クリーン化の理論武装を考える

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 クリーン化設計や技術部門などで、クリーン化も理論武装が必要だという人が時々います。しかし良く話を聞いていると、現場を知らないのに、単に理論武装が必要だという人と、現場を良く知っていて、その上で理論的に考えるという二通りがあることに気づきます。
 

1.クリーンルームの事例

 ある会社でこんな話を聞きました。クリーンルームの中で数人の人が腕まくりをして、それで腕組みをしながら、何かを話しているとのこと。何をしているのか聞いたところ、このゴミを片付けたら歩留まりや品質向上に繋がるのかという議論だったそうです。
 
 その人たちが取り囲んだ中には、紙くずが落ちていたというんです。確かにそんなに大きなゴミなら、舞い上がることもないので、品質や歩留まりには影響しないことは明らかです。だからと言ってそのまま放置せず、直ぐに拾えばいいのです。大きなゴミが減らなければ、小さなごみは減りません。それよりも、腕まくりをすることの方が大きな問題です。なぜ防塵衣を着用するのかがわかっていないのです。人が発生源ですから、人から出るごみをクリーンルームの中に飛散させないために着る服なのです。
 
 この人たちの言い分は、日頃から技術メンバーが理論武装しなさい。理論的に考えなさいと言うので、理論的に考えているというのです。これは理屈としか思えません。多くの人が仕事の手を止めて議論することではないのです。理論的に攻めているようで、何もわかっていないということですね。
 
 こんなこともありました。現場を知らない人が相手と理論の応酬をし合って、負けてしまった場合「わかりましたそれでは掃除しましょう」と言って素直に雑巾を持つとか、掃除をするかと言うと、大概はそうではなくて、理論で負けたのだから、今度は如何に相手に勝つかを考えるようになってしまうのです。この勝った、負けたは現場や製品品質には関係ないことです。例え理論が成立しても、現場と遊離しすぎて行動には繋がらないのです。
 

2.試作ラインの事例など

 ある会社の開発、試作ラインでは、技術者全員が朝一斉にクリーンルームに入り、現場の人と一緒に掃除をするんだそうです。それから自分の仕事に入るのです。こういう技術者は現場のことや現場の苦労を知っていますから、例え理論的な話し合いがあったとしても、現実的な話し合いになるでしょう。これには説得力があり、また具体的な行動に移しやすいです。
 
 つまり5ゲン主義が整うということです。現場で、現物、現実を見て、その上で原理原則に照らしながらの理論で会話することが出来ます。これがないままに、お互いに理論だけを戦わせると、相手を理論で負かすことに満足感を得てしまうのです。現場に良く入る技術者は作業者とも身近な関係になり、話もしやすく相互に情報が得やすくなります。現場の人は少し変だと思うと技術者に連絡し、情報が早く拾われることで問題が小さなうちに対策が取れる。また現場の人も標準書の書き方や考え方を指導してもらうことで、レベルも上がる。こんな相互の意思疎通が良い結果に繋がるわけです。
 
 もう一つの例を紹介します。ある工場では、クリーンルーム内の会議エリアで、技術や品質、現場の人が集まり会議をしていました。そこに置かれたホワイトボードにクリーン化の進め方を書いて説明していました。低歩留まり対策や出荷した製品がゴミ起因で返品されるものへの対策会議でした。ところが、その会議エリアの床を見るとゴミだらけでした。
 
 理論、理屈の内容よりもまずそのことに気づくことが大切ではないか。すぐに掃除しましょうと提言しました。本来、ホワイトボードも掲示で使うか、或いはクリーンルーム用のペンを使わないと、拭いた時にたくさんのゴミが飛散します。
 
 これは床を見れば一目瞭然です。そのような使い方をしているところがあれば、床をよく見てください。黒い汚れが点々としているはずです。床が汚れていたり、それを靴で踏んで床や靴の裏に汚れが付着していると思います。この工場では結局管理職が号令を出して、一斉清掃をしたところ、歩留まりが上がったというん...
 クリーン化設計や技術部門などで、クリーン化も理論武装が必要だという人が時々います。しかし良く話を聞いていると、現場を知らないのに、単に理論武装が必要だという人と、現場を良く知っていて、その上で理論的に考えるという二通りがあることに気づきます。
 

