今回、前工程の稼働率を上げる為に、自工程でネックとなっている機械の回転数アップを図っていますが、そこにQC手法を活用したいと考えています。
改善内容から課題達成型ストーリーだという事はわかるのですが、これまで問題解決型しか進めた事がなく、どのように進めれば良いか悩んでいます。
課題達成の進め方のコツや、何かアドバイスがあれば教えてください。
モノづくり工場経営研究所の西水と申します。
先日も、この質問コーナーに同様の質問がありました。
手抜きするようで恐縮ですが、その時の回答内容を繰り返させて頂きます。ご了承下さい。
ただし、具体的な活用対象が掲載されていますので、コメントも加えさせて頂きます。
ご自身が行いたいことは、「前工程の稼働率を上げる為に、自工程でネックとなっている機械の回転数アップを図っていますが、そこにQC手法を活用したい」との事ですが、
文面だけですと「前工程の稼働率と自工程の回転数アップの関係」が判りませんが、ご自身では因果関係があるとの見解だと思います。この相関を知り(分析)、双方の因子をマネジメントして行くことになるのではないでしょうか。
以下にストーリーを示します。
「問題解決型QCストーリーの手順」から考えてみましょう。
●ステップ-1:テーマの選定
●ステップ-2:現状の把握
●ステップ-3:目標の設定
●ステップ-4:活動計画の立案、作成
●ステップ-5:要因の解析
●ステップ-6:対策の立案と実施
●ステップ-7:対策の効果確認
●ステップ-8:標準化
●ステップ-9:ステップ-1にもどる
ステップ-1~8を繰り返し、問題解決を継続的に行う。
続いて、ご質問の「課題達成型QCストーリー」のステップです。
●ステップ-1:テーマの選定
問題解決に取り組むテーマを決める。
●ステップ-2:テーマ実現に向けた課題の明確化と目標の設定
どのレベルまで改善をするのか、目標を決める。
●ステップ-3:活動計画の立案、作成
だれが、いつまでに、何をするのか、具体的に決める。
●ステップ-4:方策の立案、評価
課題とは”問題解決の取り組み”ですので、課題自体の考察には
「問題を未然防止できる方法」を演繹的に事前考察します。
デザインアプローチあるいはシステムアプローチ展開です。
ここが問題解決型QCストーリーの分析アプロ―チと違う点です。
●ステップ-5:最適策の追求
●ステップ-6:最適策の実施
対処する案を検討・具体化し、実施する。
●ステップ-7:効果の確認
対策の効果を確認する。
●ステップ-8:標準化
効果のあった対策を標準化し、定着化する。
という流れになります。
手順の違いは、「ステップー2」です。問題解決では「実態分析」、課題達成では「課題設定」です。
思考の違いは、問題解決では「分析思考」、課題達成は「論理思考」となります。
課題達成型の場合は、問題を解決する取り組み=課題を設定することが求められますが、未知のテーマに対する課題を設定する難しさがあります。
最近では、“『オープン・イノベーション』(他業界・他社・他者からの助言)という取り組みで、知見や情報やアイデアを収集し、課題として設定する”などの動きもあります。当方も、オープン・イノベーターのひとりです。(笑)
ご参考にして下さい。
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工場ですぐ使える品質改善技法の開発と普及活動を行っている高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。
課題達成型QCストーリは、新規の事業への対応、工場の改革を行う場合、従来の問題解決ではアプローチが困難な問題を解決する為の手順であり、今までに経験のない仕事で、これまでのやり方では改善できない問題を対象とします。
例えば、「新しい分野の製品受注に伴い品質を確保するための新しい工法を開発する」「今まで、一か月掛かっていた金型製作を一週間で制作できるようにする」などです。
しかし今回のご質問は、「前工程の稼働率を上げる為に、自工程でネックとなっている機械の回転数アップを図る」というテーマを決められているため、その内容に沿って、課題達成型のストーリー、進め方を考えてみたいと思います。
1.テーマの選定
機械の回転数アップ
2.攻め所と目標の設定
取り上げたテーマ(課題)について、現状のレベルを把握し,目標とのギャップを確認します。
①前工程の稼働率は現状どれくらいなのか?それをどれくらいアップさせたいのか?
②そのために、自工程の機械の現状の回転数と、それをどれくらいアップしなければならないかを把握します。
この差を把握したうえで、職場の対応力などを考慮して課題達成の方策案を検討するための着眼点を洗い出します。
これが「攻めどころ」であり、何に着眼すればこの目標を達成できそうなのかを明確にします。例えば、
人、機械、方法、材料、測定の5Mの要素に分類して、職場内で解決できそうな、人と機械に着眼します。
①人については、作業効率に着眼し、効率アップを目指します。
②機械についても同様に、ネック工程の稼働率、可動率に着眼し効率アップを目指します。
3.活動計画
これは、問題解決型と同じように、誰がいつまでに何をというように5W1Hを明確にします。
4.方策の立案
現状とありたい姿のギャップに対して、それを埋める方策を立案します。
①人の作業効率の現状と目標のギャップを埋めるための方策案について
アイデアを出し合います。
例えば、手待ちをなくすために、作業の空きが生じたら遅れている工程の応援を行う体制を構築するなど。
②機械の回転数を増すためにネック工程を把握し、能力アップを図るにはどうするか?また段取り作業の外段取り化を推進するなど。
5.成功のシナリオの追求と実施
絞り込まれた予想効果の大きな方策案について,具体的な実現方法(シナリオ)を検討します。
職場環境、費用などの制約条件を考慮して,具体化したシナリオごとの試行・実験・シミュレーションなどにより効果を予測し,目標達成が可能なことを確認すします。
障害や他への悪影響(副作用)が予測されるときは,回避策や防止策を検討します。
課題達成は問題解決と違い、その方策に「悪さ/原因」という根拠がありません。そのため、あくまで方策は「推定」に基づくものになり、どうしても不確定要素が出てしまいます。そのため、計画のスタートからゴールまでに考えられる成功と失敗の可能性を事前に考慮し、成功の確率をアップさせる「成功シナリオ」を事前に立てておきます。山を登るときに、地図を確認して安全なルートや危険な個所をチェックし、計画を立てることと同じです。
6.効果の確認
(問題解決型と同じ)
7.標準化
(問題解決型と同じ)
8.反省と今後の課題
(問題解決型と同じ)
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