お客様起点のサプライチェーンマネジメントとは

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1. SCM: 在庫の持ち方と物の作り方

scm
 物流業はサプライチェーン全体を見渡せる立場にありますから、意識するとしないとに関わらずサプライチェーンマネジメントの一端を担っているのだと思います。サプライチェーンの終点は最終カスタマーになります。そこでサプライチェーンの組み立ては当然のことながら最終カスタマーから出発し、上流へ上流へとさかのぼっていくことになります。
 
 一方で、サプライチェーンと言いつつもお客様と十分に連携できていない場合があります。自社の最終製品在庫が終点となっているのです。在庫を持って販売していく業界がこういった方式を取っている可能性があります。これがサプライチェーンではないかと言えばそれは違います。範囲が最終顧客に結びついていないだけであり、自社内ではサプライチェーンを形成していることになります。しかし顧客に結びついていないと、在庫をどれくらい保有するべきかがわからなくなります。いわゆる需要予測がしっかりしていないために余剰在庫が発生したり欠品が発生したりするのです。
 
 これでは会社経営に悪影響を与えかねません。やはりあくまでもお客様起点とすることがサプライチェーンマネジメントの肝であるということがわかるのです。理想を言えばお客様が買って下さった分だけ作るということになるでしょう。また別の見方をすればお客様から発注が合った分だけ作るということになります。
 
 日用品などのコモディティの場合は前者のやり方、高額商品であれば後者のやり方になるのが一般的ではないでしょうか。もちろん、その逆があっても良いのですが、特に日用品は小売店に買いに行ってその場で持ち帰りますので、一定の在庫は必要です。高額商品を在庫補充方式にすることはお客様に対するリードタイム上は有利ですが、在庫金額が大きくなりがちです。自社の商品の特性でどちらの方式がより有利なのか判断が必要でしょう。
 

2. SCM: 販売予測と在庫量

 お客様の立場から言えばサプライチェーンマネジメントの最優先課題は「リードタイム」にあると考えられます。お客様は購入したらすぐ欲しいと考えます。たとえば、通信販売では翌日発送は当たり前、即日発送も増えてきています。これは買ったらすぐに手元に届いて欲しいというお客様のニーズがあるから出てきたサービスだと思います。一方でそれほど急がないのであれば、2~3日後に届けばよいと考えます。
 
 そして、小売店で欠品があれば取り寄せてもらうこともあるでしょう。しかし「お客様は今欲しい」ので、欠品している商品ではない別の商品を買うことになるでしょう。お客様がこういった考え方を持っていることを考慮すると、供給側は「すぐに提供すること」と「在庫を切らさないこと」を考えなければなりません。
 
 ここで課題になるのが「コスト」です。即日配送となれば配送にかかるコストは増加傾向にあるでしょう。適正在庫を持つためのコストも発生します。これは会社経営に大きなインパクトを与えますので、いかにこの発生コストを抑えるか、といった取り組みが必要になります。物流コストを下げる努力と同時に市場分析を行って「需要のある在庫を持つ」ということが求められます。なぜなら「売れない在庫」を持つことでコストをかけている会社が非常に多いからです。
 
 この「売れない在庫」への感性は研ぎ澄ます必要がありそうです。在庫があることで容器やスペース、横持ち工数や管理業務が必要になります。さらに結局長期在庫となって最終廃棄となる可能性があるのです。この廃棄ロスがどれほど会社の収益を圧迫しているかは認識しなければなりません。
 
 営業予測は簡単ではありません。しかし過去の売れ筋データや他社の販売動向など、ありとあらゆるデータを駆使して売れ筋商品とその販売数、在庫量を予測していくのが営業のプロではないでしょうか。こういった販売予測がしっかりしていないと闇夜に鉄砲を打つようなものです。相変わらず売れない在庫を保有することになってしまうのです。
 

3. SCM: リーダーと参謀

 受注生産方式の場合にはお客様が発注されてから手元に届くまでが「発注リードタイム」ということになります。たとえば、オーダーメイドのスーツを発注した場合、それが手元に届くのが3日なのか、一週間なのかがお客様が気にするリードタイムだということになります。どうしてもそのスーツが必要となる日に合わせて発注するでしょうから、それに間に合わないところには発注しないことになります。
 
 ゴールデンウイークに家族旅行に出かけるために新車を購入する場合も同様です。そのタイミングまでに登録を含めて供給側で済ませられなければ受注にはつながりません。供給側はものづくりのためのリードタイム短縮が求められます。と同時に調達リードタイムを短縮することも必要になります。
 
 生地を調達し、ボタンを調達し、それを生産工程へと供給できなければスーツの仕立てはできません。お客様から注文がありそうな製品につかう材料をすべて保有できるのであれば問題ありませんが、それでは材料在庫がかなりの量となってし...