1.クリーンルームの事例

 ある会社でこんな話を聞きました。クリーンルームの中で数人の人が腕まくりをして、それで腕組みをしながら、何かを話しているとのこと。何をしているのか聞いたところ、このゴミを片付けたら歩留まりや品質向上に繋がるのかという議論だったそうです。
 
 その人たちが取り囲んだ中には、紙くずが落ちていたというんです。確かにそんなに大きなゴミなら、舞い上がることもないので、品質や歩留まりには影響しないことは明らかです。だからと言ってそのまま放置せず、直ぐに拾えばいいのです。大きなゴミが減らなければ、小さなごみは減りません。それよりも、腕まくりをすることの方が大きな問題です。なぜ防塵衣を着用するのかがわかっていないのです。人が発生源ですから、人から出るごみをクリーンルームの中に飛散させないために着る服なのです。
 
 この人たちの言い分は、日頃から技術メンバーが理論武装しなさい。理論的に考えなさいと言うので、理論的に考えているというのです。これは理屈としか思えません。多くの人が仕事の手を止めて議論することではないのです。理論的に攻めているようで、何もわかっていないということですね。
 
 こんなこともありました。現場を知らない人が相手と理論の応酬をし合って、負けてしまった場合「わかりましたそれでは掃除しましょう」と言って素直に雑巾を持つとか、掃除をするかと言うと、大概はそうではなくて、理論で負けたのだから、今度は如何に相手に勝つかを考えるようになってしまうのです。この勝った、負けたは現場や製品品質には関係ないことです。例え理論が成立しても、現場と遊離しすぎて行動には繋がらないのです。
 

2.試作ラインの事例など

 ある会社の開発、試作ラインでは、技術者全員が朝一斉にクリーンルームに入り、現場の人と一緒に掃除をするんだそうです。それから自分の仕事に入るのです。こういう技術者は現場のことや現場の苦労を知っていますから、例え理論的な話し合いがあったとしても、現実的な話し合いになるでしょう。これには説得力があり、また具体的な行動に移しやすいです。
 
 つまり5ゲン主義が整うということです。現場で、現物、現実を見て、その上で原理原則に照らしながらの理論で会話することが出来ます。これがないままに、お互いに理論だけを戦わせると、相手を理論で負かすことに満足感を得てしまうのです。現場に良く入る技術者は作業者とも身近な関係になり、話もしやすく相互に情報が得やすくなります。現場の人は少し変だと思うと技術者に連絡し、情報が早く拾われることで問題が小さなうちに対策が取れる。また現場の人も標準書の書き方や考え方を指導してもらうことで、レベルも上がる。こんな相互の意思疎通が良い結果に繋がるわけです。
 
 もう一つの例を紹介します。ある工場では、クリーンルーム内の会議エリアで、技術や品質、現場の人が集まり会議をしていました。そこに置かれたホワイトボードにクリーン化の進め方を書いて説明していました。低歩留まり対策や出荷した製品がゴミ起因で返品されるものへの対策会議でした。ところが、その会議エリアの床を見るとゴミだらけでした。
 
 理論、理屈の内容よりもまずそのことに気づくことが大切ではないか。すぐに掃除しましょうと提言しました。本来、ホワイトボードも掲示で使うか、或いはクリーンルーム用のペンを使わないと、拭いた時にたくさんのゴミが飛散します。
 
 これは床を見れば一目瞭然です。そのような使い方をしているところがあれば、床をよく見てください。黒い汚れが点々としているはずです。床が汚れていたり、それを靴で踏んで床や靴の裏に汚れが付着していると思います。この工場では結局管理職が号令を出して、一斉清掃をしたところ、歩留まりが上がったというんです。
 
 クリーンルームの清浄度が低いところでは、徹底的に清掃をするだけで効果が出る場合があります。ただし、それだけで安心せず、維持継続させるためにどうするかを考えていただきたいです。ここで言いたいのは、理論だけを戦わせても、技術者同士がやりあうだけで、現場は蚊帳の外、技術と現場とは遊離するだけで、物事を解決できることは少ない。まず、現場をよく見て理解したうえで理論的に考えるのなら、現場を置き去りにした空絵ごとにはならないということです。
 
 現場を知らない人の理論は、現場と遊離していて、現実味がなく実現できません。また言った人も責任は取りません。現場を熟知している人の理論は、現場と合致しているので、具体的に行動に繋がるということです。理論武装しても、その使い方や使う場を考えることです。
 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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