中小製造業の下請け脱却 (その1)

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 中小製造業に於ける下請けの実態と、下請けから脱却するにはどうすればいいのか、考えてみます。
 
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1. 中小企業の2極化現象

 
 「下請構造」とは、一般には「特定の事業者に依存する程度が高く、その事業者の発注に応じて、 その事業者の必要とする物品の全部または一部について製作、加工、組立、修理などを行っ ている全ての場合のこと」を指すとされています。中小企業の、特定の親企業に依存する割合から下請け構造に依存する企業と下請け構造から脱出した企業の区分が可能となります。
 
(1) 取引額の最も多い事業者への依存度が50%超である中小企業は中小企業全体の約40%
 
 このような中小企業は、過去の取引経験やノウハウを活かせることや、新たな販売先等を開拓する営業活動を実施しなくて良いことなどの面でメリットを感じている一方で、価格条件等の取引条件の変更が難しいことや、過去の経緯等から無理な注文等を押し付けられるなどの面でデメリットを感じています。
 
(2) 取引額の最も多い事業者への依存度が30%以下の中小企業は全体の約40%
 
 このような中小企業は、自ら取引先を開拓する取組を行うことで自立化すると  ともに、営業・設計・製造部門の連携し、技術を生かして事業を行うことで顧客 のニーズに応える「課題解決型ビジネス」ができる企業である。
 

2. 下請け構造から脱出した企業

 
 このように、上記の(1)(2)の中小企業は2極化傾向が強まっている傾向があると言われています。とりあえず、ここでは(2)の親事業者への依存度が30%以下の中小企業を下請け構造から脱出した企業と捉え、いくつかの事例を紹介したいと思います。
 

3. ある金属加工企業の取り組み事例

 
 自社の独自技術を生かして製品開発を行い販売したいと考えている企業も多いと思います。ただ、今まで、大企業の下請けとして位置づけられていた中小企業にとっては、非常に難しいテーマです。営業マンや企画担当者など、人材も十分ではなく、職人肌の技能者が多い組織構成では新しい発想を求めようとしてもとても困難が伴います。ある下請け金属部品加工メーカーを例に、この問題を考えてみます。
 

(1) 金属部品加工メーカーの状況

 
 高度成長期に創業したこの企業は、それまで大企業の下請けとして金属部品加工を行っていたあるメーカーは、オイルショックや、バブル崩壊も乗り越え、順調に売り上げを伸ばして来ました。ところが、リーマンショックを境に、売り上げが半分にまで落ち込み、その後立ち直るきっかけがつかめないまま推移して来ました。大手企業は軒並み海外へ生産拠点を移し、特に今まで取引を行っていた、大手家電メーカーからの受注がほとんどなくなってしまいました。このような状況で、今後どのように、事業を立て直していったらいいでしょうか。
 

(2) 強みは何か

 
 金属部品加工の事業で、他社ではできない精密な特殊形状の加工が得意で少量の試作品の製造でも高い評価を得て、これまで大手企業から安定した受注によって売り上げを伸ばしてきたのですが、大手企業の海外移転に伴い新たに顧客を開拓しなければならず、営業員も増員しましたが、中々安定した顧客が獲得できませんでした。そこで、自社の強みは何かをもう一度見つめなおしてみては、という助言を行いました。どのような形状が得意なのか、また多品種少量の試作品の製造において、他社より何がすぐれているのか、もう少し深く掘り下げ、高い評価を得ている技術やサービスに絞って、その強みをアピールしていく戦略を取ります。それには、長い付き合いの大手企業が、なぜ自社を選んだのかを知ることです。大手企業が、自社にしか発注しないとしたら、他社がまねのできない何かがあるとしたら、それが「強み」なのです。
 

(3) 誰に何を売り込むのか

 
 自社ブランドと言っても、一般消費者向けに最終商品を開発することは、中小企業の規模で実現は難しいと言って良いでしょう。万が一ヒット商品を開発できたとしても、それを次のヒット商品につなげ、継続させるには商品開発力や販売力が追い付きません。おそらく単発のヒット、一過性に終わってしまうでしょう。では具体的に誰に何を売ればいいでしょうか。それは、顧客としての企業向けに、自社の「強み」をメッセージとして伝え、売り込む努力をすることです。お客様に喜ばれ、安心感を与える技術・サービス、競合企業を退け、大手企業が自社を選ぶきっかけとなったものに注目し、明確に自社の差別化技術として位置付けることです。例えば「金属加工の**における特殊精密形状加工技術と、試作**即応サービス対応」というようにです。絞られた特定の技術、それこそ、自社の「強み」であり、自社独自ブランドなのです。そして、必ず「技術(ハード)」+「サービス(ソフト)」がセットになっているはずです。いかにその技術が顧客に利益を与えるか、それにはハード/ソフトの組み合わせが必要なのです。れと同時に、社内に対しても、「強み」を凝縮したメッセージを伝え、自社の「強み」を社員全員に浸透させます。それによって、会社全体で意識統一が図られ「強み」をさらに磨き、ゆるぎないものにします。
 

4. 売り込む...

