強い工場とは何か

更新日

投稿日

 
 図1の、スマイルカーブを見てください。生産現場においては、不良をなくす、ムダを徹底的に省いて生産性向上、リードタイム短縮を図り、原価低減を行って利益幅を確保するということでしょう。もちろんこのことも大切です。工場として、まず初めに生産現場を強くすべきです。しかし、売り上げが伸びない現状では、生産現場のムダをなくすだけでは限界があります。
 
          トヨタ生産方式
  図1.強い工場の概念図
 
 売り上げが拡大した、今までの工場はモノを作るための「ものづくりの現場」を大事にして来ましたが、これからは、「ものづくりの現場」だけでは、本当の意味の強い工場になることは出来ません。売り上げを伸ばすためには、工場現場以外に付加価値を見出す必要があります。強い工場に生まれ変わるには、現状の延長線上の成り行き経営には未来はありません。このことは、概念では理解できても、実際にどうすればいいのか?どこから手をつけて行ったらいいのか、見当がつかないと言ったことを良く耳にします。
 
「強い工場」を作るためには手順があります。また、それぞれの工場によっても、改善のやり方に差があるでしょう。個別技術「**生産方式」導入などに、すぐ目を奪われがちですが、そこは「基本ステップ」を理解し、着実に進めて行くことをお勧めします。
 
  【基本ステップ】
 ①工場の現状の問題点      課題の把握(三現主義) 
 ②問題点、課題の抽出      (5W1H)
 ③方針のの決定            (経営者のトップダウン)    
 ④計画の立案                 (PDCA)プロジェクトチーム 目標の数値化    
 ⑤計画に沿った改善活動  プロジェクトマネジメント    
 ⑥経過のレビュー           達成度の見える化    
 ⑦課題のフィードバック    
 ⑧結果の総括                次の活動へのフィードバック 
 
 セル生産方式、カンバン方式など、ジャストインタイムの工場の仕組み、生産方式を導入しようと努力している企業は多いのですが、その効果はまちまちです。トヨタの多品種は、工程の最後の段階で様々な塗装や、内装が施されますが、販売計画によって、生産台数が分かっているので、計画的に見込み生産が可能なのです。直販の販売会社を持っているので、このような事が可能になっています。
 
 ジャストインタイム・カンバン方式は、このような見込み生産が可能な生産変動がごくわずかに抑えられた製品に対して有効です。カンバンは、微調整の手段として後工程引き取りを行うので工程間仕掛は、最低限で押さえられるのです。ところが、一般の部品加工工場は、突発的な割り込み生産、図面待ち、納期変更数量変更、設計変更など、生産変動が日常茶飯事です。また何年も前の部品も急に作らなければならないこともあります。
 
 このような変種変量生産を強いられる条件のもとで、カンバン方式はそもそも成り立つ筈がありません。このような条件を無視して、自分たちが経験してきたことを強引におしつけようとする指導では、決してうまくいきません。重要な事は、今一番問題になっている事項はなにか?です。
 
 ・仕掛が多いのか?
 ・リードタイムが長く納期に間に合わないのか?
 ・生産性が低いのか?
 ・品質が悪いのか?
 
 など、最優先で取り組まなければならない問題は何かを現状把握と原因究明を行う必要があります。そこで、現状の生産管理方式のどこに問題があって、どう改善する必要があるのかを最初に明らかにする必要があります。
 
 ・管理方式:MRP方式か?製番管理方式か?(PULL式か?PUSH式か?)
 ・部材調達方式、在庫方式の検討
 ・外注加工先の発注方式の検討
 
 など、サプライチェーン全体最適化を睨んで、社内改革をスタートさせます。基本は1個流しで、最短リードタイムを確保する生産管理を行うことです。そのための仕掛けを、営業部門、生産管理部門、製造部門、外注先の管理部門で連携して考え、改善に取り組まなければなりません。
 
 現場の見えるところばかりに気を取られ、生産管理方式(ソフトの部分)が抜け落ちた結果、ストアが仕掛品であふれてしまうのです。これが一般的な、自称ト〇タ流改善コンサルタントのやり方です。世の中には間違...
 
 図1の、スマイルカーブを見てください。生産現場においては、不良をなくす、ムダを徹底的に省いて生産性向上、リードタイム短縮を図り、原価低減を行って利益幅を確保するということでしょう。もちろんこのことも大切です。工場として、まず初めに生産現場を強くすべきです。しかし、売り上げが伸びない現状では、生産現場のムダをなくすだけでは限界があります。
 
          トヨタ生産方式
  図1.強い工場の概念図
 
 売り上げが拡大した、今までの工場はモノを作るための「ものづくりの現場」を大事にして来ましたが、これからは、「ものづくりの現場」だけでは、本当の意味の強い工場になることは出来ません。売り上げを伸ばすためには、工場現場以外に付加価値を見出す必要があります。強い工場に生まれ変わるには、現状の延長線上の成り行き経営には未来はありません。このことは、概念では理解できても、実際にどうすればいいのか?どこから手をつけて行ったらいいのか、見当がつかないと言ったことを良く耳にします。
 
