TRIZ活用の実際 使えるTRIZ(その3)

【使えるTRIZ 連載目次】

 

 いつもTRIZを活用していると、確かにすばらしい思想の手法だと感じます。このやり方をマスターすれば、誰もが簡単に発明家になれるような気持ちになります。しかし、これらのやり方だけでは、アイデアを実現可能なコンセプトに作り上げることができないことに技術者は気づきました。そのため「TRIZは使えない」と言われ、2000年前後に第1次TRIZブームは終焉したのです。

 

TRIZを「使えるTRIZ」に

 我々は使えるTRIZのためにどうしたのでしょうか。それは、TRIZは単独のツール(手法)ではなく、思考するためのプロセスとして扱うべきだという極めてシンプルな結論で、そのためのフローを構築すべきだということでした。

 問題は何か?なぜ良いアイデアが出ないのか?そもそも良いアイデアとは何か?

 第1の原因は顕在問題に対し、直接TRIZを活用してアイデアを得ようと...

することです。つまり、「プロジェクターの発熱が大きいので何とかしたい」という問題について、すぐにTRIZを使って矛盾を作り、不足作用(放熱性)を上げようとすると、一体何についてアイデアを考えるべきなのかが不明のままの状態で発想に入ることになります。相撲に例えれば、相手につられて立っちゃった感じ。そうではなく、「なぜ、発熱が大きくなるのか?」という原因を、サブシステムレベル→部品レベル…に探っていくことが必要なのです。たとえば、それは「放熱ファンが小さい」という原因だったとしましょう。だったらファンを大きくすれば良いわけです。でも筐体が大きくなるという矛盾が生まれます。そこでファンの大きさ(形状や構造)に関して、TRIZの発明原理を使うと容易にアイデアが生まれます。要は、アイデア出しの出発点が不明なのが原因なのです。

 第2の原因は、アイデアを出した後の処理方法がわからないことです。つまり、出発点は明確になり、それに対して300件というたくさんのアイデアが出たので、その中から良さそうなものを選ぶのが今までのやり方なのです。一般的には、QCDのバランスをみながら皆で選ぶという方法を取る場合が多いでしょう。しかし我々は、せっかく300件出したんなら、それらはすべて何らかの「効果」を持っているはずだと考えます。TRIZは技術的に裏付けられた先人たちの優れた解決策の本質だからです。しかしその効果を見つけるのは、なかなか容易ではありません。既知の知識で効果を想定できる場合もあれば、将来の(発見されるであろう)知識を待って、始めて「そうだったのか!」というものもあるでしょう。であれば、せっかく出したアイデアを簡単に捨てることはもったいない。良いところを組合わせてみたり、将来的にこんなことが出来たら使えそうというアイデアを探してプールしておいたりすることが有効です。それらを実現するためのフローを図6に示します。 

 この「問題の本質化」→「TRIZ」→「アイデアの有効化」の流れが、使えるTRIZの肝であり、我々がたどり着いた一つの結論です。

 なおこの取り組みは、TRIZ単独ではなく、市場のニーズを明確にし自社の強みと整合させるQFD、およびTRIZで生まれたコンセプトを市場で問題を起こすことなく商品化するためのタグチメソッド(品質工学)まで取り入れた一連の開発プロセスとすることで、さらに「イノベーティブな商品開発」が可能になるのです。

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