トヨタのサイトでは、
可動率(設備を動かしたいときにいつでも動かせる割合)を高めるために、「異常の早期検出」「日常点検と定期点検の強化」「工程・設備上の改善」を行い、「可動率」を大幅に向上して「生産量の変動にきめ細かく対処」できるようにしたとあります。
一般的にとらえると、この3件はいずれも生産量「向上」のために「稼働率」の向上行うものであり、「変動」にどう貢献するのかがそもそも判りません。
敢えて解釈すると、
「異常の早期検出」「日常点検と定期点検の強化」によって、稼働したい時に稼働できなかったという事を防止する。
「工程・設備上の改善」により、そのラインでの生産可能な機種を増やす。とでも理解しなければなりません。
でもそれでは数値化で違いを表すことができないと思います。
もしかすると、そもそも考え方であって定義・計算式は無いのかも知れません。
いろんな方が述べている「稼働率」と「可動率」の違いを整理しました。
「稼働率」の定義が様々存在することは承知していましたが、唯一と思っていた「可動率」にも定義がいくつかあるようで、しかも混同して説明しているものがほとんどなので、判りにくいようです。
1、「稼働率」を能力に対する受注の割合として定義する場合、生産の稼働率と言っていたものを「可動率」と定義。
受注が多すぎて作り切れない場合、「稼働率」は100%を超える。
受注が少ない場合、製造サイドは「稼働率」を上げよう(能力を下げよう)とするのはNGという意見もありますが、そうなのでしょうか。
2、生産開始してからの効率が「稼働率」とした場合、生産開始する前の準備時間(段取替・材料配膳・校正など)も含めた効率が「可動率」。生産数には関係なく、稼働時間・停止時間による計算となり、どちらも100%を超えない。
3、稼働率=実際の生産数/計画した生産能力、可動率=実際の生産数/実際の生産能力。
生産設備の顧客要求仕様が100ヶ/時間で可動率90%とされた場合、稼働率を考慮して製作した設備が能力120ヶ/時間あったとしても、100ヶ/時しか生産できなければ生産数/要求数=稼働率100%でOKとはならず、可動率100/120=83%でNGとなります。
計画した生産能力に対して実際の能力が高ければ、「稼働率」は100%を超えますが、無駄な能力を持った設備となり認められません。
しかし、いずれも「生産量の変動にきめ細かく対処」するものではないので、また別の定義がありそうです。本来の定義をご存知の方がいらっしゃれば、具体例で説明いただけないでしょうか。
補足1 投稿日時:2019/04/15 17:22
回答ありがとうございます。
昔トヨタは、
「稼働率」=稼働時間/就業時間(朝礼・勉強会等の生産しようとしている時間以外も含む)
※稼働時間が就業時間を超えないと生産が間に合わなければ、残業で就業時間を100%以上にしなければならない。
に対して、
「可動率」=有効稼働時間/操業時間(生産しようとしている時間のみ)
と表現したが、一般製造業では1971年頃からTPMを通して「可動率」のことが「稼働率」として広まった。しかしJISで1983年に、
「稼働率」=有効稼働時間/就業時間若しくは利用可能時間
と定義されてしまったため、現在の混乱が生じていると考えますが、いかがでしょうか。
私はトヨタ・JISの「稼働率」定義を知らずに、TPMの「稼働率」とトヨタの「可動率」の違いに悩んでいました。
たぶん同じなので、違いはないということになると思います。まずどの「稼働率」と「可動率」の違いを述べるのかを定義しないと混乱しますね。私は「稼働率」=受注数/生産能力数という考え方も含めてしまいました。
元々の質問は3、の定義からきた疑問ですが、これが一般的でないことはわかりました。
robotopさん、仕事で出張していたため、返答が遅れて申し訳ありませんでした。
概ねrobotopさんの考え方で正しいと思いますが、私の考え方とはと少し違う所もありますので、その違いだけについて返答したいと思います。あくまでの私の個人的な考え方なので、参考程度に留めて下されば幸いです。
>> この3件はいずれも生産量「向上」のために「稼働率」の向上行うものであり、「変動」にどう貢献するのかがそもそも判りません。
可動率は「稼働率」の向上を目的とした指標ではなく、”設備を動かしたい時間中”に設備の停止時間を極力減らすことを目的とした指標です。設備の故障やメンテナンス、段取り時間や切り替え時間などを減らしたり未然に防ぐことが、可動率を向上させるための目的となります。
