一歩踏み込んで、紫外線の何をカットするのかも知っておいて下さい。
 
 具体的には、紫外線の波長をカットしています。紫外線の波長は、およそ10nm~400nm(ナノメートル)位と言われます。波長の長い方はおよそ400nmくらいですが、黄色のフィルターでは、およそ500nm以下をカットします。つまり100nmくらい余裕を持ってカットしています。クリーンルームの窓などでは黄色の他、オレンジ色のものを使っているところもあります。これも同じ性能です。ただ、黄色よりも暗い感じがしますので敬遠されます。
 
 逆に、お客様が通る見学通路に面した窓には、あまりじろじろ見られないというメリットからオレンジのものを使っているところもあります。通路から見てもクリーンルーム内が暗く感じます。クリーンルーム内では、静電シートというビニールシートを使う場合があります。このシートも黄色いタイプがありますので、部分的に紫外線をカットしたいという場所などには活用できます。
 

事例1.紫外線漏れ

 昔は、白色蛍光灯に黄色のヒシチューブ(熱収縮性のプラスチックチューブ)を被せ、熱で収縮させたものを使っている現場がありました。たまたま蛍光灯の両端への加熱が十分されていないものが入荷したことがありました。この部分から徐々に剥がれ白色光が漏れていました。紫外線が漏れていたのです。その工程では品質が安定しないことが続きましたが、なかなか原因究明には至らなかったと聞いています。
 
 通行する人もあまり上を見て歩くことはしませんし、また歩行中上を見ることがあっても一瞬ですので気が付かなかったようです。今は蛍光灯のガラスそのものが黄色に着色されているものを使っているところが殆どです。ヒシチューブで覆うタイプは、おそらく殆ど使われていないと思います。
 

事例2.イエローライトでない懐中電灯の使用

 黄色の部屋で使う懐中電灯は、黄色のフィルターを取り付けてあるか、ガラス自体が黄色に着色されたものを使う必要があります。ところが、黄色のフィルターが無くても、黄色の部屋の中では、光が黄色に見えてしまいますので、イエローライトと思い込んでしまいます。実際にクリーンルームから出して確認してみると良く分かります。
 
 特にメンテナンスで使うものや、停電などの非常時に使うものに、イエローフィルターがついていない場合があります。それでずっと作業をしていたという場合もあります。非常用は工場で発注するのではなく、安全部門や総務部門が一括して購入することが多いので、こういうことが起きるのです。
 

事例3.誤作動・設備停止

 窓ガラスやエアシャワーのドアなどに、黄色のシート...
を貼り付けてあるところもあります。ところがそのシートの隅が剥がれ、徐々に拡大していっても、毎日見ていると慣れてしまって、その役目、目的を忘れてしまう場合もあります。常に新鮮な目で、多面的に観察してください。ちょっと変だと気が付いたことは、良く観察したり、踏み込んで考えてみましょう。段々持論(自論)が膨らんできます。
 
 余談ですが、紫外線をカットしたとはいえ、光ですから、光に敏感なセンサーは反応する場合があります。紫外線はカットしても、設備のセンサーに当てると誤作動や設備停止になるかも知れないということを意識しながら使いましょう。皆さんのところでも、本当に大丈夫かまず確認しましょう。
 
 【 関連する筆者の技法解説記事 】
  ◆ クリーン化活動を通じた人財育成(その1)
  ◆ クリーン化活動を通じた人財育成(その2)
 

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