前回のその1に続いて解説します。前出の図85 の内容そのままでメンバーをアサインするだけかと予想していたのですが、予想はうれしい方向に外れ、それぞれのプロジェクトがユニークな定義をしてくれました。そのひとつを図86 に紹介します。
図86. あるプロジェクトの役柄定義(役柄イメージは画像は【Rド】提供)
さらに、それぞれのメンバーが作った行動指針、行動目標もユニークで、たとえば「遊び人」という役をもらったメンバーは図87 のように自分の役を定義しました。
図87. あるメンバーの行動指針・行動目標(役柄イメージは画像は【Rド】提供)
なかなかの出来だと思いませんか? こうやって、それぞれのプロジェクトが作成してくれた役割アサインを見たときのことを思い出すと、みんながプロジェクトを楽しもうとしていた当時の雰囲気が蘇ってきて、ワクワクしてうれしかった感情も蘇ってきます。プロジェクトが終わった時には、プロジェクトに対する意識やメンバーとの関係が変わったという感想ももらいました。
3. 書く、読む、振り返る
さらに、メンバーそれぞれが役を演じることができているかどうかを確認するために「振る舞い相互レビュー」という取り組みを実施しました。これは、メンバー同士で、それぞれ決めた行動指針と行動目標と照らしあわせて、その役に見合った言動ができているかどうか指摘し合うというものです。毎週、一人ひとりに自分以外のメンバー全員の良いポイントと指摘ポイントを書いてもらい、プロジェクト内だけで見ることができるようにしました。
ねらったのは、チームメンバーの一人ひとりのことをしっかり見ることと、他のメンバーからの指摘によって自分のことを振り返ることです。この「書く」「読む」「振り返る」のサイクルを回すことで、メンバー同士の結びつきを強くするとともに、自分の行動を変えることができます。実際、メンバーからは次のような感想を聞くことができました。
「ちゃんと見てくれていることがわかってやる気になった」
「がんばって行動したことを評価してもらってうれしかった」
「面と向かっても何でも言えるようになった」
「感謝することが大切だとわかった」
とくに、若手のメンバーから、行動を変えることができる、自分は変わることができるという自信と、成長を実感することができたという声を多く聞きました。「チーム」は成長を加速する集団でもあると言えるでしょう。
4.「チーム」はやる気を引き出す
この3つのプロジェクトはとにかく集まって話し合い、自分たちでやり方を工夫して、他のプロジェクトと同じように顧客からの厳しい納期と要求があるにもかかわらず、最後まで協力しあって笑顔で計画通りに開発を完了させました。しかも、開発と並行して改善活動も実施しながらです。
一般的に、マネジャーやリーダーは、メンバーの育成のため、苦労して一人ひとりとの会話や背景説明に時間をかけることを要求されます。しかし、メンバーはそのような上司の姿勢も上からの指示としてとらえてしまい、自律性ややる気にはつながらないこと...