高品質スクリーン印刷の基礎と実践的な印刷プロセス構築手法

インキ、ペーストの身になって考える
「ペーストプロセス理論」の理解と実践

スクリーン印刷が過小評価されてきた理由である多くの思い込みと間違った常識を正します

■スクリーン印刷の原理・メカニズム
■近年、解明できた「版離れ角度」と「版離れ力」の相関
■インク・ペーストの印刷性能の正しい理解

セミナー趣旨

 スクリーン印刷は、エレクトロニクス分野や加飾分野の商業、工業印刷などの多くの用途で60年以上の長きにわたり利用されてきたにも関わらず、未だに管理が困難で職人技が必要な印刷工法だと思われています。しかしながら、実は、スクリーン印刷は原理的に最も安定した印刷工法であり、管理可能です。このことは、私の数多くのコンサル実績により実証してきました。
 スクリーン印刷は、版のパターン開口部から一定量のインキを均一な厚みで転移できる為、版とインキが適正であれば、高品質印刷が容易に実践できます。実は、スクリーン印刷が管理困難だと思われていたのは、版とインキの適正化が不十分だったからです。多くの方が、どのような手順でプロセスを適正化すればいいかを考えずに、作業者が印刷パラメータの変更だけで対処療法的に最適化を試みていたからです。
 スクリーン印刷にも、実践的な理論があります。印刷されるインキ、ペーストの身になってプロセスを考える「ペーストプロセス理論」です。この理論は、私が長年にわたり、仮説と検証を繰り返し実用性がある考え方として確立し、多くの印刷現場で実証を行なってきたものです。この考え方の基本は、最初に適正な印刷パラメータ(範囲)を決定し、次に、スクリーン版を適正化するものであり、最も重要な要素であるインキ・ペーストは、固有の印刷性能を有するとするものです。この理論は、エレクトロニクス分野のみならず加飾分野や商業、工業印刷などでの高品質スクリーン印刷実践のためであれば、すべてに通用します。
 スクリーン印刷に対するこれまでの先入観を捨て、論理的整合性の観点からこの考え方を評価いただければ、この理論の正しさが理解していただけると思います。これまでの対策での成功の理由も失敗の理由もこの理論で説明ができるようになります。そして、この理論を正しく実践すれば、スクリーン印刷は、これからの技術的伸び代が最も大きい有用なプロセス技術であることがご理解いただけると思います。逆に言えば、スクリーン印刷の経験が少ない人ほど、先入観にとらわれずに、この理論を正しく実践できるため、より短期間でゴールに到達する事が可能になると思われます。
 本講演では、最初に、スクリーン印刷の原理やメカニズムの解説および、最近、明らかになった「版離れ角度」と「版離れ力」との相関について説明します。スキージやスクリーンメッシュなどの要素技術の進歩と「標準」について解説し、インキ・ペーストの印刷性能に影響する分散安定性、揮発性、濡れ性及び粘弾性特性についても説明します。さらに最新のエレクトロニクス分野での高精細印刷や加飾分野での「トーンジャンプ」のないグラデーション印刷の実践方法についても紹介します。また、最新の技術情報として、これまで、スクリーン印刷での宿命とも思われていたベタ印刷での「サドル」の解消策についても解説します。

習得できる知識

  • 高品質スクリーン印刷のほとんどの条件は適正化できる前提条件であり、「標準」化できる
  • これまでスクリーン印刷が過小評価されてきた理由は、多くの思い込みと間違った常識
  • 版離れは、スクリーン版の反発力だけでなく「版離れ角度」が大きく影響する
  • 実質のクリアランスを変えないで「版離れ角度」の制御で、版離れ力を1.5倍に向上できる
  • インキ・ペーストの印刷性能を細分化して正しく理解することの重要性
  • 低・中粘度インキの印刷性能向上には、メッシュの開口率を小さくすることが有効
  • 「トーンジャンプ」起きない「グラデーション」のスクリーン印刷技術
  • 「サドル」の無いベタ印刷の実践方法

セミナープログラム

1.スクリーン印刷とは?
 ・原理的には、スクリーン印刷は最も安定な印刷工法
 ・版とインキを適正化すれば30μmラインも手刷りができる
 ・適正化できない最大の理由はインキの印刷性能不足と不適切な版仕様
 1.1 各種印刷工法の種類とインキの粘度範囲
 ・各分野のスクリーン印刷でのインキの粘度範囲の違い
 1.2 スクリーン印刷は「特殊印刷」、だから印刷安定性が高い
 1.3 現状のスクリーン印刷の多くは「技術限界」の50%以下のレベル?