生産量の「変動」は、”設備を動かしたい時間”を変動させます。つまり生産量を増やしたい時は、”設備を動かしたい時間”も増えます(逆も然り)。その”設備を動かしたい時間”に実際に設備をどのくらい使えるのかを表している指標が可動率です。
>>「工程・設備上の改善」により、そのラインでの生産可能な機種を増やす。
これは多品種少量生産を目指す混流生産のことをおっしゃっているのだと思います。混流生産を行えば、確かに生産量が増えて”設備を動かしたい時間”も増えるかもしれませんが、逆に段取り時間や切り替え時間が増えるため、可動率は一般的に下がってしまいます。
しかしそのラインでの生産量が増えるため、稼働率は上がるでしょう。
>>「稼働率」を能力に対する受注の割合として定義する場合、生産の稼働率と言っていたものを「可動率」と定義。受注が多すぎて作り切れない場合、「稼働率」は100%を超える。
能力を分母とし、稼働率と可動率を同義とした場合、稼働率は100%を超えることはないと思います。能力以上には生産できないからです。
しかし計画を分母とした場合は、稼働率は100%を超えます。但しこの場合は、稼働率と可動率の定義は異なります(可動率は”動かしたい時間中”の最大の生産量 = 能力が分母になる)。
>> 受注が少ない場合、製造サイドは「稼働率」を上げよう(能力を下げよう)とするのはNGという意見もありますが、そうなのでしょうか。
能力を分母として定義した場合(つまり稼働率と可動率が同義)、受注の大小に関わらず、稼働率(つまり可動率)100%を目指します。”動かしたい時間”に設備の停止時間を極力減らしたいからです。
また能力を「”設備の動かしたい時間中”の最大の生産量」と定義するのであれば、受注が少なければ”設備を動かしたい時間”が減るので、この定義における能力は自ずと減ると思います。
計画を分母とした場合は、受注が少ないにも関わらず稼働率(可動率とは異義)を上げることは、無駄な生産を増やすことになるので避けるべきです。
>> 稼働率=実際の生産数/計画した生産能力、可動率=実際の生産数/実際の生産能力
稼働率 = 100ケ / 120ケ = 83%、可動率 = 7.2時間 / 8.0時間 = 90%(8時間勤務中、フル操業の場合)または可動率 = 90ケ / 100ケ = 90%という計算になるのではないかと思います。
この場合、①無駄な設備を見直すこと(集約、売却、遊休化など)、②受注を増やすこと、③混流生産を検討すること、④可動率を向上させるために、トラブルの未然防止や、段取り時間や切替時間の短縮に努力することなどが考えられます。
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ものづくりドットコム 専門家の熊坂です。
多くの専門家各位から素晴らしい回答をいただいていますが、やや異なる観点で私見を述べます。
生産現場において評価指標は大事ですが、評価することが目的になってはなりません。何のためにデータを取るかが重要で、目的にあった指標を定義しましょう。
稼働率は、設備をどれだけ活用しているかを知る目的でしょう。設備の追加投資時期の判断には重要ですが、不要なものを作るのは100害あって一利なしですから、稼働率を上げようとするのは愚の骨頂です。
一方可動率は、設備を使いたい時に使える割合を知る指標と考えられます。これはいかなる場合も、高ければ高いほど良いでしょう。
いずれにしてもその定義は、目的にそって自社で決めて良いのではないでしょうか?参考書に定義が書いてあっても、自社の目的に合わなければ仕方がありません。ものづくりは極めて多様であり、歩留りであれ、リードタイムであれ、現場によって意味が違ってきます。
最もまずいのは、ラインによって、時期によって、定義が変わることです。それでは改善効果や、問題の大きさが判断できません。
将来的に再定義する可能性があるなら、「稼働率」と一からげにデータを記録せず、「待ち時間」「故障による停止時間」「残業による増加就業時間」など項目ごとに全て記録しておくことです。
また、納入先から「可動率90%以上」などと要求がある場合は、その理由と定義を教えてもらうのが良いでしょう。もしかすると不毛な改善活動に時間を取られているかもしれないからです。
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