自分の工場で必要な『静電気除去レベル』が分からず、不十分な除電だったり、逆に、要求品質以上の高価な除電器を購入している所はないでしょうか。除電する為には目に見えない静電気を『見える化』することが重要です。
前回の静電気の誤った常識に続いて解説します。
2. 静電気の見える化による品質改善
(2) 静電気の原因分析
収集した客観的データの分析には、品質管理の基礎ツールである『
QC七つ道具』(特性要因図、パレート図、ヒストグラム、グラフ、管理図、チェックシート、散布図、層別)を活用して原因を分析します。具体的な事例として、図4に静電気発生の特性要因図を示します。
図4. 静電気発生の特性要因図
特性要因図:問題点に対してその原因を全員で提起し視覚的にまとめ、重要と思われる要因について的を絞って効果的に改善を推進していくための手法が特性要因図です。特性が起きる要因として考えられる大きな要因(5M+1E)を上げそれを大骨として矢印で記入し、次に中骨、小骨を記入します。5M+1Eとは、Man(人)Machine(設備)Material(材料)Method(方法)Measurement(測定)Environment(環境)の事です。
(3) 静電気によるトラブルの例
A食品工場では最近、自動プラ袋供給機トラブルによるチョコ停止が増加していました。要因を絞り込んだ結果、設備異常が発生した要因がプラ袋の帯電除去用に使用している除電器の放電針の汚れによる除電不足でした。
なぜなぜ分析:
上記のトラブル事例対策を検討するためになぜなぜ分析を実施します。不良や不具合など問題の真因を追求する手法に「なぜなぜ分析」があります。なぜなぜ分析は、一つの現象に対してなぜそれが発生するのかを自答自問することで、現象を発生させている真因を思いつきで考えるのではなく、規則的に順序良く漏れなく出し切る為の方法です。
なぜなぜ分析を効率的に進めるには、5W1Hの改善検討の原則を適用し、発生系のなぜと流失系のなぜを追究し、真の原因を突き詰めて対策を作成、実施します。5W1Hとは5つのW(what、where、 when、 who、why)と1つのH(how)の事です。この事例では図5のように、最終的に発生系の対策『放電針の定期清掃』及び流失系の対策『除電器の定期検査』迄、問題を追究しました。
図5. 静電気トラブルのなぜなぜ分析事例
(4) 対策の立案
静電気トラブルの真の原因がわかったら、その対策を考えて、実行します。その際には次の二つの対策を検討します。
① 静電気トラブル発生対策
静電気トラブル発生の真の要因に対する対策。上記事例の場合は放電針の定期清掃です。
② 静電トラブル流出系対策
流出、検査ミスした要因に対する対策。事例の場合は除電器の定期性能検査にあたります。
(5) 効果確認
放電針を清掃する前後のプラ袋の帯電量を測定して比較します。図6がその結果です。
図6. 対策前後の静電気帯電量(V)
(6) 歯止めと標準化
静電気トラブル対策に効果があれば、その対策を継続させる為に作業標準書を作成して、誰でもが実施できるように教育します。
以上が静電気トラブル発生時の基本的な品質改善の進め方です。次に改善事例を紹介します。
3. 自動プラ袋供給機の静電気トラブル
【状況】S社の自動プラ袋包装工程では、プラ袋を取り出す際に静電気で下の袋が吸引し、位置ずれ等のトラブルが発生していたが、工程スタッフが調査した結果、同じプラ袋でもロットが異なるモノは異常がまったく発生していませんでした。
【原因】異常発生品のロットNoを袋メーカーに連絡して調査した結果、Aラインの製造したロットで静電気防止添加剤を塗布しているパイプが詰まり、塗布量にバラツキが発生して規格外のモノが流出していたことが判明しました。
【対策】袋メーカーにて対策を実施しました。
① 静電気発生系対策
製造にて界...