人的資源マネジメント:「楽観性」を高めて逆境に強くなる(その1)
2018-01-05
前回は、自分の持っている徳性を知り、それを日常生活に活かすことで、より高い成果に結びつけることができるという話でした。徳性を知るツールとして VIA アセスメントを紹介しましたが、やってみましたか? 自分の強みとなる徳性を把握することは大切です。
今回は、逆境から抜け出す力や落ち込んでいる状態から回復する力がテーマです。最近では「レジリエンス(resilience)」という単語が使われていて、「回復力」「逆境力」「復元力」などの訳語が当てられています。
レジリエンスという言葉が流行っているということは、逆境から抜け出すのが難しい世の中になっているということかもしれません。私のクライアントの中にも、精神的な問題で中長期休暇をとっている技術者がいる組織が少なからずあり、そういう人を無くしたいとずっと思っています。まずは、技術者やマネジャーにレジリエンスについての基礎知識をもってもらいたいと考えています。
レジリエンスの研究は、ペンシルベニア大学で開発されたペン・レジリエンシー・プログラムがもっとも有名で、これは、戦地から戻ってきた米国陸軍兵士の多くが鬱病などの精神的な問題を起こしていたため、通常の社会生活ができるようにと開発された抑鬱防止プログラムです。
ペン・レジリエンシー・プログラム自体は現在、非公開となっているため全容を知ることはできないのですが、公開されている論文や資料などから把握できることも多いため、このコラムでも紹介していきたいと思います。今回はそのひとつである「楽観性」がテーマです。
レジリエンス(回復力,逆境力)を高めるために大切なもののひとつが「楽観性」です。楽観性の定義に一義的なものはなく、心理学者の間でもその定義は様々なのですが、ここでの楽観性とは「気質的楽観 (Dispositional Optimism)」のことであり、自分にとっても社会にとっても望ましいと考えるものを期待し、追求する気分や態度のことと考えてください。
様々な研究により、楽観的である方が逆境からの立ち直る力が高い、つまり、レジリエンスが高いことがわかっています。反対に楽観性が低い場合には、困難なことに直面したときに簡単にあきらめてしまう、無力感に陥ってしまうということが多くなる傾向があります。
自分の強みである「徳性」を知ることと同様に、レジリエンスを高めるためには自分の楽観性を知ることが大切です。楽観性を客観的に測定する方法のひとつに「楽観性尺度」(図124)があります。
この10個の質問に答えることで、自分の楽観性傾向がわかります。測定は、他人と比較するものではなく自分の楽観性の傾向を見るためのものなので、ここでは点数づけの方法は解説しませんが、点数を知りたい方はご連絡ください。
自分の楽観性を知るもう一つの方法に「楽観的説明スタイル (Optimisitic Explanatory Style)」があります。嫌な出来事の原因について、それが具体的で一時的なものであるとして説明するバイアスのことです。
自分の楽観的説明スタイルは、図125にあるように、嫌な出来事に対してその原因を3つの側面で分析することで把握することができます。