「強い工場」を作るためには手順があります。また、それぞれの工場によっても、改善のやり方に差があるでしょう。個別技術「**生産方式」導入などに、すぐ目を奪われがちですが、そこは「基本ステップ」を理解し、着実に進めて行くことをお勧めします。
 
  【基本ステップ】
 ①工場の現状の問題点      課題の把握(三現主義) 
 ②問題点、課題の抽出      (5W1H)
 ③方針のの決定            (経営者のトップダウン)    
 ④計画の立案                 (PDCA)プロジェクトチーム 目標の数値化    
 ⑤計画に沿った改善活動  プロジェクトマネジメント    
 ⑥経過のレビュー           達成度の見える化    
 ⑦課題のフィードバック    
 ⑧結果の総括                次の活動へのフィードバック 
 
 セル生産方式、カンバン方式など、ジャストインタイムの工場の仕組み、生産方式を導入しようと努力している企業は多いのですが、その効果はまちまちです。トヨタの多品種は、工程の最後の段階で様々な塗装や、内装が施されますが、販売計画によって、生産台数が分かっているので、計画的に見込み生産が可能なのです。直販の販売会社を持っているので、このような事が可能になっています。
 
 ジャストインタイム・カンバン方式は、このような見込み生産が可能な生産変動がごくわずかに抑えられた製品に対して有効です。カンバンは、微調整の手段として後工程引き取りを行うので工程間仕掛は、最低限で押さえられるのです。ところが、一般の部品加工工場は、突発的な割り込み生産、図面待ち、納期変更数量変更、設計変更など、生産変動が日常茶飯事です。また何年も前の部品も急に作らなければならないこともあります。
 
 このような変種変量生産を強いられる条件のもとで、カンバン方式はそもそも成り立つ筈がありません。このような条件を無視して、自分たちが経験してきたことを強引におしつけようとする指導では、決してうまくいきません。重要な事は、今一番問題になっている事項はなにか?です。
 
 ・仕掛が多いのか?
 ・リードタイムが長く納期に間に合わないのか?
 ・生産性が低いのか?
 ・品質が悪いのか?
 
 など、最優先で取り組まなければならない問題は何かを現状把握と原因究明を行う必要があります。そこで、現状の生産管理方式のどこに問題があって、どう改善する必要があるのかを最初に明らかにする必要があります。
 
 ・管理方式:MRP方式か?製番管理方式か?(PULL式か?PUSH式か?)
 ・部材調達方式、在庫方式の検討
 ・外注加工先の発注方式の検討
 
 など、サプライチェーン全体最適化を睨んで、社内改革をスタートさせます。基本は1個流しで、最短リードタイムを確保する生産管理を行うことです。そのための仕掛けを、営業部門、生産管理部門、製造部門、外注先の管理部門で連携して考え、改善に取り組まなければなりません。
 
 現場の見えるところばかりに気を取られ、生産管理方式(ソフトの部分)が抜け落ちた結果、ストアが仕掛品であふれてしまうのです。これが一般的な、自称ト〇タ流改善コンサルタントのやり方です。世の中には間違った理論や手法、模倣が氾濫しています。正しい理論のもとに、実務にすぐ使えて効果の見える指導者を自分の目で選択することが必要になっていると思います。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
新規開拓のどこを見ればよいか 中国工場の品質改善(その70)

 前回のその69に続いて解説します。 【第4章】中国新規取引先選定のポイント ◆ 契約書取り交わしのポイント  ここでは取引先と取り交わす仕様書...

 前回のその69に続いて解説します。 【第4章】中国新規取引先選定のポイント ◆ 契約書取り交わしのポイント  ここでは取引先と取り交わす仕様書...


循環棚卸(サイクルカウント)による現品管理精度向上の方法

 台帳と実在庫とを照合するのが棚卸です。年に一度は必ずおこないますが、この棚卸作業に、どれほど時間をかけているでしょうか。台帳と実在庫の差異は何パーセント...

 台帳と実在庫とを照合するのが棚卸です。年に一度は必ずおこないますが、この棚卸作業に、どれほど時間をかけているでしょうか。台帳と実在庫の差異は何パーセント...


多品種少量、部品加工工場の生産効率化の検討

 前回の中小企業の生産管理システムとトヨタ生産方式に続いて解説します。 ◆関連解説『トヨタ生産方式とは』    自動車部品などの製造工場で...

 前回の中小企業の生産管理システムとトヨタ生産方式に続いて解説します。 ◆関連解説『トヨタ生産方式とは』    自動車部品などの製造工場で...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
シミュレーションを使ったプロセス改善

   前回の事例ではシミュレーションを使った実験計画法(Design of Experiments: DOE)が今や主流になっていることを述べ...

   前回の事例ではシミュレーションを使った実験計画法(Design of Experiments: DOE)が今や主流になっていることを述べ...


中国式金型のショット数管理 中国企業の壁(その24)

        一般的に金型の寿命管理は、ショット数管理と出来栄え管理の両面で行います。    ショット数管理は、あらかじめ生産数量(ショット数...

        一般的に金型の寿命管理は、ショット数管理と出来栄え管理の両面で行います。    ショット数管理は、あらかじめ生産数量(ショット数...


赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その9)

  1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その6)に続いて解...

  1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その6)に続いて解...