部品原価を材料費の観点だけで考えると、原価低減の取り組みが単に購入価格が安い部品を使うという表面的で局所最適なものになってしまいがちです。
本来、原価低減の取り組みは総合的なものであり、全体最適の観点で取り組むべき活動のひとつです。したがって、部品の購入価格だけでなく、部品の採用から保守に至るまでのライフサイクル・コストに目を向けで考えることが大切です。
ライフサイクル・コストとは、部品を探す、業者(代理店)を評価する、CAD ライブラリに登録する、購入の手配をする、倉庫で保管するなど、個々の作業に関係して発生する費用のことです。ライフサイクルを考えると、ひとつの部品に対して様々な作業、つまり、コストが発生していることがわかるはずです。これらは部品の管理コストであり、一般には次のようなものがあります。
部品評価コスト:部品の機能や信頼性を評価することにかかるコスト
業者評価コスト:部品の製造プロセスや生産体制など部品業者の評価にかかるコスト
DB登録コスト:ERP などにデータ登録するコスト
CAD登録コスト:各種 CAD/CAE のライブラリ登録にかかるコスト
倉庫コスト:倉庫スペースや中間在庫管理にかかるコスト
部品手配コスト:納期管理、手配、納入などの管理コスト
入出庫コスト:入出庫作業や仕掛品の管理コスト
製造装置段取りコスト:実装機や加工機の段取りにかかるコスト
部品の品質が悪いと、製造段階でのトラブル対応や市場でのトラブル対応などが加わり、そのコストは非常に大きな金額になります。あるメーカーでこれらの管理コストを算出したところ1部品あたり 100 万円にもなることがわかりました。部品トラブルが頻繁に起きている場合、その対応にかかるコストまで含めると、部品あたり 100 万円ではすまないでしょう。
このように、部品のライフサイクル・コストを明らかにすることで、部品の原価低減に対する見方が大きく変わるはずです。1部品あたり 100 万円もの管理コストがかかっていることがわかれば、原価低減の取り組みとして重要なことは使用部品の種類を減らすこと、つまり、部品標準化だということがわかるのではないでしょうか?
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工場ですぐ使える品質改善技法の開発と普及活動を行っている高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。
一般論でのご質問は一般論での答えとなってしまい、結論として海外調達はリスクが大きく、メリットが無いことになってしまいます。
「ただやはり安く仕入れることができる部品もあるのも現実で、経営者としてはそちらを使用したいという気持ちもわかります」とのご指摘通り、それは、ケースバイケースで考えることが必要です。
そこで調達担当者は先入観を排し、血眼になって、安くても高品質の部品を短納期で調達しようと努力します。
確かに一般的に、品質や工場の管理力には日本と新興国では差があることは事実で、しかも安い労働力に頼った工場の製品は、継続的に安定した品質を確保することは望めません。
つまり生産工程で不良を作らない仕組みを確立させるか、日本人スタッフを現地に派遣して出荷前検査で不良を出荷しないようにするか、どちらを取るかと言うと、生産工程で不良を作らない仕組みを確立している工場であり、必然的に高賃金のスタッフで管理されていることになります。
しかし、逆に賃金水準の高さが技術,品質の優位へ,さらにコスト競争力の優位へと繋がる面もあると考えられます。
そこで、改めて海外に調達先を求める理由を考えてみます。
①ただ低コストだけを求めて海外から調達する
②望む価格、望む品質のものをグローバルで調達する
もし②であるなら、調達担当者にとって、調達先の選定は、そのように面倒くさくて効率の悪い仕事が待っています。優れた調達先は、探す努力をしないと見つかりません。小規模で知名度は無いがしっかりした優れたサプライヤーを探し出すのは調達担当者の仕事です。
多くの企業がグローバル調達に立ち向かうのは、それを持ってしても有り余るほどのメリットがあると、前向きに考えているからなのではないでしょうか。
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