グループメンバーが課題を解決するために、特性要因図を作成することが多いのですが、リストアップした要因をどこに配置したらよいのか迷うときがあり、そのようなときにどのようにアドバイスしたら良いのかの質問です。
自分は、矢印を引くときは要因と結果の関係になっているようにと教わりましたが、リストアップした項目の中には因果関係がそれほどはっきりと定められないものもあります。どちらが要因でどちらが結果かはっきりしない、あるいはお互いが要因で結果と思えるような項目もあります。
また、挙がった要因項目が、複数の島に配置できそうなこともあって、そのような場合はどう仕上げるようアドバイスすべきか悩んでしまうこともあります。
小集団活動の発表会で、サポートしたグループの特性要因図に対して因果関係が逆になっていると意見をした上役がいました。
自分としては、活動をサポートするに当たって、グループメンバーのやる気が下がらないようにすることを一番に考えていますので、作成された特性要因図が、必ずしも自分的に納得できなくてもOKとし、次に進めてもらうようにしています。
大体はOKですが、いくつかおかしいなと思える特性要因図ができて、そのままその先の改善へ進めた場合の弊害などがありましたら、教えていただきたいと思います。
現場ですぐ使える品質改善技法の開発と普及活動を行っている高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。
特性要因図についてのご質問ですが、「どちらが要因でどちらが結果かはっきりしない、あるいはお互いが要因で結果と思えるような項目」「挙がった要因項目が、複数の島に配置できそうなこともあって、そのような場合はどう仕上げるよう・・・」と悩んでおられますが、そもそも特性と要因の考え方が、よくわかっておられないと思います。
製造業における生産活動では、5M(人、機械、方法、材料、測定)の要因管理を行って、目的値のQCD(品質、コスト、納期)を達成します。
もし、目的が達成できなかったなら、5Mの管理方法のどこに問題があったことになります。
このことを特性要因図に当てはめると、特性値はQCDを指します。
つまり図面通りの寸法の製品、目標の価格、目標の納期を指します。しかし、目標の納期に間に合わなかったとします。そこでなぜ、間に合わなかったのか原因を突き止め、対策を行って次から納期に間に合せるようにします。
原因を突き止めるには、5Mの管理項目のどこに問題があったのかを事実に基づいて調査します。人の作業不慣れの問題なのか?機械の故障の問題なのか?材料の入荷が遅れたためなのか?作業手順に問題があったのか?現場で事実を一つ一つ調べます。
調べた結果、いくつかの問題点が浮かび上がってきます。これが納期遅れの管理上の要因です。
このように、特性値(納期遅れ)とその要因(人:作業不慣れ、機械:故障、材料:入荷遅れ)を魚の骨に表したものが特性要因図です。
そもそも特性要因図を作成する目的は、現場の状況確認またはデータを解析し要因を漏れなく挙げ、その中から原因を特定するためのツールとして使います。
このように考えれば、特性(数値化された結果)と要因のどちらか区別できないことはあり得ません。また、作業者が操作ミスをして機械が故障したというように人と機械の複数の要因があげられる場合もありますが、それは、よく調べれば作業者がミスを起こしやすい機械側の構造問題であるというように特定できます。
特性要因図はどうすれば体裁よく「仕上げる」かに労力を割くのではなく、現場に足を運んで事実を確かめることが最も重要な作業になります。このことを「三現主義」と言います。
会社の業務は決められたプロセス(要因)があって結果(特性)が出てきます。直接業務でも間接業務でも同じことが言えます。プロセスが正しければ、あるいは守られれば、正しい結果が出力されます。特性要因図は頭の中で作り上げるものではなく、すでに現実となっている決められた業務の流れ、しくみ(事実)をそのまま表したものでなければなりません。
もし、特性要因図に書き表せない業務があるならば、早急に流れを決める必要があります(標準化)。具体的には、QC工程図、作業指示書、業務フロー、業務マニュアルなどが該当します。
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高崎ものづくり技術研究所の濱田です。
小集団活動を行っている目的は何でしょうか?
正しい品質管理の方法を教えると士気が下がるでしょうか?むしろ間違った手法で、いつまでたっても結果が出なければ、それこそ形ばかりの活動となって、士気が下がるのではないでしょうか?
