平準化生産を進めていますが、平準化によりライン編成は絶えず変化し、その
変化に対応するために、作業者の多能工化が進みました。
しかし、多能工化は訓練自体が目的になったりして研修に時間を費やします。
又、ライン編成の変更が多くなり、生産効率が悪化して、品質トラブルも増加し
ています。
専門家のアドバイスを頂きたいのは、平準化生産を進めるための要点と手順、
注意点などです。宜しく、お願します。
はじめまして、㈱ヒューマン・ナレッヂの前田と申します。
あなたの会社では平準化に取組まれているのですね。
ご質問で記載されておりました、平準化に取組み生産効率の悪化や品質トラブル増加は平準化の取組以前の問題もある様に思います。
平準化に取組む際の注意事項として
1.平準化生産前の作業のやり方、時間等をきちんと明確に表し、問題点は洗い出し改善された上で取組みましたか。(表準作業)
2.表準作業が改善・改革し標準作業(標準作業組合せ票)や標準作業票、標準指導書に基づく生産が確立されていますか。
3.平準化生産をしている上で、タクトタイムは算出されていることと思いますので
以前の生産方法から見て在庫は減少していますか。
JIT生産から言う平準化とは「品種と量の平均化」を言います。
生産計画を立てる場合も秒単位まで細かく立てる必要があります。
本来の平準化生産は、計画変更や追加注文等にも柔軟に対応できる体制にならなければなりません。また、小刻みに生産し即納品していくので以前より在庫は減っていなければなりませんよ。
せっかく平準化に取組まれていても、以前の生産方法が良かったと思われる場合は、もう一度正確な作業手順や問題を見直す必要があります。
もう一つご確認していただきたいことは、現場の方々のきちんとした理解を得ているのでしょうか?
私の経験上ですが、生産技術も大切ですが、一番は平準化を現場の方が理解し納得した上で進められているかが重要になります。
私は5S活動を基礎としてJIT生産も指導させて頂いておりますが、活動や技術の伝え方は同じでも、指導方法は企業によって異なります。
そもそも5Sも生産技術も実際の作業は現場の方が中心となります。
他社においても、成果が得られない、浸透しない、衰退してしまうなどの原因は、従業員の方々の理解不足があげられます。
技術も効率も問題点も人の行動で変わり、従業員に理解して頂くことで率先的に行動できれば、技術の浸透は早いですよ。
会社の活動やこのような生産方法の変更をする場合は、特に従業員の方々に「面倒だ!」「いやだなぁ~」など思われてしまうと効果・成果は出てきませんので、もう一度現場の目線から確認してみてください。
㈱ヒューマン・ナレッヂ 前田康秀
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高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。
平準化生産を進めるための条件を列挙すると以下のようになります。
①流れを清流化する
(ライン数を極力絞り、製品ロットごとにどのラインを流すかを決めます)
②製造ラインに投入する基準ロット数量を決める
(基準数より多い場合はロットを分割し流します)
③各ラインのネック工程を把握する
(投入からネック工程まで、ネック工程から完成までの基準日程を決めます)
以上により、ネック工程の能力を考慮し、ネック工程集中を避けた日程計画が決まります。
ライン数を増やすのではなく、製品ごとに流すラインを固定し、ライン数を絞ること、また
注文数量をそのまま流すのではなく、基準ロット数量を決めて、一回で流すロット数量を
少なくすることによって平準化された日程計画が立て易くなります。
また以下の改善活動を実施しながら、基準ロット数を少なく、基準日数を縮める努力をして
いくことにより、更に平準化が進みます。
①段取り時間を短縮する
(シングル段取り、外段取り化)
②工程ごとのストア最大数量を決める
(最大ストア数となったら、生産を休止、ストアの空くのを待ち同期生産を行います)
③休止工程の作業者は、他の遅れている工程を応援する
(助け合いのルールは生産性向上に大きく寄与します)
④特急品の処理方法を決める
(特急品が入ったときの特急ラインを決め、最優先で生産します)
⑤生産の遅れ、仕掛の停滞が発生したら、その日のうちに原因を究明し、対策する
生産計画は、月単位で行い、前週の金曜日に翌週の生産計画を確定します。
確定後、納期変更、遅れ発生、特急品の飛び込み等が生じた場合、その都度日程を調整
しますが、最初は日単位、半日単位とし、最終的には時間単位で管理できるようにします。
変更による混乱が生じないよう、毎日、緊急時はその都度、関係者が集まり日程確認を行い
ます。
多品種少量生産では、多能工化は柔軟な生産計画立案に寄与します。また、遅れ工程を支援
する助け合いを可能にし、生産性を高めます。更に長期的観点で、技術の伝承を進める上で
は各作業の標準化、マニュアル化も並行して推進する必要があります。
作業の標準化は、多能工化教育の基礎であり、次のステップとして、標準時間の設定が可能
となり、基準日数の精度アップと、生産性向上の基本データとして活用が可能になります。
多能工化を進めるには、優秀な人材から進めます。そしてネック工程の多能工化を優先して
進めます。一律に進めるのではなく、目標を設定し、優先順位を決め重点的に実施します。
また、資格認定制度、表彰制度などの人事制度との連携でモラルアップを図り、マンネリ化
を防ぎます。
以上の改善は決して順調に進むものではなく、何度も壁に阻まれることが予想されます。
全員朝礼、日々の生産会議などコミュニケーションの場を設け、トップ方針を全員に浸透させ
解決に当たる良い雰囲気を作りだしていくことも重要と思われます。
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生産計画の支援コンサルタントをしています本間と申します、生産平準化は工程改善とともに生産計画の立案をどうするかも重要です。
受注生産メーカの工場運営でもっとも難しいことは製造ラインの稼働がばらつきやすいことです。この問題をクリアするためには納期的に余裕のある製品を使って作業量を平準化したり前倒し生産したりすることが有効です。しかしそういったことがいつでもできるわけではありません。
より戦略的にこの問題に取り組むために多くの自動車メーカが採用している平準化生産の手法が受注生産品の生産と在庫生産品の生産を組み合わせて生産する方法です。在庫生産品とは、ある程度在庫していてもいずれははける可能性が高い製品のことで、量産品が代表です。先行生産して在庫しておくことが許される製品(部品)や保守用の部品などもこの在庫生産品になります。
この手法では、対象生産ラインに対して最初に受注生産品のオーダーを流します。受注生産品のオーダーだけでは生産ラインの稼働は大きくぶれやすいので、常にフル稼働状態を維持し続けることは難しいので、生産ラインの空いた時間を利用して在庫生産品を生産します。
すなわち生産平準化に受注生産品と在庫生産品を組み合わせようとする手法の基本です。具体的には先に受注生産品の生産スケジュールを策定し、残った生産能力枠に在庫生産品の生産を投入してできるだけ平準化した生産計画を立てるようにします。こうすることで、生産能力を最大限発揮できるだけの稼働状態にします。
実際には同じ生産ラインに両方の製品を流すことは難しいといった工場もあります。その場合は生産ラインの共有ではなく、工場内での労務者の融通で工夫するという形をとることもあります。
こうした平準化は物流業者がよく行っている手法ですが、印刷業界ではプリントパックやラスクルがこの考え方を応用して印刷革命を起こしました。
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