物流とタイミング

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 SCM

1. 調達部品と先行時間

 ジャスト・イン・タイムという手法は今や常識となりつつあります。ちょうど間に合うタイミングのことを指します。これを「正しく」実行していくことでいろいろな改善が図られることになります。料理も待つことなくタイムリーにサーブされることほど嬉しいことはありません。一方で注文したのに何分も待たされるようではその店に対する評価は下がる一方です。レストランに限らず注文してから受け取るまでのリードタイムは企業間競争力の大きなバロメーターになります。そして、そこには物流の実力が大きくかかわることになります。このタイミングは物流の重要要素でもある在庫と大きな関係があります。タイミングがふさわしくなければ在庫切れや在庫過多を招きかねません。調達部品についてはまさにその典型であるといえます。調達部品を使って生産を行う場合、その部品をいつ納入してもらえばよいでしょうか。本来であれば使う直前に届くことが理想でしょう。しかし、一般的にすべてのものを直前に入手することは困難を極めます。またそれに対するリスクも考慮する必要があります。たとえば届ける物流過程でのトラブルは可能性として考えておくべきでしょう。そのトラブルには道路渋滞や天候の問題などが考えられます。そこで、それらを考慮の上、多少安全を見て前もって納入してもらうことになります。生産工場であれば生産着手の2時間前に到着するようにします。この場合、物流トラブルで2時間遅れても生産には間に合うことになります。
 
 部品サプライヤーの所在地によってこの先行時間は、メリハリをつけて設定するとよいでしょう。もしユーザーの工場の目の前にサプライヤーが存在するのであれば、先行時間は限りなくゼロに近づきます。一方で遠方にある会社や首都圏を物流路にしているサプライヤーの場合、この先行時間は長めに設定しておくとよいかもしれません。ただし、気を付けなければならないのは前日納入といったような「日単位」での納入です。この場合、一日分の在庫が存在することになり、工場内に在庫置場が必要になります。場合によっては外部倉庫を借りなければ在庫を置ききれなくなる可能性もあります。これは直接的にコストを発生させることにもなります。調達部品はタイミングが重要なのです。
 

2. 物流がペースメーカー

 仕事は遅れることは許されません。得意先への未納や納入遅れなどを起こすことは、絶対にあってはならないことです。だからといって、あまりにも余裕を持ちすぎることもよくないことです。その一つが在庫で対応しようとする姿勢です。何か起きた時のために持つ「安全在庫」がありますが、これを通り越し、持っていることで安心する「安心在庫」が目立ちます。在庫を抱えた本人は安心でしょうが、実際にそれを保管する物流担当者はたまったものではありません。置場を探したり、運搬したり、容器を探したりと在庫発生に伴う「余分な仕事」が発生するからです。ですから、考えなければならないのが「タイミング」なのです。調達するタイミング、生産するタイミング、出庫するタイミングなどが挙げられます。何事も共通していえることは「仕事の着手タイミングが早すぎる」ということでしょう。本当であれば1時間前からスタートすればよい仕事を、3時間前から始めてしまう。その結果として2時間分の余分な在庫が滞留してしまうのです。これはその工程の心理的なものが影響しています。遅れたら大変だという心理です。これを防ぐためには何かしらのペースメーカーが必要になってきます。そして物理的な歯止めも必要かもしれません。ペースメーカーの例としては生産工程に対する部品供給が挙げられます。ちょうど生産をスタートすればよいタイミングで部品を届けるのです。物流がペースメーカーになるということです。
 
 もう一つは在庫置場を規制するということです。これは完成品の置場ですが、類似項目として完成品を入れる容器の数量で規制をかけてもよいでしょう。つまり物流が規制をかけるということです。このようなタイミングを正しく制御するためのしかけを社内に持つことが重要になってくるわけです。そして、そのしかけを物流に持たせることが有効だと考えられます。旅行に行くことを考えてみればわかりやすいでしょう。目的地までの電車や飛行機がペースメーカーです。出発時刻よりあまりにも早めに行き過ぎても待ちが発生するだけです。
 

3. 作業開始・終了時刻を定めよ

 物流が生産タイミングを指示するということはとても価値のあることです。なぜなら、従来の物流の仕事の仕方は「受身」であるからです。運んでくれと言われたから運ぶ、保管しておいてと言われたから保管する、といった仕事の仕方だけでは物流の本来の力を発揮することはできません。できるだけ付加価値度の高い仕事の仕方をしていきたいものです。そして、そのために今後心がけなければならないことは「計画的な仕事」を実施していくことです。つまり仕事の開始タイミングと終了タイミングを決めて実行するということです。たとえば、トラックの出発時刻ですが、きちんとダイヤ組みをしてそれをダイヤ表として掲示している会社は少数派です。世の中の鉄道やバスには必ずダイヤがあります。そして、オペレーターにはそれを遵守することが義務付けられています。では顧客の荷物を運ぶトラックはいかがでしょうか。顧客にそもそも指定時刻の概念がないのかもしれませんが、きちんと到着時刻、出発...
 SCM