 
 中小製造業に於ける下請けの実態と、下請けから脱却するにはどうすればいいのか、考えてみます。
 
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1. 中小企業の2極化現象

 
 「下請構造」とは、一般には「特定の事業者に依存する程度が高く、その事業者の発注に応じて、 その事業者の必要とする物品の全部または一部について製作、加工、組立、修理などを行っ ている全ての場合のこと」を指すとされています。中小企業の、特定の親企業に依存する割合から下請け構造に依存する企業と下請け構造から脱出した企業の区分が可能となります。
 
(1) 取引額の最も多い事業者への依存度が50%超である中小企業は中小企業全体の約40%
 
 このような中小企業は、過去の取引経験やノウハウを活かせることや、新たな販売先等を開拓する営業活動を実施しなくて良いことなどの面でメリットを感じている一方で、価格条件等の取引条件の変更が難しいことや、過去の経緯等から無理な注文等を押し付けられるなどの面でデメリットを感じています。
 
(2) 取引額の最も多い事業者への依存度が30%以下の中小企業は全体の約40%
 
 このような中小企業は、自ら取引先を開拓する取組を行うことで自立化すると  ともに、営業・設計・製造部門の連携し、技術を生かして事業を行うことで顧客 のニーズに応える「課題解決型ビジネス」ができる企業である。
 

2. 下請け構造から脱出した企業

 
 このように、上記の(1)(2)の中小企業は2極化傾向が強まっている傾向があると言われています。とりあえず、ここでは(2)の親事業者への依存度が30%以下の中小企業を下請け構造から脱出した企業と捉え、いくつかの事例を紹介したいと思います。
 

3. ある金属加工企業の取り組み事例

 
 自社の独自技術を生かして製品開発を行い販売したいと考えている企業も多いと思います。ただ、今まで、大企業の下請けとして位置づけられていた中小企業にとっては、非常に難しいテーマです。営業マンや企画担当者など、人材も十分ではなく、職人肌の技能者が多い組織構成では新しい発想を求めようとしてもとても困難が伴います。ある下請け金属部品加工メーカーを例に、この問題を考えてみます。
 

(1) 金属部品加工メーカーの状況

 
 高度成長期に創業したこの企業は、それまで大企業の下請けとして金属部品加工を行っていたあるメーカーは、オイルショックや、バブル崩壊も乗り越え、順調に売り上げを伸ばして来ました。ところが、リーマンショックを境に、売り上げが半分にまで落ち込み、その後立ち直るきっかけがつかめないまま推移して来ました。大手企業は軒並み海外へ生産拠点を移し、特に今まで取引を行っていた、大手家電メーカーからの受注がほとんどなくなってしまいました。このような状況で、今後どのように、事業を立て直していったらいいでしょうか。
 

(2) 強みは何か

 
 金属部品加工の事業で、他社ではできない精密な特殊形状の加工が得意で少量の試作品の製造でも高い評価を得て、これまで大手企業から安定した受注によって売り上げを伸ばしてきたのですが、大手企業の海外移転に伴い新たに顧客を開拓しなければならず、営業員も増員しましたが、中々安定した顧客が獲得できませんでした。そこで、自社の強みは何かをもう一度見つめなおしてみては、という助言を行いました。どのような形状が得意なのか、また多品種少量の試作品の製造において、他社より何がすぐれているのか、もう少し深く掘り下げ、高い評価を得ている技術やサービスに絞って、その強みをアピールしていく戦略を取ります。それには、長い付き合いの大手企業が、なぜ自社を選んだのかを知ることです。大手企業が、自社にしか発注しないとしたら、他社がまねのできない何かがあるとしたら、それが「強み」なのです。
 

(3) 誰に何を売り込むのか

 
 自社ブランドと言っても、一般消費者向けに最終商品を開発することは、中小企業の規模で実現は難しいと言って良いでしょう。万が一ヒット商品を開発できたとしても、それを次のヒット商品につなげ、継続させるには商品開発力や販売力が追い付きません。おそらく単発のヒット、一過性に終わってしまうでしょう。では具体的に誰に何を売ればいいでしょうか。それは、顧客としての企業向けに、自社の「強み」をメッセージとして伝え、売り込む努力をすることです。お客様に喜ばれ、安心感を与える技術・サービス、競合企業を退け、大手企業が自社を選ぶきっかけとなったものに注目し、明確に自社の差別化技術として位置付けることです。例えば「金属加工の**における特殊精密形状加工技術と、試作**即応サービス対応」というようにです。絞られた特定の技術、それこそ、自社の「強み」であり、自社独自ブランドなのです。そして、必ず「技術(ハード)」+「サービス(ソフト)」がセットになっているはずです。いかにその技術が顧客に利益を与えるか、それにはハード/ソフトの組み合わせが必要なのです。れと同時に、社内に対しても、「強み」を凝縮したメッセージを伝え、自社の「強み」を社員全員に浸透させます。それによって、会社全体で意識統一が図られ「強み」をさらに磨き、ゆるぎないものにします。
 

4. 売り込むための手段

 
 優れた技術・サービスを持っていても、それをお客様に伝えなければ意味がありません。伝える手段は、営業員の増員による営業活動の強化、広告投資、ダイレクトメール、ウエブサイト充実などが考えられます。いくら優秀な技術でも、お客様に売る事、伝える事に投資しなければ、売れるものも売れません。モノづくりの企業は、優秀な設備を導入することは考えても売ること、伝えることに余りにも関心が薄いのではないでしょうか。
 

5. 事業構造の転換

 
 このことをきっかけに、下請け構造からの転換を図って行きます。高い技術力があるのですから、それをアピールして、新規顧客を獲得し、事業を伸ばす戦略に転換していくことを会社の方針として明確にします。もっとお客様にアピールして認めてもらう。そのための投資は惜しまない。この視点が日本のものづくり中小企業には、欠けているのではないでしょうか。
 
 次回は、ビジネスモデルの転換に解説を進めます。 
  

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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