このところ中国内の半導体需要が旺盛で、それに伴って当社の受注量も増えていますが、加工能力が追い付かず断わらざるを得ない状況が半年以上続いています。加工設備は投資すれば手に入りますが、問題は人材です。未経験者であっても社内で教育できるものの、いかんせん当地は人口減少率が高く、労働者の絶対数が不足しています。売り手市場の環境下で、求職者はどうしても条件の良い大企業に足を向けてしまいます。かといって新規採用者に高い給与を提示すれば、当然現社員にも同等以上を支給する必要があり、受注が落ち込んだ時を考えると安易には対処できません。
これといってアピールするポイントのない中小企業で、なんとか人材を採用する妙案がありましたらアドバイスをお願いします。
[これは事務局が想定した架空の(しかしありがちな)質問です]
中小製造業の支援を行っている高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。
中小企業における人材確保に関する現状と課題について、2015年版中小企業白書で詳細に検証が行われています。
その中で中小企業のうち「人材が確保できている企業」と「人材が確保できていない企業」の特徴が分析されています。分析によると、「人材が確保できている企業」と「人材が確保できていない企業」の違いとして、一般に言われている労働条件や賃金に加えて、企業として、人材確保の手段・ノウハウにおける強みを持っていると考えられます。
人材採用に成功している企業の特徴として、採用をしたい人材像を明確化することと、人材確保の手段としてハローワーク、知人の紹介、取引先の紹介など従来から行われている方法に加え、多彩な手段を有しているという特徴があります。
一つの例として、地域の信用金庫、銀行等が主催するシニア人材交流会の活用です。
大企業で経験を積んだ高度な技術やノウハウを有する人材を採用することは、中小企業・小規模事業者の中核人材を採用する一つの手段として有効と考えられ、筆者の居住する群馬県でも、複数の地方金融機関が年間を通して交流会を開催しています。1回の交流会に、数十名〜100名近くのシニア人材が参加し、20社ほどの企業が面接を実施します。シニア人材にとってはかなり狭き門となっており、逆に採用する企業側からすると買い手市場となっています。
中小企業白書では、そのほかにも多数の事例が紹介されていますので参考にして頂きたいと思います。
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15歳から65歳を生産年齢と呼びますが、2015年の日本年齢別人口構成を見ると、65歳を迎える男性90万人に対して15歳になる男性は60万人と30万人も少なく、定年退職数を新卒で補充するだけでも容易ではないことが分かります。
そこで近年は人材のダイバーシティ(多様化)が提案されており、65歳以上の高齢者や女性、外国人を戦力として活用する取り組みが盛んです。質問者の職場でも、これら人材の活用を検討する価値があります。
また地方創生の動きに従い、一定数の地方移住希望者がいますが、ハローワークへの求人情報には地元居住者向けの情報しか掲載されないことが大半です。親の介護や子供の教育を理由に、都会や他地方から移住を検討している人もインターネットで求人情報を見ていますので、それらの人向けの生活/就業情報も追加しましょう。
一方で現状の生産量をより少ない従業員数で出荷する、つまり労働生産性を上げる活動も欠かせません。実現できれば原価が下がりますし、受注が減った時に不要な人員を抱えるリスクもありませんから、最優先で考えるべきでしょう。
作業改善だけでなく、リードタイムの短縮、不良率の低減なども有効ですが、質問者の製造現場生産性はすでにかなり高い水準かもしれません。設計、開発、資材購買、保守などの間接部門を含め、急速に進歩している情報技術の適用も併せて検討してください。成果が出るまでに時間がかかりますので、じっくりと計画的に実行する必要があります。
また、新規活動を社内のリソースだけで目標を達成することは容易でありません。社外専門家の協力を得て、短時間に成果を上げることも検討してみてください。
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