1.クリーンルームにすれば品質は向上するという神話
ものづくり企業の中には、品質向上のために、元々はクリーンルームではなかった作業エリアや、事務室などをクリーンルーム化して、製造をしているところも多いようです。
これは、自主的、自発的というよりは、取引先様からの要請で改造した場合が多いと思いますが、この要請、クリーンルームにして品質を向上させたいということでしょうが、取引先様も、クリーンルームにすれば品質は向上するというような神話だけで要請して来る場合もあります。
このようなクリーンルームは高い清浄度は要求されないので、パーテーションで囲うなどして、天井の所々にへパフィルターを取り付けたり、室内にパッケージエアコンを設置し、空気を清浄化しているのが一般的でしょう。しかし天井は、写真のように改造前と同じ、石膏ボードのような場合が多いようです。
天井部分の写真
2.クリーンルームではなく、ただの箱
上記の場合、空調システムや、パッケージエアコンの振動に加え、風による建物の振動、あるいは地震など様々な振動によって、天井から粉が降ってきます。もう一つ、クリーンルームにするということは、ゴミが外部から侵入しないように室圧を高めているため、わずかですが室内が膨らむということです。それが、停電や長期連休による工場停止で、室圧が低下、ふくらみが戻る。その繰り返しでもゴミの発生、落下があります。落下物を観察すると、白い粉状の埃のようなものです。経時的には徐々に粒径が大きくなります。
ゴミを排除するためクリーンルーム化しても、天井からゴミが供給されるようでは、清浄度の向上はなかなか進みません。こういうクリーンルームは、乱流式か混流式ですから、清浄化のメカニズムは希釈です。
綺麗な空気を取り込み室内の汚れを徐々に薄める、つまり希釈するという考え方ですが、一方で希釈し、もう一方でゴミを供給する、これでは希釈が間に合わず、クリーンルームではなく、ただの箱になってしまいます。
クリーンルームにしたけれど、お金がかかる割に品質が良くなりません。どうしてでしょうか?ということになります。こういうところも見落としていると、投資に見合った効果が得られないということです。
3.落下塵調査
実際にどのくらい天井からゴミが降って来るのかについては、落下塵調査をしてみると良いと思います。例えば、シャーレを一定時間放置し回収して金属顕微鏡で観察したり、それを写真撮影してみても良いと思います。
半導体や液晶表示体、水晶振動子などの微細な製品製造工程で実施している24時間放置ウエハーと同じ考え方です。今回の場合は高い清浄度を要求されていない工程なので、このように簡易な調査方法が可能です。
パーティクルカウンターで測定しても、数字のみですから、どんなゴミなのかピンときませんが、顕微鏡で観察するとか写真撮影するなど可視化することで、より理解しやすいことや説得力があると思います。また、写真が残るので経時的に並べて見ていくと、発塵量や粒径の変化が確認できます。
クリーンルームの稼働時間が長くなると、徐々にゴミの量が増えたり粒径が大きくなります。このように浮遊塵だけでなく、落下塵の観点でも製造品質に影響があるのかは確認しておきたいです。この粉状のゴミが製品に付着することで品質が低下するのか、あるいは、その工程では問題は無くても、次工程や納入先、市場に出てから品質問題が起きることも考えられます。
クリーンルームだからと安心せず、色々な観点から品質向上させていきたいです。現場を多面的に観察し、良い品質の製品を作る努力をして、自信を持って市場に送り出したいです。
4.客先監査
この天井の材質や落下塵については、客先監査でも指摘され、特に品質への影響がありそうなエリアの天井を張り替えたという会社もあります。
5.その他の天井からの落下塵
天井の剥がれから発生するゴミだけでなく、設備や照明などの熱によって発生した上昇気流(熱対流)で天井付近に舞い上がり、浮...