要因と結果が入れ替わっている特性要因図は「少しだけの間違い」とはとても言えず、原因が究明できなければ、その先へ進むことができず、対策も打てません。
小集団活動が新人の教育も兼ねて、職場の改善を行おうとしているのであれば、問題を正しく捉えて原因を究明し、それを解決していく手順、手法を正しく教え納得してもらいながら進めるべきです。なるほどと納得できれば士気も上がるでしょう。コミュニケーションの場として職場内の人間関係を円滑にするためであるなら、QCストーリーやQC七つ道具は用いなくても良いでしょう。
まず社内で、小集団活動の目的、得られる効果として何を期待しているのか?を再確認されてはいかがですか。せっかく貴重な時間を割いて行う活動ですので、はっきりと方向付けした方が良いと思います。
QCストーリーや、QC七つ道具は一定の品質管理知識や経験を得てからでないと使いこなすのは相当難しいと思いますので、サポーターとしてご苦労はあると思いますが、あまり無理せずに現状を見ながら正しい品質管理の活動にもっていくよう、知恵を絞り指導されて行かれることを期待しております。
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私も共感する部分があります。
現場の問題は放置することなく、発生したらすぐ対策することが求められるわけであって、必ずしもQCストーリー通り活動するテーマばかりではありません。やってみてだめなら次の対策を打つという、試行錯誤の繰り返しとなることも多いと思います。
QCストーリーが成り立つのは、失敗が許されない大きなテーマをプロジェクト活動で解決する場合に限られます。職場の小カイゼンをあたかもQCストーリーで解決したようにまとめるより、試行錯誤で行った改善、失敗談も含め、ありのまま発表した方がかえって、共感を得るとともに、他のサークルメンバーにも役に立つのではないかと考えております。
QCサークル活動の目的、期待する効果、活動の枠組みなどを明確にして、旧来からの形にこだわらず活動されることを望んでおります。
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クリーン化が専門の清水と申します。
ここでは、ものづくりの現場で使う特性要因図として説明します。
特性要因図は、結果(品質特性)に原因(要因)がどのように関係し、影響しているかを矢印で表した図のことです。主に品質問題を改善すると思いますから、その項目は結果なのか要因なのかを冷静に考えて見ましょう。
特性要因図のスタート部分ですから、慎重に考えたいです。
特性要因図によって、品質との因果関係を突き止めることで、より具体的な課題が設定できます。
テーマとして取り上げた項目は、改善したい項目ですからより具体的な表現にします。
ものづくりの現場などで作成する特性要因図は、主に中心線に対して、4Mを配置します。
Man(人)Machine(機械・設備)Material(材料)Method(方法)です。
この他測定系の問題も考えられる場合は、Measurement(測定)も加え、5Mとします。
更に半導体製造などでは、各種ガス、真空、圧空、供給空気(空調)などが原因になることもあります。そこで製品の材料であるMaterialとは別にEnergy(エネルギー)を加える場合もあります。
特性要因図は、会議室などで作成することもあると思いますが、記憶や思い違い、勘違いもあると思います。できるだけ問題の対象となっている現場(工程)で作ることが良いです。
ある程度理解しているつもりでも、そこで観察しながら拾い出しを行うと、より正しい情報が得られます。
挙がった項目が、分類上どうしても2つの島のどちらにも密接な関係がある場合は、両方に入れても良いと思います。完成の段階まで残るかも知れません。またその過程で片方が消えるかも知れません。作りながら完成度を高めることです。
作成手順は、
① 問題となる品質特性を決め、幹を作る
② 大別した要因を大枝にして描く 4Mまたは5Mを配置
③ 大別要因ごとに、更にそれらの要因を中、小の枝にして書き加える
作り方、使い方の留意点は、
① 多くの人の知識や経験を集める
② 要因を徹底的に掘り下げて追及する
③ 要因と対策を混同しない
④ 要因を重みづけし、対策に結びつける
活動のアドバイザー役としては、
文中に、「作成された特性要因図が、必ずしも自分的に納得できなくてもOKとし、次に進めてもらう」とありますが、納得できないことがあれば、そこで明確にすべきだと思います。
そのまま進めてしまって、全体の発表会など大勢の場で指摘されてしまった方が、余計に自信を無くしたり、メンバーのやる気が低下することに繋がるのではないでしょうか。
そうなる前に食い止めることですね。
それでうまく行ったり、褒められたりすると、その方が士気が上がり、自信も出て来ると思います。
またそのまま進めてしまっても、曖昧な部分があれば、真因に辿り着かない、或いは離れてしまうことも考えられます。
すると問題の解決には繋がらないですね。
もう一度、特性要因図について、メンバーと考えて見る機会を設けてみてはいかがでしょうか。
このような説明で、少しでもお役に立てれば嬉しいです。
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