工場物流の誤解とは (その3)
2017-07-14
前回のその2に続いて解説します。
構内物流が生産コントロールを行うには適切なタイミングで部品などを届けるということをお話させていただきました。実はこれ以外にあと2つ容易なやり方があります。その1つは完成品を入れる容器を生産計画数分だけ届けるということです。たとえば生産計画が100台だとしましょう。この時に完成品が20個入る容器はいくつ届ければよいでしょうか。
これは簡単ですね。100÷20で5台だけ届ければよいことになります。部品が200台分供給されていたとしても、完成品用容器が100台分しかないわけですから、生産工程は100台を超えて生産することができません。もう1つの方法は「完成品」を必要な数しか引き取らないというやり方です。生産工程は部品と工数があれば生産計画以上に生産することが可能です。明日のために多少先行しておきたい、明日以降何が起きるかわからないので貯金をつくっておきたいと考えることはあり得ます。
仮に生産計画以上の生産ができたとしても、物流が完成品を引き取ってくれなければラインエンドが完成品であふれて置ききれなくなります。結果として生産を止めざるを得ない状況になるのです。ここで生産コントロールが効いたということになるでしょう。前回ご紹介した生産計画に見合った数量の部品だけ届けることを「入口統制」と呼びます。入口とは生産工程の入口のことを指します。一方で完成品の引き取りで生産コントロールを行うことを「出口統制」と呼びます。もちろん出口は生産工程の出口のことです。
このいずれかを行うことで構内物流は、見事に生産コントロールをやってのけることになります。いかがでしょうか。受け身の物流とは全く異なることにお気づきかと思います。さらに構内物流は工場の中を動き回って仕事をするという特殊な立場にあります。この立場を利用して「情報を運ぶ」ことも行うべきなのです。
つまりどこかの工程でトラブルが発生していることを発見したら、その情報を必要な部署に運ぶのです。この行為を通して、工場のさらなるトラブル拡大、たとえば得意先への未納や大幅な生産遅れなどを防止することができるのです。この「生産コントロール」こそが構内物流のメイン業務だと言っても過言ではないでしょう。
今までご説明してきた構内物流が生産コントロールを行うには、標準化のPDCAを実行していただき、場合によってはマンネリ化解消策を行っていただきたいと思います。ここまでは「お金をかけない改善」です。もちろん改善は原則お金をかけないことが基本です。お金をかけずに知恵を出して実行していくのが改善だからです。しかし、もし、ゆとりがあるのであれば「フールプルーフ」を導入することも考えてもよいかもしれません。フールプルーフとは知らない人が作業を行っても間違いが起きないような仕掛けのことです。
たとえば電子レンジは扉が閉まっていないと加熱できないようになっています。これは思いがけない事故を防止するための仕掛けです。自動車のエンジンはミッションレバーがパーキングかニュートラルに入っていなければ始動できません。この趣旨は電子レンジと同様です。物流工程では作業者が間違いを起こさないようなポカヨケがいくつかあります。たとえばデジタルピッキング装置。作業者はランプが点灯した間口から表示された数量だけ取り出すことでピッキングミスを防止しようというものです。
この逆がデジタルアソートシステムで、ランプのついた間口に表示された数量だけ投入します。これと類似したしくみがシャッター式ピッキング装...
置です。ピッキング棚の各間口にシャッター(蓋)がついており、オーダーに基づき該当間口のシャッターが開きます。これは他の間口からピッキングすることを防ぐためのサポートツールです。デジタルピッキング装置よりもサポート性は高いと思われます。デジタルピッキングではランプが点灯した間口からでなくても製品を取り出せますが、シャッター式ではそれができません。
最近は間口にスクリーンが付いていて、オーダーに基づき該当間口にオーダーが表示されるしくみもあります。システムは徐々に進化してきています。自社にふさわしいポカヨケを導入することをお勧めします。ただしこれらのしくみは万能ではないことは認識しておくべきです。ポカヨケを導入しても標準作業を守らないことでエラーは発生するからです。もちろんこれらのしくみは投資が必要ですから「対投資効果」をきっちりと見極めてから実施しましょう