2.「ペーストプロセス理論」の考え方の基本
 2.1 印刷条件のほとんどは、適正化可能な「前提条件」
 2.2 スクリーン版の反発力での「版離れ」の重要性

3.「オフコンタクト印刷」と「コンタクト印刷」の違いは、「版離れ」メカニズム
 3.1 「コンタクト印刷」の「版離れ」、実は、型抜きの「版剥がし」? 
 3.2 ≪新技術≫メタルマスクでの「同期版離れコンタクト印刷工法」
 3.3 ≪新技術≫メタルマスクでの低粘度インキの定量塗布技術

4.スクリーン印刷の4つのカニズムの理解
 4.1 「ローリング」のメカニズム
 4.2 「充てん・掻き取り」のメカニズム
 4.3「版離れ」のメカニズム
 4.4「レベリング」のメカニズム

5.≪最新情報≫スクリーン印刷の宿命?「版離れ」遅れ不具合の解決策
 5.1 印刷後半での版離れ遅れ悪化の原因は「版離れ角度」
 5.2 通常ピールオフ動作での実質クリアランス量増加と「版離れ角度」の変化
 5.3 等クリアランス+「版離れ角度」維持動作で、「版離れ力」を1.5倍

6.スクリーン印刷装置とスキージの重要性
 6.1 印刷機の種類とスクリーン版
  フラットベッド、曲面(シリンダー)、ロータリー印刷機と刷版
 6.2 印刷位置合わせの方法
 6.3 スキージが最も重要な印刷パラメータの要素
 ・最適なスキージの選択方法・斜め研磨スキージの効果
 ・スキージのエッジの面取り仕上げの必要性

7.4つの印刷条件の適正化
 7.1 4つの印刷条件と印刷品質への影響
 7.2 二通りの印圧設定方法 「押し込み」方式と「エアー圧」方式
 7.3 印刷膜厚均一性と「適正印圧」の定義 
 7.4 スキージ角度、速度と「充てん力」との相関

8.スクリーンメッシュとスクリーン版と
 8.1 ステンレスメッシュ開発の歴史とスクリーン印刷の技術進歩
 8.2 スクリーンメッシュの「弾性変形」と「塑性変形」と適正クリアランス
 8.3 スクリーンメッシュ開口率とインキの吐出性
  低開口率(25%)メッシュでのにじみ抑制効果
 8.4 超高強度ステンレスメッシュでの課題解決「無変形スクリーン版」
 8.5 スクリーン版の製作工程 密着露光とミスト現像
 8.6 スクリーン版の洗浄方法
 8.7 スクリーン版の高品質再製版システムの実際例

9.インキ・ペーストの印刷性能
 9.1 インキの分散安定性、溶剤揮発性および濡れ性の影響
 9.2 連続印刷中のインキの含有溶剤揮発と印刷膜厚変化
 9.3 インキの粘性と弾性の理解 TI値の迷信
  スクリーン印刷中の気泡発生の原因と対策

10.≪最新情報≫「トーンジャンプ」のないグラデーション印刷
 10.1 なぜ、スクリーン印刷でグラデーションの印刷が困難か
 10.2 「トーンジャンプ」が発生する根本原因
 10.3 原理的に「トーンジャンプ」が発生しない網点とは

11.≪最新情報≫ベタ印刷での「サドル」の解消策
 11.1 ライン幅違い、ベタパターンでの印刷膜厚決定メカニズムの違い
 11.2 スクリーン印刷の宿命とされていた「サドル現象」
 11.3 「サドル」無しベタ印刷の実現方法

12.高品質スクリーン印刷プロセス実践のための具体的な対策手法
 12.1 印刷均一性を阻害する要因とその対策手法
 12.2 印刷寸法精度を損なう要因とその対策
 12.3 スクリーン印刷におけるその他の不具合対策
  乾燥のメカニズムとその重要性 静電気とインキの糸引き対策

13.スクリーン印刷8つの適用工法と高品質スクリーン印刷の応用例
 ・べた、ファイン、ドット、スルーホール、ビア埋め、落とし込み、積層印刷、転写印刷
  スピンドル柄 プリンテッドエレクトロニクス ナノ銀インキ 等

  □質疑応答□

セミナー講師

(株)エスピーソリューション 代表取締役 佐野 康 氏 

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講師のプロフィール

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

佐野 康

さの やすし / 千葉県 / ㈱エスピーソリューション

高品質スクリーン印刷とは、工業製品を製作する製造プロセスであり、均一で、個人差がなく安定した製品を作る技術です。職人的技法ではありません。
スクリーン印刷用のインキ、ペーストは多種多様なものが使用されていますが、その印刷性...続きを読む

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キーワード

印刷技術   高分子・樹脂材料

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