1.企業の体質改善、基盤強化の核は人財育成
クリーン化をあまり重要視していない企業も多いのかも知れませんが、継続的なクリーン化活動から多くの成果、効果を生み出してきたものづくり企業は、クリーン化は経営に直結すると考えています。それだけ重要な活動です。これは、クリーンルームを持っている企業だけに限ったことではありません。
このものづくり企業の体質改善、基盤強化の核となるのが人財育成です。人財育成に力を入れ、育った人達が現場の改善や対策を実施し、ひいては体質の強い現場作りに貢献してくれるというスパイラルです。
クリーン化推進では、不具合や問題を発見する力が必要です。また、その改善、対策にも様々な知恵を集め実現可能な範囲でリスクが小さく、効果が大きい方法を選択する必要があります。もちろん、できるだけお金をかけないことが前提になります。
この活動は地味ですが、地道にコツコツと取り組むことが大切です。加えて多面的にものを見たり、考えたりできる優秀な人財が必要になります。こういう人たちは、一朝一夕には育成できないので、活動を推進しながら学ばせ、育てていくことが大切です。理論理屈ではなく、現場の事例から学ばせる体験学習です。
2.クリーン化活動を通じた人財育成
クリーン化(安全含む)パトロールや客先監査での指摘事項、クリーン化診断などで拾われた項目は、多くの場合、それらをリスト化し改善、対策を実施するという方法を取っていると思います。拾われた項目が多い場合は、複数のメンバーで分担し、対策、改善の実施をしていると思います。この進捗を見ると、なかなか進まない項目もあるでしょう。この項目が同じ担当者だった場合、その人を叱るとか責めたり、圧力をかけてやらせるのでは、その場しのぎになってしまいます。そうではなく、その人がなぜできないかを探り、良い方向に導いてやることが大切です。
なぜできないのか、やらないのかについては、その人にも理由や言い訳があると思います。例えば、勝手にテーマを振り分けられ面白くない、元々クリーン化はやりたくないということから始まり、作業が忙しく時間が取れないとか、テーマのレベルが高すぎてどうすれば良いのか、なかなかアイデアが出てこないなど色々なことがあると思います。
管理監督者は本人と良く話し合い、それらを把握して対応していくことが必要です。もしかすると、上司の背中を見ている場合もあるかもしれません。上司の背中を見て育つという部分もあるとすれば、上司自らの態度、行動も指摘してもらい、直していく必要もあると思います。
ここには、山本五十六の、「やって見せ、言って聞かせて、させて見て、褒めてやらねば人は動かじ」に通じるものがあります。また良い改善案や対策案が考え付かない場合は、テーマの実施状況の報告会を定期的にやってみるのも良いと思います。
そこで、他の人の実施した改善、対策及びそれに至った考え方などを聞くことは参考になるでしょう。また、進まないその本人を責めるのではなく、その人の意見、考えも(もちろん言い訳も含め)聞いたうえで、こんな方法もあるね。こんな風にしたらどうだろうというようなアドバイスをするのも効果があると思います。
その本人は、今まで育って来た環境や親の躾、学生時代の経験などさまざまなものが影響して、見方、考え方の範囲が狭いとか、偏っていることもあります。その範囲だけで多面的にものを見られない、考えられないということもあると思います。
それをこういう場を使い、育成していくのも上手な人財育成法です。その過程で助けてやるとか、上手く行ったら褒めるということは、人を育てることで効果があります。自分の成功体験や、助けられたこと、褒められたことは、自分の成長の過程で大切なことです。長く心に残ります。これも、ある意味ではOJTです。
余談ですが、昔の薩摩藩は結束力が強かったと聞いています。その理由は、もちろん西郷隆盛という優秀なリーダーがいたということもありますが、薩摩藩の武士たちが、若い人を育てる仕組みがあった。それを長い間続けて来たということです。(鹿児島の維新ふるさと館での説明の中にありました)
これを企業に置き換えると、上司が部下をきちんと育てる仕組み、つま...