1. 調達部品と先行時間

 ジャスト・イン・タイムという手法は今や常識となりつつあります。ちょうど間に合うタイミングのことを指します。これを「正しく」実行していくことでいろいろな改善が図られることになります。料理も待つことなくタイムリーにサーブされることほど嬉しいことはありません。一方で注文したのに何分も待たされるようではその店に対する評価は下がる一方です。レストランに限らず注文してから受け取るまでのリードタイムは企業間競争力の大きなバロメーターになります。そして、そこには物流の実力が大きくかかわることになります。このタイミングは物流の重要要素でもある在庫と大きな関係があります。タイミングがふさわしくなければ在庫切れや在庫過多を招きかねません。調達部品についてはまさにその典型であるといえます。調達部品を使って生産を行う場合、その部品をいつ納入してもらえばよいでしょうか。本来であれば使う直前に届くことが理想でしょう。しかし、一般的にすべてのものを直前に入手することは困難を極めます。またそれに対するリスクも考慮する必要があります。たとえば届ける物流過程でのトラブルは可能性として考えておくべきでしょう。そのトラブルには道路渋滞や天候の問題などが考えられます。そこで、それらを考慮の上、多少安全を見て前もって納入してもらうことになります。生産工場であれば生産着手の2時間前に到着するようにします。この場合、物流トラブルで2時間遅れても生産には間に合うことになります。
 
 部品サプライヤーの所在地によってこの先行時間は、メリハリをつけて設定するとよいでしょう。もしユーザーの工場の目の前にサプライヤーが存在するのであれば、先行時間は限りなくゼロに近づきます。一方で遠方にある会社や首都圏を物流路にしているサプライヤーの場合、この先行時間は長めに設定しておくとよいかもしれません。ただし、気を付けなければならないのは前日納入といったような「日単位」での納入です。この場合、一日分の在庫が存在することになり、工場内に在庫置場が必要になります。場合によっては外部倉庫を借りなければ在庫を置ききれなくなる可能性もあります。これは直接的にコストを発生させることにもなります。調達部品はタイミングが重要なのです。
 

2. 物流がペースメーカー

 仕事は遅れることは許されません。得意先への未納や納入遅れなどを起こすことは、絶対にあってはならないことです。だからといって、あまりにも余裕を持ちすぎることもよくないことです。その一つが在庫で対応しようとする姿勢です。何か起きた時のために持つ「安全在庫」がありますが、これを通り越し、持っていることで安心する「安心在庫」が目立ちます。在庫を抱えた本人は安心でしょうが、実際にそれを保管する物流担当者はたまったものではありません。置場を探したり、運搬したり、容器を探したりと在庫発生に伴う「余分な仕事」が発生するからです。ですから、考えなければならないのが「タイミング」なのです。調達するタイミング、生産するタイミング、出庫するタイミングなどが挙げられます。何事も共通していえることは「仕事の着手タイミングが早すぎる」ということでしょう。本当であれば1時間前からスタートすればよい仕事を、3時間前から始めてしまう。その結果として2時間分の余分な在庫が滞留してしまうのです。これはその工程の心理的なものが影響しています。遅れたら大変だという心理です。これを防ぐためには何かしらのペースメーカーが必要になってきます。そして物理的な歯止めも必要かもしれません。ペースメーカーの例としては生産工程に対する部品供給が挙げられます。ちょうど生産をスタートすればよいタイミングで部品を届けるのです。物流がペースメーカーになるということです。
 
 もう一つは在庫置場を規制するということです。これは完成品の置場ですが、類似項目として完成品を入れる容器の数量で規制をかけてもよいでしょう。つまり物流が規制をかけるということです。このようなタイミングを正しく制御するためのしかけを社内に持つことが重要になってくるわけです。そして、そのしかけを物流に持たせることが有効だと考えられます。旅行に行くことを考えてみればわかりやすいでしょう。目的地までの電車や飛行機がペースメーカーです。出発時刻よりあまりにも早めに行き過ぎても待ちが発生するだけです。
 

3. 作業開始・終了時刻を定めよ

 物流が生産タイミングを指示するということはとても価値のあることです。なぜなら、従来の物流の仕事の仕方は「受身」であるからです。運んでくれと言われたから運ぶ、保管しておいてと言われたから保管する、といった仕事の仕方だけでは物流の本来の力を発揮することはできません。できるだけ付加価値度の高い仕事の仕方をしていきたいものです。そして、そのために今後心がけなければならないことは「計画的な仕事」を実施していくことです。つまり仕事の開始タイミングと終了タイミングを決めて実行するということです。たとえば、トラックの出発時刻ですが、きちんとダイヤ組みをしてそれをダイヤ表として掲示している会社は少数派です。世の中の鉄道やバスには必ずダイヤがあります。そして、オペレーターにはそれを遵守することが義務付けられています。では顧客の荷物を運ぶトラックはいかがでしょうか。顧客にそもそも指定時刻の概念がないのかもしれませんが、きちんと到着時刻、出発時刻は定められていません。運送事業者側にも自分たちの都合の良い時に運びたいという意図もあるのか、時刻指定を嫌がるケースが見受けられます。これは決して望ましい状況ではありません。時刻はきっちりと決め、もしその時刻通りの運行ができないのであればそれを解消するための方策を考えることです。行き当たりばったりの物流ではロスだらけの物流で、生産性も向上しません。
 
 庫内作業でも同様です。出荷時刻を定め、それから逆算して梱包開始・終了時刻、出庫開始・終了時刻など順に上流にさかのぼりながら時刻を決めていきます。各工程の作業者は、この定められた時刻を先ほどの運行と同じように遵守するように心がけるのです。守れなかった場合はその要因を追求し、修正をしていくことが改善になるわけです。工場では出荷時刻から逆算で各工程の生産開始時刻を定めることも考えられます。なぜなら、トラックに同期して生産することで在庫を少なくすることが可能だからです。それだけに「出荷時刻」を定めることは重要なのです。部品供給で生産統制を行い、納期遅れを防ぎます。物流倉庫でも同様のやり方で計画的に仕事を進めましょう。要はきちんとしたタイミングを守って仕事を実施することです。繰り返しになりますが、その日暮らしの無計画な物流作業はロスを生むばかりです。ぜひ修正をしていきましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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