【『坂の上の雲』に学ぶコミニュケーション論の連載目次】
・すべての関係者と課題を共有する。
・課題の共有
・顧客の言うことを鵜呑みにしない
・鵜呑みにしないことの大切さ
・「見える化」を活用する
・共通語の必要性
『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる為のヒントが豊富に隠されています。『坂の上の雲』に学ぶマネジメント、今回はコミニュケーション論のその2です。
1. すべての関係者と課題を共有する。
(4) 課題の共有
「課題の共有」はビジネスをする上で必要です。これがわからないと、なんとなくやらされている感じになります。これはリーダーとかマネジャーにかぎりません。なんだかよくわからないけれど、言われたからやっているというのが一番まずい状態です。それこそ「毎日報告しろ」となります。意義がわからないと“ほうれんそう”せざるをえなくなるのです。意義がわかれば毎日聞かなくてもいいと言うことです。こと細かに指示する人は、目的と課題の共有が甘いのです。細かいことばかり言う上司はポイントを自分でも押さえていないから気になってしまうのです。何のためにするのかという目的が重要です。細かいことをねちねち言う人は、目的を明確にできていないのです。だから「何のためにそれをするのですか」と質問されると、答えられないのです。目的を明確にするためには、次のようにするとよいでしょう。
目的は、いろいろな人に理解してもらいやすいために絞ることです。ふつうは大事なことには優先順位があって、これが第一、これが第二と順番をつけられます。しかし、あまり多すぎても訳がわからなくなるので、3つから5つに絞るのがよいでしょう。こぢんまりとまとめるのでなく、「夢は大きく」てかまわないのですが、実際に進めていくうちに時間とお金の制約で絞られてくるわけです。
すべての利害関係者(ステークホルダー)を調整するのは大変ですが、最終的に仕事を成功させるためには、共通の目的を見出し、課題に優先順位をつけて共有化できるかにかかっています。これは最初にやり遂げておかなければならないことです。何か仕事を頼まれたり、大きな仕事をしたりするとき、依頼者は多くを語らないのが普通です。いろいろ細かいことは言わないものです。特に日本ではその傾向があります。社内なら忙しいから社長や専務が一言しか言わないのはわかりますが、お金を払って依頼する場合でも似たようなものです。
たとえば、システム構築で億円単位のプロジェクトを頼むときに、「うちはこういうのが欲しいです」と普通は紙に書いて出しますが、その紙すら請負う側に書いてもらうことが多いようです。しかし、本来は依頼する側が一生懸命勉強して書かなくてはいけません。自分で書かないから失敗するのです。依頼者はもっと勉強しなさいと言いたくなります。語らないのはまだましで、語れないのは非常に困るわけです。しかし、筆者が伺っている企業ではほとんどがそうです。この状況はすぐには変わらないと思います。いままでは、うまくいくハウツーがなかったために語らなかったのが一因でしょうか。筆者は、「それはこういう風にやったらうまく語ることができる」という解決のための手法を開発しました。
(5) 共有のためにはまず価値を
どんな小さな仕事にも、「仕事」と「作業」がありますが、みかけは作業です。それが仕事であるかどうかは、見ているだけではわからないのです。たとえば、山登りで本人は山登りがやりたいわけだから、それなりのバリューがあります。それが登山になっているわけで、これを作業として「お前、行ってこい」と言われてやっていたら、ものすごく過酷な労働です。だから、何かを頼まれたら必ず自分で考えて、「これは頼んだ人にとってこういうバリューがあり、自分にとってもこういうバリューがある」と考えることをまず真っ先にすることです。「こうやればいい、ああやればいい」というテクニックは後回しにするべきであって、まずはバリュー、その仕事をする理由を自分で考えることです。連載の第3章で述べますが、バリューがあれば「作業」は「仕事」になるのです。
(6) 専門家に質問する
ビジネスで人にものを訊ねる場面は多々あるでしょう、「聞くときはそれなりの準備をしていくのが礼儀」です。まさに「このあたりがよくわからないので、お聞きしたいのですが」と尋ねると、先輩であれ社外の人であれ、何を聞きに来たのかのポイントがすぐわかります。すぐにわかるということは、聞かれた相手にとっても、実際の答えがすぐわかるか、これは自分にもわからないのであの人に聞いてみたらどうか、がすぐにわかるわけです。人にものを尋ねるときは、手ぶらで聞きに行くのではなく、それなりの準備をしてからでないと相手に失...