1. SCM: 在庫の持ち方と物の作り方

scm
 物流業はサプライチェーン全体を見渡せる立場にありますから、意識するとしないとに関わらずサプライチェーンマネジメントの一端を担っているのだと思います。サプライチェーンの終点は最終カスタマーになります。そこでサプライチェーンの組み立ては当然のことながら最終カスタマーから出発し、上流へ上流へとさかのぼっていくことになります。
 
 一方で、サプライチェーンと言いつつもお客様と十分に連携できていない場合があります。自社の最終製品在庫が終点となっているのです。在庫を持って販売していく業界がこういった方式を取っている可能性があります。これがサプライチェーンではないかと言えばそれは違います。範囲が最終顧客に結びついていないだけであり、自社内ではサプライチェーンを形成していることになります。しかし顧客に結びついていないと、在庫をどれくらい保有するべきかがわからなくなります。いわゆる需要予測がしっかりしていないために余剰在庫が発生したり欠品が発生したりするのです。
 
 これでは会社経営に悪影響を与えかねません。やはりあくまでもお客様起点とすることがサプライチェーンマネジメントの肝であるということがわかるのです。理想を言えばお客様が買って下さった分だけ作るということになるでしょう。また別の見方をすればお客様から発注が合った分だけ作るということになります。
 
 日用品などのコモディティの場合は前者のやり方、高額商品であれば後者のやり方になるのが一般的ではないでしょうか。もちろん、その逆があっても良いのですが、特に日用品は小売店に買いに行ってその場で持ち帰りますので、一定の在庫は必要です。高額商品を在庫補充方式にすることはお客様に対するリードタイム上は有利ですが、在庫金額が大きくなりがちです。自社の商品の特性でどちらの方式がより有利なのか判断が必要でしょう。
 

2. SCM: 販売予測と在庫量

 お客様の立場から言えばサプライチェーンマネジメントの最優先課題は「リードタイム」にあると考えられます。お客様は購入したらすぐ欲しいと考えます。たとえば、通信販売では翌日発送は当たり前、即日発送も増えてきています。これは買ったらすぐに手元に届いて欲しいというお客様のニーズがあるから出てきたサービスだと思います。一方でそれほど急がないのであれば、2~3日後に届けばよいと考えます。
 
 そして、小売店で欠品があれば取り寄せてもらうこともあるでしょう。しかし「お客様は今欲しい」ので、欠品している商品ではない別の商品を買うことになるでしょう。お客様がこういった考え方を持っていることを考慮すると、供給側は「すぐに提供すること」と「在庫を切らさないこと」を考えなければなりません。
 
 ここで課題になるのが「コスト」です。即日配送となれば配送にかかるコストは増加傾向にあるでしょう。適正在庫を持つためのコストも発生します。これは会社経営に大きなインパクトを与えますので、いかにこの発生コストを抑えるか、といった取り組みが必要になります。物流コストを下げる努力と同時に市場分析を行って「需要のある在庫を持つ」ということが求められます。なぜなら「売れない在庫」を持つことでコストをかけている会社が非常に多いからです。
 
 この「売れない在庫」への感性は研ぎ澄ます必要がありそうです。在庫があることで容器やスペース、横持ち工数や管理業務が必要になります。さらに結局長期在庫となって最終廃棄となる可能性があるのです。この廃棄ロスがどれほど会社の収益を圧迫しているかは認識しなければなりません。
 
 営業予測は簡単ではありません。しかし過去の売れ筋データや他社の販売動向など、ありとあらゆるデータを駆使して売れ筋商品とその販売数、在庫量を予測していくのが営業のプロではないでしょうか。こういった販売予測がしっかりしていないと闇夜に鉄砲を打つようなものです。相変わらず売れない在庫を保有することになってしまうのです。
 

3. SCM: リーダーと参謀

 受注生産方式の場合にはお客様が発注されてから手元に届くまでが「発注リードタイム」ということになります。たとえば、オーダーメイドのスーツを発注した場合、それが手元に届くのが3日なのか、一週間なのかがお客様が気にするリードタイムだということになります。どうしてもそのスーツが必要となる日に合わせて発注するでしょうから、それに間に合わないところには発注しないことになります。
 
 ゴールデンウイークに家族旅行に出かけるために新車を購入する場合も同様です。そのタイミングまでに登録を含めて供給側で済ませられなければ受注にはつながりません。供給側はものづくりのためのリードタイム短縮が求められます。と同時に調達リードタイムを短縮することも必要になります。
 
 生地を調達し、ボタンを調達し、それを生産工程へと供給できなければスーツの仕立てはできません。お客様から注文がありそうな製品につかう材料をすべて保有できるのであれば問題ありませんが、それでは材料在庫がかなりの量となってしまい、現実的ではないかもしれません。タイムリーに調達することもサプライチェーンマネジメントの重要ファクターになります。そのためには協力会社を育てるというプロセスが必要となるでしょう。
 
 では、誰がサプライチェーンをリードするのがふさわしいでしょうか。やはり一番はその製品をお客様に直接供給する立場の会社であると言えるでしょう。通販会社やスーツの小売店、自動車販売会社など、お客様と直接やり取りできるところということになるでしょう。
 
 ここで全体を見渡せる立場にある物流が踏み込んでいきたいものです。サプライチェーン全体のリーダーは最終ユーザーとやりとりする会社ですが、サプライチェーン上のさまざまな情報を入手できる物流は、その参謀役になり得るはずです。売れ筋商品や在庫の状況、メーカーの生産状況などを把握できる立場にある物流が、サプライチェーンの効率化と売上向上に寄与していきたいものです。
 
 
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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