監督者として、働いております。毎日現場で実行されている仕事の目的は、品質の維持向上か、
原価の低減か、納期の確保かのいずれかに関連していますが、品質の維持向上に関連して、専門
家のアドバイスをお願いします。
質問は、検査で判定して不良品を排除することをしなくても品質を維持していける状態に工程
の水準を向上させるには、生産現場の品質管理活動として、どのような順番で各種QC手法を展開
してゆくのが効果的なのかを、お教え下さい。
伊藤コンサルティングの伊藤と申します。
まずは、どのような不良が発生しているか「チェックシート」を使って現状の不良項目別の発生状況を調査します。そのチェックシートは、「生産装置別」、「作業者別」、「時間別」など後から「層別」できるようなチェックシートにする必要があります。(原因を絞り込むために必要となります。)
寸法等といったの測定する数値等の基準がある場合は、「ヒストグラム」を使って検査等で測定した数値のバラツキや異常な値がないか確認します。
次にチェックシートから現状の不良項目別の発生状況を集計、「パレート図」を作成し、どの不良項目が多いかを「見える化」します。
「パレート図」から発生数が多い不良項目や、「ヒストグラム」から異常な数値なもの、バラツキの異常について、「特性要因図」を作成し、要因を洗い出します。そしてその要因を対策し、潰していきます。
もし、洗い出した要因と不良について、本当に関係するかどうか確認する場合には、関連するデータから「散布図」を作成し相関関係を見ます。
これを繰り返し、工程の品質水準を改善していきます。
また、その工程が安定している状態かどうかを監視する必要があります。その場合は「管理図」を作成し、異常が見られた際は、工程を止めて原因を調査し、是正するといった対応が必要となります。
ご参考になれば幸いです。
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「検査で判定して不良品を排除することをしなくても品質を維持していける状態に工程の水準を向上させるにはどうしたらいいか」と言うご質問ですが、
■第一に必要な事は、現場の日常管理のルールを確立することが大切です。
●管理項目の明確化・・・品質の作り込要因の管理(5M)、品質特性の確認項目・方法(検査)
●管理項目の見える化・・・重要要因・特性の管理図、推移グラフ、チェックシート
●ルール順守の仕組み、点検方法明確化・・・自工程検査、ポカヨケ、監督者巡回
●異常処理ルール明確化・・・4M変化点の定義、異常の定義、処理方法・手順
●改善活動の手順明確化・・・課題の棚卸・優先順位付け、サークル活動手順
このルールは、現場の監督者が中心となり、品質管理部門、製造技術部門の協力を得ながら作成します。
■第二に、ルールを確実に運用します。
管理図において、また4M変化点後において異常が発見されたら直ちに原因を追究して是正対策を講じ、発生した問題は二度と再発させないようにします。ただ、ここまでの段階では、まだ「検査で判定して不良品を排除」する作業は無くなりません。では、「工程の水準を向上させ、検査をなくす」にはどうしたらいいでしょうか?
■第三に、「工程の水準」を向上させるための改善の方向性を考えてみます。
①寸法不良のような規格公差範囲を有する品質特性の問題については、ヒストグラムを作成して、その特性の平均値(中央値)とばらつき具合、つまり工程能力(Cp,Cpk)をを調べます。
この時に、データのサンプリングに注意して、特性に影響を与える要因ごとに層別して調べることが重要になります。種類が同じ機械でも、機械ごとにサンプリングを行います。それぞれの特性に与える影響は、散布図を作成して相関関係を調査します。
最終的に、規格公差範囲の中心にヒストグラムの中心が来くること、またCpkは1.33以上確保できるように、問題点の対策、調整項目の見直し・再設定を行います。特性値に影響する要因(パラメーター)が多数ある場合は、実験計画法やタグチメソッドを使って、実験の回数を減らします。
②外観不良や塗装面の傷などの欠点は、特性要因図を作成して要因を絞り込みます。その作業は現場観察と事実のデータに基づいて実施します。要因ごとに人の作業ミスや機械の点検不備などのルール違反を徹底的に排除し、ポカヨケや自動停止などハード対策も併用しながら対策を講じます。日常の管理手段として、P管理図、C管理図を用いて、異常の早期発見と対策によって品質水準を高めます。
■第四に、工程の水準を高める改善活動について
様々な問題、課題について、すべてをリストアップし、最優先で取り組む項目、自職場の範囲で改善できる項目、他部門や工場全体で取り組むべき項目などのレベル分けを行います。
とかく、難しい問題が放置されてしまうため、すべての問題を漏れなく対策する手順を決めておく必要があります。
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「検査で判定して不良品を排除することをしなくても品質を維持していける状態に工程の水準を向上させるには、生産現場の品質管理活動として、どのような順番で各種QC手法を展開してゆくのが効果的なのか」
この質問に回答します。
品質トラブルがなくなれば、コストダウン、納期管理が遣り易くなるため、何よりも大切な問題です。
第一に、品質は工程で作り込むことが品質管理の基本原則であることはご承知と思います。
第二に、工程ごとの品質判定の基準を明確にして、後工程に不具合品を送らない様にします。
文言で示すことが出来ない判定基準は限度見本を常置する。基準を示す事が困難でも創意工夫して決める。
第三に、後工程で発見した不具合品は前工程に戻し、修正要求しこの記録を残す。曖昧な判断で次の工程に送るこ
とが品質問題を複雑にします。
この場合大切なことは、発生させた人を意識しないで、現象だけを明らかにして連絡する。
第四に、特定の人に不具合発生が多くみられることが珍しくない。この場合に大切なことは、何かの思い違いで問題 を発生させていることが多くみられているから、指導の仕方、管理の仕方を見直すことから着手し、個人を責める
ことは絶対に避ける。
第四に、一定期間毎に発生している不具合の集計を行い、パレート図を作成し、発生率の高い順に3項目の不具合に 関して重点的に対策を立て実施し、この対策が効果を発揮した場合は作業手順書に反映させることを繰り返す。
この処置を講じないで、不具合発生の都度対策を講じたことで済ましている場合が少なくないが、これでは
類似の不具合が繰り返し発生することが根絶できない。不具合率はPPM単位を目指す。%の水準ではいけない。
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